アオダイショウ・シマヘビの飼い方とは
今回は「身近なヘビ」特にアオダイショウとシマヘビの飼い方をご紹介してみましょう!
また、今回ご紹介するお話しは、一般的なマウス食のヘビの飼育方法ですから、コーンスネークやキングスネークなどの外国産のナミヘビ類もほとんど同様の方法で飼育できますので参考にして下さい。
と言うわけで、一般の両爬飼育者の方にとっては当たり前のコトばかりで退屈かもしれませんが、御意見などをいただければ、とも思っていますので最後までお付き合い下さい!!
<目次>
日本のヘビたち
基本的に、ここでは日本のヘビの中でもアオダイショウとシマヘビに限って話をしていこうかと思っています。じゃ、他のヘビたちは?という疑問もあるでしょうから、それも含めて日本のヘビたちをおさらいしながら、なぜアオダイショウとシマヘビなのかを考えてみましょう。
沖縄などの南西諸島や対馬を除く、いわゆる本土には以下の8種類(北海道は5種)のヘビが分布しています。つまり身近なヘビというわけです。
- タカチホヘビ
- アオダイショウ
- シマヘビ
- ジムグリ
- シロマダラ
- ヒバカリ
- ヤマカガシ
- ニホンマムシ
この中で、ヤマカガシとニホンマムシは有毒種なので飼育をするためには「特定(危険)動物」としての飼養許可を保健所等で得なくてはいけません。それには血清も準備する義務がありますので、一般的ではないのでこのシリーズの対象外でしょう。
ヒバカリは以前に記事にしましたから、今回はパス。
ミミズしか食べないタカチホヘビ、そしてトカゲ類を主食にするシロマダラは特殊な食性であるだけでなく、温度や湿度等にナーバスで餌さえ準備できれば飼育できるかと言えば、決してそうではないヘビです。
どちらも、私は何回かチャレンジしましたが、相性が悪いのでしょうか、全くダメダメでした。
というわけで、少なくとも私には「コレがタカチホヘビやシロマダラ飼育のキモだ!!」と言えるものがありませんので、パスです。
たまたま子供さんが見つけてきたから飼おうとか家の前にいたから飼いたい、とか言ってすんなりと飼育できるヘビではないと思います。
さて、問題はジムグリ。「飼育しやすい」という意見と「あんなん飼育するヘビじゃない」という意見が真っ向から対立するヘビと言えます。
はっきり言って私も何匹も殺しています。
結論として
「ジムグリは絶対にコレで良いという飼育方法のノウハウが確立されているとは言い難いので、誰でもが安易に飼えるヘビとは言えない」
です。これが私の個人的な意見です。ですから、今回はジムグリも対象外です。
その他の日本のヘビ
ついでですから、本土以外のヘビたちで、今回の対象として良いヘビも挙げておきましょう。以下の種類は、冬期に冬眠可能でアオダイショウやシマヘビと同じように飼育できるヘビです。
- サキシマスジオ
- ヨナグニシュウダ
- サキシママダラ
- アカマダラ
- アカマタ
飼育したいのなら自分でその島まで行って必要数だけ採集するか、繁殖個体などを飼育しましょう。
アオダイショウとシマヘビってどんなヘビ?
