本格的にランナーの体づくりを目指したキャスト
予選会通過はなるか? |
双子で出場、前半つなぎの3、4区 |
アスリートを主人公にした映画のキモになるのは主人公の肉体そのもの。人気俳優がひ弱な細腕で鎧甲を身につけ刀を振り回す、昨今のTV時代劇の評価のしようもないほどの質の悪さは、その第一に主人公の肉体にあると思います。高倉健がぱっと諸肌脱いだときの肉体、ロッキーのシルベスタローンにせよ、太王四神記のペ・ヨンジュにせよ、ストーリーに矛盾のない肉体を持ったキャストが配されていなければ、映画のリアリティは壊滅です。
この映画では、ライバル校の主力メンバーに一部納得のいかない体がありましたが、エースのカケルをはじめ、みなさん長距離ランナーの体になっていました。キャストの技術とトレーニング指導は、関東学生陸上競技連盟の日隅広至氏がそれぞれの俳優に会わせたトレーニングメニューを作成して指導にあたったとのことです。
その基本的な内容は、毎日30分のジョギング+坂道ダッシュ、縄跳び、腹筋500回、腕立て伏せ200回など約2時間を要するもので、ネットで管理しつつお互いの練習状況を教え合ってモチベーションを高めるというもの。さらに週に一度は合同練習も行いチェックしたというのですから、大学の同好会レベルは超えているでしょう。
大学駅伝部員が対抗意識を燃やすほどに
カケル役の林遣都のランニングはスピード感が出てました。ユキ役の森廉もいかにも沈着冷静な長距離ランナーという感じでフォームもよく感心しました。携帯電話CMでおなじみのムサ役ダンテ・カーヴァーは、体の大きさが邪魔してスピード感は今ひとつですが力強さは伝わってきました。2区を走る他校の選手にあまり速そうな選手がいなかったのも幸いしましたが。箱根駅伝出場の上武大学駅伝部が他校の駅伝選手としてエキストラ出演しています。エキストラの大学生が、「役者に負けられない」と意気込んだといいますから、10名の寛政大学メンバーの走力も本物になっていたといえるでしょう。
なんにしても数々のドラマを含んで奇跡へのゴールを目指し、寛政大学メンバーはひた走るのですが、箱根駅伝のリアリティといえば、あの膨大な観客、役員、ノボリ、小旗、報道や関係者車両群なしにはありえません。他校チームももちろん重要。東京、横浜での道路使用許可を取れなかったことからエキストラを大量動員できて、海の近くで、ビル街もあるというロケ地選びに苦労されたようですが、よくぞ、といいたいくらいに迫力ある映像が撮れています。