防犯/防犯小説

思惑と本心 愛と故意のラビリンス?第2回(3ページ目)

【2/6】逸美から積極的に声を掛けた男性・高井謙一は話すほどにいい条件だった。さらにパーティ後に一緒に帰り、逸美は次回のデートの約束まで取り付ける。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

謙一という男

二度目のデートで次は…
二度目のデートで次は…
謙一は性格的にリーダーシップを取ることが苦手だった。誰かに従っている方が気楽だったのだ。女性との交際においては、相手を尊重しているように見えるが、結局は責任を取ることが好きじゃなかった。肉体関係まで行くにしても、必ず女性から誘うようにし向けていた。何かあっても相手のせいにできるからだ。賢い女は謙一のそういうずるい点に気がついて去っていった。

結婚したいという気持ちがもちろんないわけではなかったが、実はまだ独身でいたい気持ちも強かった。「いい人がいれば」と言いながら、いなければいないで結婚しなくてもいいと思っていたのだ。それでも「お見合いパーティ」なら、結婚の意思がある女性が集まる。とりあえず、女性とは何度か会ってみて「自分にとってのいい女」であるかどうかを知ろうとしていた。つまり、料理が上手で、家事ができて、自分が楽でいられる相手…。

今日の相手、逸美は料理教室に通っていたというし、見た目もそれほど悪くない。ちょっと年がいっているが、半年くらいの年上ならかえって自分が楽だろうと読んでいた。相手が引け目に思えば、それは自分に有利に働く。会話でも頭の良さを感じたし、育ちの悪さは感じなかった。まず第一回目で得た情報の限りでは、逸美は合格だった。

名前から兄弟のことを聞いてきたことも、逸美が探りをいれていることくらい分かっていた。自分の条件は悪くないはずだと知っているし、逸美がその点を喜んだことも読めていた。二人ででかけた店でも、逸美が話題を振って、謙一が応える形だった。逸美の積極的な視線を受け止めながら、さりげなく彼女を持ち上げる会話で、逸美の気持ちを無意識のうちにあおっていた。

わざと、というわけではないが、謙一は女とはそう付き合ってきたし、変えるつもりもない。要は女が自分を好いてくれなければ付き合う意味はないと思っている。それでも、自分は女性に対して悪い男ではないと思う。互いに条件が合えば、そこから先は成り行きにまかせればいい。

逸美も謙一も互いの条件から入っていった。「お見合いパーティ」なのだから、それは間違いではなかったかもしれない。互いの気持ちがどうなっていくか、それはこれから自然に分かっていくだろう。逸美から言い出して二人はメールアドレスを交換して、携帯電話の番号を教え合った。逸美の誘いで、次にデートする日取りまで決めた。

結婚を意識してそのつもりになっている逸美と、誘われたのでとりあえず付き合ってみようかという謙一との間には気持ちの温度差がかなりあったが、どちらもその差に気がついていなかった。二度目のデートで逸美が、「次の週末は手料理をご馳走するから」と謙一を自宅に誘ったことから、交際は加速度を増すことになる。



逸美の自宅へ謙一が訪ねていく。どう展開するか? →愛と故意のラビリンス~第3回 へ続く。

・愛と故意のラビリンス~第1回
・愛と故意のラビリンス~第2回
・愛と故意のラビリンス~第3回
・愛と故意のラビリンス~第4回
・愛と故意のラビリンス~第5回
・愛と故意のラビリンス~第6回  


■その他の読み物は
「防犯ケーススタディ」からご覧下さい。

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