それでは、いつものように飼育するために必要な野生での本来の生態について解説しましょう。両種ともナミヘビ科の中型のヘビです。アオダイショウは最大で2m近くまで、シマヘビは1.5mほどに成長します。
アオダイショウ |
日本全国に分布し、日本を代表するヘビと言っていいでしょう。どちらも比較的環境に対する適応が高く、山地から平地の市街地近くまで生活しています。
特にアオダイショウは人間との生活空間と重なることが多く人家に住み着いているようなこともあります。
一般にアオダイショウは山地や畑の周辺、シマヘビは河原や水田周辺などで見かけることが多いようです。
シマヘビ |
成体は見間違うようなことはありませんが、幼体はそれぞれ別種のような斑紋ですので、他の種類のヘビと間違えられることがあります。
またシマヘビはカラスヘビと呼ばれる黒化型が多く、全身または体の大部分が漆黒の個体も多く出現します。
一方、アオダイショウは「白蛇」と呼ばれるアルビノ品種が存在しています。
どちらも昼行性で日中に活動し、アオダイショウは鳥類や齧歯類を食べます。一方シマヘビはカエルや小型の齧歯類、鳥類など幅広い食性を持っています。
繁殖期は春から初夏で、一般には4月頃に交尾を行い、6月くらいに6-15個程度を産卵します。
卵は2ヶ月ほどで孵化に至りアオダイショウで30cm、シマヘビで20cmほどの幼蛇が生まれます。
寿命は長く、どちらも10年以上は確実に生きることができます。
ペットとして飼育するにはどうか
では飼育の対象としてアオダイショウやシマヘビというヘビはどんなでしょう。私が自宅で飼育しているヘビの種類別の個体数は、アオダイショウが最も多くついでシマヘビです。
で飼育してみての印象は、どちらも餌付きもよく飼育自体は容易です。またアオダイショウは非常に繁殖もしやすいため飼育の楽しみの一つでもあります。
ただし、ヘビ飼育の魅力の一つでもある「ハンドリング」はどうかと言われれば、必ずしもハンドリングに向いたヘビであるとは言い難いような気がします。
よく言われるのですが「シマヘビは気が荒い」個体が多いような気がします。屋外でも見つけたときに捕まえようとすると盛んに咬みついて来る個体が非常に多いようです。
また飼育下でも怒っているときなどは、水槽越しにアタックしてくることもあります。
一方、アオダイショウですが、これは個体差が大きいのでしょうか、意見が大きく分かれます。
つまりアオダイショウは「気が荒い」と「おとなしくて扱いやすい」という意見です。
どちらにしても、両種とも飼育下で馴れていない個体は、ハンドリングしようとすると盛んに逃げようと動きますし、屋外で採集してきた個体の場合は臭腺からクサイ臭いがする液体を出します。そういう意味ではハンドリングはできないヘビ、と考えた方が良いでしょう。
アオダイショウ・シマヘビの飼い方(飼育容器、餌など)
アオダイショウやシマヘビは、普通のヘビの飼育方法で飼育できます。と言っても、この記事を読んでいらっしゃる多くの方は「普通のヘビの飼育なんて知らない」という方でしょうから、わかりやすく説明しましょう。
飼育容器の様子 |
飼育に必要なものは
- 飼育容器
- 床材
- 水入れ
- シェルター
- 餌
・飼育容器
ヘビは狭い場所で飼育できる生き物です。ですから飼育容器は比較的小さくて構いません。
一般によく言われるのが「飼育容器の床面積は、とぐろを巻いたときの3倍あればいい」です。簡単に計算すると1m程度の個体でとぐろは直径20cmくらいでしょうから、面積は10cm×10cm×3.14=314平方cmです。その3倍ということは900平方cmです。一般的なフラットプラケと言われる薄型のプラスチックケースは42cm×20cmで床面積が840平方cmくらいで、ちょっと足りないですがだいたいこのくらいでも問題なく飼育できます。余裕を持って40cm×30cm程度の小型の衣装ケースほどもあれば広すぎるくらいに感じます。
なおシマヘビはどうやらアオダイショウよりも活動的ですので、やや広い飼育容器を準備した方が良いと思います。
大きな個体には衣装ケースもいいでしょう。衣装ケースはちょっと手を加えて飼育ケースにできます。
ただし、何よりも重要なのは「キチンとフタができること」です。
ヘビは信じられないような隙間から脱走をします。また力も強いためフタを開けてしまうこともあります。
フタがキチンとできるという点で、プラケースは向いているのですが、多少力を入れてもフタと本体の間に隙間ができないような製品を選んで下さい。
・床材
飼育容器の床には敷物をします。
両種とも、それほど素材にはうるさくないのですがヘビは大量の排泄物をします。
また水の中に入って水をあふれさせたり、水容器を倒して容器内を水浸しにすることが多くあります。
ということは、床材の選定のポイントは「交換しやすいこと」に尽きます。よく使われるのは「新聞紙」と「ウッドシェイブ」です。ウッドシェイブは小動物用のものを使えばいいでしょう。
・水入れ
彼らは飲み水としてだけでなく、脱皮前に全身を浸すために水が必要です。特にこれはアオダイショウで顕著です。ですから、水容器はとぐろを巻いた全身が入る大きさのモノを設置します。
また水容器をひっくり返すことが多いため、なるべく倒れない安定性のある形のものを使います。ま、どんな形のものを使っても倒すヤツは倒すんですが。
・シェルター
ヘビは隠れるのを好みますので、隠れ家(シェルター)は必須です。
特になるべく彼らの体に密着する方が安心するようなので、ちょっと狭いかな、と感じる程度の大きさのものを設置します。
シェルターの選定で大切なのは材質です。
ヘビが脱皮をするときに、皮を脱ぐためのとっかかりとしてシェルターを利用させます。ですから、シェルターの素材の表面はザラザラしたものがいいでしょう。
植木鉢の一部を上手に欠けさせたものが素材的に最も適しています。ただし植木鉢の底に開いている穴は、彼らがくぐり抜けようとして詰まってしまう事故が起こり得ますので、穴はふさいでおきましょう。
アオダイショウ・シマヘビの餌は、マウス!
