「シュール」って何でしょう?このビミョーな和製フランス語(?)に関しては、「奇抜・難解・非現実的」とみなさんの中でもいろいろな解釈があると思いますが、今回の「フレンチ・コメディBest 5」の 選択基準は、ズバリ、dépaysement (デペイズマン)。

dépaysement とは、簡単に言えば「ありえない場所に通常ではありえない物が出現するショック」とでもいうようなことで、surréalisme(シュルレアリスム/超現実主義)の世界では、Lautréamont(ロートレアモン)の『la rencontre fortuite sur une table de dissection d'une machine à coudre et d'un parapluie』「解剖台の上でのミシンとこうもり傘の偶然の出会い」(Maldoror, VI, Roman (I))がその代表例とされています。

「フレンチ・コメディ」には、そんな意外性がかもしだす美、「なんでそうなるの???」という不条理から生まれでる高度な笑いが満載です。ハリウッド的直球ではなく、後頭部から白球がぶちあたるような笑い。そんな笑いを「シュールな笑い」と勝手に定義しつつ、独断と偏見でBest 5を選んでみましょう。

第5位:フランスの真の姿がここにある『猫が行方不明』

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『猫が行方不明』
原題は『Chacun cherche son chat』(シャカン シェルシュ ソン シャ)。フランス語の早口言葉みたいなタイトルですが、直訳すると「誰もが自分の猫を探している」という意味です。ストーリーはタイトルそのままで、主人公 Chloé(クロエ)がヴァカンスにいくために、猫好きのMadame Renée(マダム ルネ)に猫を預けるものの、その猫が行方不明に。ご近所中を巻き込んで、ただただ猫を探すだけというちっともおもしろくなさそうな内容なのですが……。

爆笑度数はそれほど高くないものの、随所に「ニヤリ」、「クックックッ」的な笑いの要素がちりばめられております。「おしゃれなフランス」、「花の都パリ」というイメージを完璧に打ち砕いてくれる11区の街並と個性豊かな人々。スノッブな観光客なら思わず黙殺したくなるであろう、雨が降ると平気でスーパーの袋を頭にかぶってしまう人々に象徴されるフランスの現実の姿。

脇を固める登場人物たちも、孤独なマダムたち、同性愛者、移民に知的障害者、ナンパ男と、さまざまな文化をもつ人たちが共存するパリをにぎやかに彩っています。俳優の多くに素人を活用したというCédric Klapisch(セドリック・クラピッシュ)監督が描く世界は、奇をてらうわけでもなく、自然体で、生活感あふれるパリを小粋に描いたものであり、「おしゃれでない」人たちが実はとっても「おしゃれである」ということに気付かせてくれるという点で、まずは一票を投じるといたしましょう。

次ページでは、第4位を発表します。