白い革靴は暑い季節に人気! ケア方法は材料によって異なる
ちょっとキザに見える時もありますが、人気の白のレザーシューズです。でも汚れとか黄ばみとか、他の色の靴よりも明らかに目立ってしまうのが難点。 |
暑い時期には、例えばパナマ帽のように実際に暑さをしのげるものを、場が許せばつい身につけたくなるのが当然の心理でしょう。靴の場合、パナマ帽のように暑さに決定的に有効なものは、残念ながらありませんねぇ…… エスパドリーユはドレスアップにはちょっと難があるし(やろうと思えばできますが……)、サンダル姿も履き方次第では、涼しげどころかかえって暑苦しく思える時だって多々ありますから。
実効性はともかく、大人っぽく涼しげに見えるものとしては、以前ご紹介したイントレチアートレザーを用いたものの他に、白い革の靴が代表選手に挙げられるでしょう。実際、ホワイトバックスやデッキシューズなどいわゆるアメリカントラッドの範疇に入る白い紳士靴を、再び多く目にするようになっていますよね? その種の靴をこれまで散々けなしてきた方々が、突然しかも付け焼き刃的に宗旨替えしてその種の靴を身に付けているのを見ると、妙に寂しくかつ情けなくもなってしまうのですが(何時から男性の装いってこんなに薄情になってしまったのかな?)、そんなことはともかく、まあちょっとキザに見える時もあるけれど、白い紳士靴が夏場の休日のドレスアップに役立つ一足であることは確かです。
ただこの白いレザーシューズ、その「白さ」ゆえ汚れだけでなく黄ばみなどの変色が目立ってしまうのが厄介なところです。今回はこの種の靴のケアについて考えてみたいと思いますが、その前に、靴のアッパーに「色」を付けるものについて簡単に解説しておきましょう。
黒や茶に限らず、紺や緑それに今回採り上げる白まで今日革靴には様々な色がありますが、これらの「色」は以下の2種類の材料で作られます。
染料:粒子が細かく水や油に溶けるので、透明感のある色調を得やすいが、その分シミなども起こりやすい。革の繊維の内部まで浸透する。
顔料:粒子がやや粗く水や油には溶けないので、平板な色調になりやすいが、その分シミなどは起こりにくい。革の表面に付着する。
革の鞣しや靴の仕上げの工程で、その性質や用途に合わせこれらを調整して色を付けてゆくわけですが、「白」の場合他の色とは決定的に異なることがあり、それがケアの方法にも大きな違いをもたらすのです。
革靴のケア方法1:白いスムースレザーはクリーナーと専用クリームで
白のスムースレザーのケアには、この3つがあればまず大丈夫。 |
スムースレザーを白く着色する際には、事実上顔料しか用いられません。なぜなら一般的な染料には、「純白」そのものが存在しないからです(特殊なものは存在しますが後述)。前ページでも触れたとおり、顔料はあくまで「革の表面に付着する」だけのものですので、剥げ落ちて地の革の色が出てきてしまう可能性もあるわけで、それを防ぐべく特に白は多層かつ比較的厚めに着色してゆきます。
白いスムースレザーの靴で色合いに透明感が少なく平板な印象を与えるものが多いのは、そのためなのですが、実はこれがケアの大きなヒント! モノは考えようで「白い顔料が革の表面をがっちりガードしてくれている」とみなせばよいのです。汚れ落としには怖がらずに、記事「革靴の手入れに使うクリームの選び方と使い方」にあるようなクリーナーを用いればいとも簡単に解決してしまいますし、色が抜けてしまうようなこともありません。
白い靴のもう一つの大敵は日光などによる色焼け=黄ばみですが、スムースレザーの場合は上記の事実を知っていれば対応は極めて単純!クリーナーを用いた後に、新しいうちは「無色の乳化性クリーム」を、黄ばんでしまったら「白の乳化性靴クリーム」を用いてブラッシング&空拭きでオシマイです。この「白の靴クリームは」、一般的なものに比べ着色成分=白の顔料を非常に多く含んでいるので、これで黄ばみを覆い隠してしまえるわけです。なお、「無色」と「白」の乳化性クリームは見た目に大変よく似ていて、どちらも「白い」ので、買う時や用いる時は十分注意して下さい。
