「数え切れないくらい」
「それは異常だわ。ストーカー行為じゃないの」
「名前が書かれたメールがくるようになってからは、もう恐くって…」
恐怖心がよみがえったようにまた突っ伏して泣く娘を、両手で抱き起こして胸に抱いた。より一層激しく泣きじゃくるその背中を、母はそっとなでさすった。そんな風に娘の体の重みを感じたのは久しぶりだった。
子どもが大きくなってくると、次第にスキンシップは減ってくるもの。でも、手を握ったり、肩を抱いたりするだけでも子どもは安心できるのです。「手当て」は文字通り手を当てること。心身ともに癒される「ヒーリング」。おかあさんの手を当てれば、子どもの心も癒されます。
(小さい頃からあまり泣かない子だった。いや、常におねえちゃんと呼ばれて、妹の手前、泣けない子になったのだ。私もおねえちゃんとばかり呼んで、K美と名前を呼ばなくなっていた。おねえちゃんであるよりこの子はK美なのに。M美と同じように、幼くて、甘えん坊な女の子なのに…)
「姉(兄)=妹(弟)」であるのが理想でも、現実には「姉(兄)<妹(弟)」であったり、「姉(兄)>妹(弟)」というアンバランスはどの家庭にもあるようですね。
希望
「K美、K美ちゃん、もう大丈夫よ。おかあさんはあなたの味方だから。さぁ、もう泣かないで」少女はひとしきり泣き続けて、ようやくしゃくり上げながら、顔を上げた。
「おかあさん…」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を見ると、幼い頃の娘の泣き顔とダブった。
(ちっとも変わっていない。小さい頃のK美のままだわ)
ティッシュペーパーの箱を引き寄せて、数枚引き出すと娘の頬をぬぐった。
「さぁ、もう大丈夫。わかったから。いい、K美、あなたは愚かなことをした。これは変えようのない事実なのね。でも、二度としていないのだし、十分後悔しているでしょう。それなのに、そんなに何度もメールが来て苦しめられて。かわいそうに。この男は絶対におかしいの。お金を寄越せって、恐喝してる。これは間違いなく犯罪。それに、未成年者にヘンなことをしちゃいけないのに、この男のしたことは最初から間違っているし、完全にストーカーよ。警察に捕まえてもらうべきだわ。さ、おかあさん、この手紙を持って警察署に行ってくる」
このような場合は、脅迫状に屈しない・直接交渉しないで、警察に相談することが一番。正しい判断です。
「おかあさん、私を許してくれるの」
「許すもなにも、あなたは十分以上に苦しんだでしょう。おかあさんはあなたの母親だし、あなたの味方よ。私があなたを守らないで、どうするの。ただ、もう二度と自分を粗末にしないで。それはあなたを生んだ私を苦しめることだから。約束してね。さぁ、もう心配しないで」
「おかあさん、ごめんなさい! ごめんなさい! 許してね。おかあさーん」
また泣き出した娘を抱きしめながら、母もあふれる涙が頬を伝うのをこらえようとはしなかった。
その日の午後、警察署に1人で行くという母に、自分がちゃんと話すから、と少女も一緒に行くことにした。
「つらいことを聞かれるわよ、きっと」
「大丈夫。おかあさんと一緒だから」
たくさん泣いて心のつかえも取れてスッキリした顔に笑みを浮かべて、少女は母の腕に甘えてすがるように、だが、しっかりとした足取りで歩き出していた。
【最終回】法律は見逃さない!裁かれる男出会い系サイト~男の代償に続く。
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