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靴に使う「牛革」を深く考えてみる その3B(3ページ目)

今回の「メンズシューズ基礎徹底講座」も、引き続き鞣した後の革の加工の種類について。種類は多々あるのですが、今回は中でも一番お馴染みのものと、そのアレンジとも言えなくもないものををご紹介します。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

光沢最重視のエナメル革!

エナメル
簡単に光沢が出るという点ではエナメル革(パテントレザー)は最強の存在です。宴の礼装用のみならず、近年はメンズの靴でも発明当初の目的に見合った使われ方が増えつつあります。水や汚れにも極めて強いのですが、樹脂との二層構造でもあり、亀裂やベタ付きを防ぐべく保管に意外と気を遣う革です。


表面が別の物質で覆われた革として、ガラス張り革以外に忘れてはいけないものが、パテントレザー通称「エナメル革」です。現在ではクロム鞣しを施した革の表面をポリウレタン樹脂等で塗装したものを指しますが、そもそもはその表面に亜麻仁油やワニスをベースとしたラッカーを何重にも塗りしたもの。大抵の場合ベースは銀面を削ったものを用いる、言わばガラス張り革の一バリエーションとも申せるものですが、銀面を付けたままで樹脂を被せたものも一部の高級品で見られます。

1810年代末期にアメリカの発明家が水や汚れに強く丈夫な革を作ろうと開発し、特許(Patent)を得たことからこの名が付きました。どうもその発明家は、我が国の漆器の技法から着想を得たらしいものの、その当時の日本はご存知の通り鎖国中ですから、この説は本当か嘘か定かではありません。亀裂等が起こらない限りは水や汚れが内部に全く染み込まず、靴クリーム不要で乾拭きだけで輝きが半永久的に持続してしまうメンテナンスフリー性が、何といっても最大の長所。女性のドレスを汚さないとして、メンズでは礼装、特に宴(夜間)の礼装用の靴向けの革として長らく認知されていますが、近年では発明当初の目的に先祖帰りした使われ方もされています。

ただ、実はその亀裂が案外簡単に入り易い! 革本体と樹脂面の2層構造なので、断面が厚くなり深いシワが入り易く、革本体も一種の窒息状態ですし、温度や湿度の変化で双方の収縮差が起きてしまいがちなためです。夏場には状況次第では樹脂が溶解しベタ付きや表面剥離が起こる場合もあり、これらが表面に一度生じると、修復は事実上不可能。季節の変化で温度や湿度が極端に変わる場所に長期間放置せず、靴の場合は履く前に靴全体を軽く揉むとかシューツリーを用いて履きジワを伸ばす等、結果として「気の遣い方」は他の革と五十歩百歩になります。


ということで、まだまだ「加工」の話は続きますが、ちょっと観点を変えて考えてみたいものもあるので、この続きは次回に!



【「メンズシューズ基礎徹底講座」・関連リンク】
靴に使う「牛革」を深く考えてみる その1
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