「白の乳化性靴クリーム」にはクリーム状のものと液体のものがありますが、もともと顔料で厚く表面を覆われている白のスムースレザーの通気性は、他の色の革に比べ初めから大きく劣っていますから、事前にクリーナーさえしっかり用いていれば後者でも問題ありません。お好きな方をお選びください。ただし着色力が半端じゃないので、用いるブラシは必ず、他の靴とは別のものにしてくださいね! 誤って他の色の靴にそれを用いてしまうと、取り除くのは極めて厄介ですから。
革靴のケア方法2:白い起毛系の靴は黄ばみも「アジ」と捉える
筋金入りのトラッド野郎ならかつては必ず持っていた、アメリカ・ウォークオーバー社のホワイトバックスのかかと部アップです。トップライン周辺が黄変しているのがお分かりでしょうか? このように白のスエードやヌバックレザーは、経年変化でどうしても革の地の色=黄ばみが発生してしまいます。これも「アジ」だと鷹揚に構えられる人だけが楽しめる靴なのかも? |
スエードやヌバックなどの起毛系レザーは、文字通り表面が毛羽立っているため、これらの革を白くする過程では粒子の粗い顔料はそこに定着できず、スムースレザーのようにはそれを用いることができません。その代りに、ベージュなどある程度白い色まで染め上げた後、「蛍光剤」とか「蛍光増白剤」と呼ばれる特殊な染料を用いて白く仕上げます。
大雑把に申せば蛍光剤とは、光の中の目に見えない紫外線を吸収し、それを目に見える青色の可視光線(これを「蛍光」と呼びます)に置き換えて放出する特殊な染料です。生成り色など若干黄色味を帯びたものに使用すると、青い光が加わって輝くように真っ白に見える効果があるため、白の起毛系の革以外でも一般的な白物衣料の多くで、製造段階からこれが用いられています。ただし蛍光剤は、水などで洗ってしまうと脱落してしまうのが大きな難点で、シャツや下着をお洗濯する時用いる大抵の洗剤に、これが含有されているのはそのためです。
ということは…… 白い起毛系の革は日光などによる色焼け以前に、スエードシャンプーで汚れを落とした段階で、蛍光剤が取れることで黄変し地の色が出てしまう恐れがあるわけです。蛍光剤を起毛系レザー用の液体靴クリームに含有させることも諸般の理由で不可能であり、このような黄ばみを元の状態に回復させる技術は、現状では残念ながらありません。ベビーパウダーや野球に使うロージンバッグ、それに白い白墨などを表面にまぶして白くする方法もあるのですが、それはあくまで一時避難的なものにすぎませんし、ナノテクノロジーを応用した起毛系の革にも使える顔料系着色スプレーなども昨今登場してはいますが、効果のほどを確かめるのにはもう少々時間が必要なようです。
なのでこの種の革は、汚れをなるべく付けず、たとえ付けてしまっても物理的にすぐ除去することが何より肝心!それでも時が経つにつれ、汚れはともかくどうしても退色=黄ばみは出てしまうものですので、これは「長く履いてあげている=流行だけで靴を選んでいるのではなく、装いが自らの『ことば』になっている証拠」と潔く割り切ってしまいましょう。
いかがでしたでしょうか? スムースレザーと起毛系の革では、対処方法が180度異なってしまうことがお解り頂けたかと思います。どちらを選ぶかはもちろん、皆さんのお好み次第ですよ。暑い日はこれからが絶頂期でしょうが、部屋に籠ってジーっとエアコンにあたってばかりいずに、お休みの日にはバリっと白い革靴を履いて、颯爽と出かけてみましょう!
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