はじめてヘビを飼育する方にとっての最大の難関です。アオダイショウもシマヘビも餌は「マウス」を使います。
マウスは爬虫類を扱っているショップで「冷凍マウス」を購入し、十分に解凍してから与えます。
与えるマウスの大きさは、ヘビの頭部よりも少し大きいくらいが適当です。
孵化したばかりくらいならばピンクマウスのS、50cmくらいの個体ならばピンクマウスのL、1m程度の個体ならばアダルトマウスのMからLを与えます。
アオダイショウは、だいたい簡単にマウスに餌付きます。シマヘビもほとんどは餌付きますが、ときどきマウスを食わない個体もいます。またシマヘビの幼蛇はマウスに餌付かせるのが非常に難しいことが多いです。このような個体にはカエルを与えます。カエルを食えば、次にマウスにカエルの粘液をつけて与えて徐々にマウスに餌付かせればいいでしょう。
と、簡単に「餌はマウス」と書きましたが、正直、常人の感覚ではありませんよね?
私も最初はかなり抵抗がありました。
しかし、マウスはヘビにとって完全栄養食であると考えてほぼ間違いありませんし、何よりも販売しているショップを見つけてしまいさえすれば、常に手に入れることができることが最大のメリットです。
よく「餌はカエルではいけないのか?」と聞かれるのですが、カエルを餌として常備するのは本当に大変です。そりゃ、カエルも食いますけどね。
給餌方法(餌の量、餌を食べなくなった場合)
ヘビの飼育のメインイベントは給餌です。飼育しているヘビがマウスをあっという間に呑み込んでくれるのを見るのは最高のストレス解消になります。
・給餌間隔
一般の方に最も驚かれるのが、ヘビの給餌間隔です。
ヘビは大きな餌を一回食えば、お腹の中でゆっくりと消化吸収します。つまり腹持ちがいいわけです。ですから、給餌の頻度は他の生き物に比べると、かなり少ない回数で構いません。
目安として「与えた餌が糞として排泄されたら次の餌を与える」という間隔です。
これはもちろん餌の大きさや量に関係してきます。
・餌の量
給餌量の目安は
- 孵化したての幼体・・・2日おきにピンクマウスSを1-2匹
- 50cm程度の若い個体・・・3日おきにピンクマウスLを1-3匹
- 1m以上の成体・・・一週間に1回、アダルトマウスを1匹
もちろん、これ以上も食いますが、あまり食い過ぎると吐き戻したりします。吐き戻しは、非常に体力を消耗するらしく、これが原因で死んでしまったりトドメをさしてしまうこともあります。
「まだ食い足りなさそうだな」と思うくらいがちょうど良いでしょう。
・マウスの解凍
まず冷凍マウスを「解凍」します。
絶対に凍ったまま与えてはいけません。凍ったままだと消化できずにお腹の中で腐敗してしまうからです。
解凍方法ですが、冷凍マウスを室温で放置しておくのがはじめての方でも抵抗なくできる方法でしょう。アダルトのマウスなら二時間くらい放置しておけば解凍できます。
ただし、表面のみが暖まって中が凍ってしまっているような場合もありますので十分に注意して下さい。
また別の注意なのですが、マウスの解凍はくれぐれも時間に余裕のあるときに行って下さい。解凍しているのを忘れてそのままにしておくと大変なコトになります。特にピンクマウスの時は...
