※この記事は、最近起きた事件をヒントにした創作です。【全6回】

愛と故意のラビリンス~第1回
愛と故意のラビリンス~第2回
愛と故意のラビリンス~第3回を先にご覧ください。

<これまでのお話>
逸美の自宅に週末訪れる関係が続いていた。様子を見て、相性や将来について考えるつもりでいた謙一だが、どうにも合わないものを感じていた。

交際は続いても

飲んで考えないように
飲んで考えないように
二人の関係は続いていた。初めの頃はほとんど毎週末のように、手料理を用意して待つ逸美の自宅に謙一が訪れていた。一見、何ごともなく順調に見えた。が、五ヶ月を過ぎる頃、謙一は限界を感じていた。些細なことでも積み重なれば大きな要因になる。

逸美が作ったカレーを食べたときに、実家でいつもするようにソースをかけようとすると、「20種類の香辛料を使って作ったカレーなのよ。そのへんのインスタントカレーと同じにしちゃいや」と、断固として許されなかった。また、服装の趣味が合わなかった。一緒に買い物に行って、逸美がいいという物は謙一の趣味ではなかった。

時間に遅れると、「どうして電話してくれないの」とうるさい。その度に、謙一は「ゴメン」と言うのだが、遅れた理由を言うのも面倒だったし、言ったところで無駄だった。逸美の音楽の趣味はどうしても好きになれなかったし、ドキュメンタリーやニュース番組が見たいと思っても、逸美はドラマしか見ようとしなかった。

逸美の家なのだし、あえてムキになって異論を唱えることもない。逸美の主張には逆らうつもりはなかった。だが、逸美は謙一が自分の考えに同調したものと思い、どんどん増長していった。自分の言うとおりにしてくれることは、自分が正しいということだと勘違いしていたのだ。

謙一はただ面倒なだけだった。考え方が違うことをその度に痛感していただけで、主張はしないが無言でいることで意思表示をしているつもりだった。トラブルが嫌いで、口喧嘩も好きではない。ただ、(この女とは合わない)という気持ちだけがふくらんでいった。あまり飲めない酒を口にして、逸美のおしゃべりを聞き流すようにした。

週末ごとの決まり事になった関係は捨てがたいものがあったが、それは単に食事と夜のベッドをともにするという二つの欲望を満たしているだけと考えていた。これまで通り、自分が無言になり、会う回数を減らせば、相手が気づいてくれるものと思っていたのだ。

逸美は自分に逆らわない謙一を扱いやすいと思っていた。自分がリーダーシップを取ることが二人の関係においては正しいと思っていたし、謙一もそれをよしとしていると思った。毎週訪ねて来てくれて、肉体関係を持っていることは、当然、結婚がその先にあると信じていた。

謙一はただ将来的なことを考えていないだけだった。とりあえず欲望を満たしてくれることだけでよかったのだが、次第に逸美が鼻についてきた。仕事を理由にほぼ毎週だったのが、二週に一度になっていった。それでも会う回数だけは重なっていったので、逸美はさりげなく「結婚」を話題に持ち出すようになってきた。

友人の結婚式の写真を見せたり、自分が憧れている人たちのステキな結婚生活を「うらやましいわ」と言った。家族に紹介することもほのめかす。その度に気のない様子の謙一に気づかず、自分の結婚への夢を語った。すでに二人の間には大きな距離があったのだが、ベッドをともにするという行為でその距離が見えなかったといえる。

→・決定的な出来事……p.2
→→・別れたい……p.3