第1位:本気で笑って涙ぐむ『奇人たちの晩餐会』
『奇人たちの晩餐会』 |
スノッブでリッチなインテリたちが、各自、毎回とっておきのcon(コン/馬鹿)を同伴して、「お馬鹿の優勝者」を決めるというとっても趣味のいい(!)趣旨をもつ晩餐会を開催。そしてそこに招かれるスーパーエース級のお馬鹿、François Pignon(フランソワ ピニョン) 。
フランスでは約7人に1人が観たという奇跡的な観客動員数を誇るこの作品の魅力は、その風貌と個性的な演技でセザール賞主演男優賞まで獲得してしまった名優Jacques Villeret(ジャック・ヴィルレ)の存在抜きに語ることはできないでしょう。2005年に亡くなって、伝説のコメディアンとなった彼、役名のPignonもすでに「con」の代名詞と化しました。
第2位と同じくFrancis Veber監督の手による作品ですが、この作品のキーワードを一つ挙げるとすれば、映画のテーマ曲に採用されているGeorges Brassens(ジョルジュ ブラッサンス)のシャンソン『Le temps ne fait rien à l'affaire』にもあるように、「Les cons innocents(無垢な馬鹿)」。
Pignonの馬鹿ぶりをあざけって最初は大笑いしていた観客たちも、ストーリーが進むにつれて、この悪意のかけらももたない「con」が、実は無垢で神聖な「bon」(ボン/善人)であることに気付かされ、自らの心を見つめ直すハメに陥ります。
知性・エスプリの欠如を徹底的にあざけるフランスのスノッブたちの風潮を、Pignonの表情を通して、真剣な哀れみと同情心をもって静かに批判。ブラックな笑いの裏側で、常に弱いもの、大衆への愛が感じられるその映像は、「フランス革命精神のコメディ化」という感じすらします。人間はみんな愛すべき「無垢な馬鹿ども」。そんなメッセージを受け取りながら大爆笑できる傑作。この作品を観ずにしてフランス映画を語るなかれ!
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