・与え方
基本的に、解凍したマウスをシェルターの近くに置いておけば食います。ピンセット等で動かしたりしなくても普通は食うでしょう。
置いたマウスが翌日になっても食われないで残っていたら、それは捨てて何日か後に再び与えてみて下さい。
マダラヘビなどは、ピンセットにマウスをつまんでヘビの鼻先にゆっくりと押しつけると食うこともありますが、アオダイショウやシマヘビはそういうことをしてもあまり良い結果にはなりません。食うまで待つことです。
・食べているとき
ヘビが置かれたマウスに気づき、盛んに臭いを嗅ぎ始めたらそっと見守ります。
この時に振動や衝撃を与えると、そのまま食わなくなることがあります。
また餌を呑み込みはじめてもじっと息をひそめて見守ってあげて下さい。
・拒食
アオダイショウやシマヘビでは、あまり聞きませんが、頑なに餌を食わない場合があります。
餌を食わなかったからと言って、すぐに死んでしまうような生き物ではありませんので、基本的には「食うまで待とう」ということになります。しかし、やはり限界の目安があります。
孵化したての幼蛇ならば三週間、50cmほどの個体ならば1か月半、成体ならば2ヶ月くらいがその目安でしょう。
拒食というのは、飼育環境が適当でなかったり、何かの拍子に餌を食うというスイッチがオフになっていたりするので、飼育環境を見直したり、餌を変えてみたり、といろいろな方法がありますが、ここでは割愛いたします。たぶんアオダイショウやシマヘビなら大丈夫だと思うので。
それでもダメならどうするかと言えば「強制給餌」することになります。
ただし、健康な個体でも「脱皮前」は餌を食わないのが普通です。脱皮をしたら与えてみましょう。
その他の世話
給餌以外のヘビ飼育の日常の世話は、以下の項目くらいでしょう。- 給水
- 掃除
- 脱皮
・給水
ヘビはよく水を飲む生き物です。ですから、水容器にはいつでもきれいな水を入れておきます。特に餌を呑んだ後は、水をよく飲みます。
また、ヘビは水容器の中で排泄をすることが多く、水は汚れやすくなりますので、水容器の中の水が汚れていないかチェックをします。
・掃除
給餌後数日で、非常に大きくてクサイ糞をします。なるべく速やかに取り除きましょう。
ウッドシェイブなら、糞がある場所だけ床材ごと取り除けますから楽です。
床材の交換は、飼育スタイルによっても異なりますが、1か月に一度くらいの頻度で全部取り替えてあげればいいでしょう。
脱皮殻はそのまま放置しても特別に問題はありませんが、水入れの中に入ってしまうと、そこからあっという間にカビが生えますからできるだけすぐに取り除いてあげて下さい。
・脱皮
ヘビは数週間から数ヶ月おきに脱皮を行います。
脱皮前で目が白くなっている |
脱皮前には
・目が白くなる
・体に艶がなくなる
・水容器に浸かっている
・餌を食べなくなる
・あまり動かない
などの前兆が見られます。
目安として、目が真っ白になって、数日後にまた目が透き通ります。ここから3-5日後くらいに脱皮します。
理想的な脱皮は、脱皮殻が脱いだ靴下のようになっているのがいいのですが、ときどきポロポロと皮が断片的にむけてしまうような場合があります。
これは脱皮不全で、何らかのトラブルがあった証拠です。特に湿度不足であることが多いので飼育環境を見直して下さい。
アオダイショウ・シマヘビ飼育しはじめの注意点
最後になりますが、飼育し始めの注意点に触れておきましょう。ヘビ自身の立ち上げもそうですが、何よりも最初にしなくてはいけないことは「ヘビを飼育する覚悟」を決めることです。
もちろん、どんな動物を飼育するときも同じなのですが、やはりヘビは特殊な生き物です。
周囲の反対があるのは当然ですから、了承を得ないといけません。
またマウスを餌にするということも覚悟が要ります。油断すると脱走することも常に意識することも必要です。
そのような精神的な準備ができたら、ヘビ自身の立ち上げを行います。
とにかくヘビは神経質な生き物ですから、一般的には野外から採集してきてすぐに餌を食うことはないでしょう。
ですから飼育容器に入れてからは少なくとも3日ほどは暗い場所に完全に「放置」して下さい。触ったり、飼育容器を動かしたりしないことです。またこの間に一回脱皮を行うこともあります(俗に言う「イヤイヤ脱皮」)。
そうしてヘビがいつ見ても同じ場所でとぐろを巻いているようになったら餌を与えてみます。ここで餌を食えばしめたモノです。この瞬間から「ヘビを飼育している」と言えるようになると思います。
そして、きっと何よりもの楽しみが「ヘビが餌を食うシーンをじっと息を殺して見つめること」になるはずです。
ヘビを飼育する最大の楽しみは「ストレスを感じることとストレス解消が交互に来る緊張感」だと私は思います。ヘビを飼育すると言うことは、こんなマゾヒスティックな趣味なんです。
なおアオダイショウやシマヘビは「冬眠」も可能ですし、「繁殖」も楽しめますが、これに関してはまた別の機会にご紹介します。
カッコイイッ!! |
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