防犯/防犯小説

【連載第5回】名前を知られた少女の衝撃と絶望 出会い系サイト~少女の後悔(3ページ目)

[5/6]突然、自分の名前が記されたメールが少女に届く。思いもよらない衝撃に少女は激しく動揺する。しかし、後悔すでに遅し! 少女に救いは?

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

バカな、と言いかけて言葉を飲み込んだ。
(この子が! 援助交際を!? この手紙は本当のことを書いているというわけ? ウチの娘が、売春を!?) 
全身から力が抜けたように、体がソファに沈み込んだ。
(たかが電話代のために、なんてことを!)

17年間育ててきたのは、売春などをさせるためじゃなかったはず。ましてや、携帯電話料金のためになど。

「それで? それで、この手紙を寄越した男の人はどこの誰なの?」
「若くない男の人。どこの人かは知らない」
「若くない男の人って、いったいいくつの人? あなたが知らないのに、なんでウチに手紙が来るの!」
「五十代だって言ってた。ウチに手紙が来たのはなんでか知らない! 本当に知らないの。だって、もうずっと前に一度会っただけだし、名前も何も知らないの。それに私、名前とか住所とか、絶対に言ってない! 本当よ」

「五十代って、あなた、自分のお父さんよりも年上じゃない…。ちょっと待って。いったいいつの話? 最近、あんまり携帯電話使ってなかったでしょう?」
「今から、9ヶ月、10ヶ月前くらい…」
「そんな前の話なの? だいたいなんで電話代がかかったの」
「インターネットもしたけど、あの頃、友だちのE理ちゃんが、おかあさんとおとうさんが離婚するかもしれないってすごく悩んでいたの。それで、ずっと相談に乗ってあげたりして。それで3万円近くなっちゃったの」
「なんで、おかあさんに言わなかったの!」
「だって、M美が高校受験の時だったから。入学金とかで家が大変だってわかっていたから。とても言えなかった…」


親や家庭の事情を考えたつもりだったのでしょうが、やはり考えが浅はかでしたね。親からすれば、お金で済むことならば、その場では怒ったり叱ったとしても、娘が援助交際に走るよりはどれだけマシなことでしょう。

理解

(この子は!! 友だちのために電話代がかかって、それを妹の進学費用が大変だと考えて親に言えず、援助交際を…。なんて、なんて愚かな…でも)
全身を震わせて泣く娘の背にそっと手をおいた。

(この子は昔からやさしい子だった。自分のことより、回りのことを考える子だった。しっかりして、やさしくて。電話代がかかったのも、友だちの相談に乗るためだなんて。友だちにもやさしい子なのよ。M美にも面倒見がよくていつもやさしい。それで私もつい、この子のことはあまり気にかけずにきたかもしれない。もしかしたら、SOSを出していたのに、私が気がつかなかったのでは?

※エスオーエス [ SOS ]
(1)1906年に国際無線電信会議で定められた遭難信号。船舶や航空機などが危険にさらされた時に救助を求める時の信号。単なる符号で、文字自体には意味がない。「―を発する」
(2)危険な状態。また、援助を求めること。 「大辞林 第二版」より


親としてはどの子にも分け隔てなく愛情を注いでいるつもりでも、子どものほうでは微妙な違いを感じ取っているはずです。子どものほうから言いたいことが言えなかったり、子どもの発信する信号に親が気づいてあげられなかったり。やはり、親子のコミュニケーションは大切です。

私にもやさしい子だ。いつも手伝ってくれたり、私のことを心配してくれる。母親の私が考えてもひいき目なしに見てもやさしくていい子だわ。この子がなんで、こんな目に遭わなくてはならないの? だいたい、この手紙を出した人はどう考えてもおかしい。内容がまともとは思えない。五十代というのに、こんな子どもに交際を求めるなんて)

「本当に一度だけなの。それで、何度も何度もつきあってくれってメールがきていたんだけど、いつもすぐに消していた。そしたら、最近になって、私の名前を書いてくるようになったの…」
「最近になって名前がわかったということなのかしら」
「わからない。でも、それまでは私の名前は知らなかったはず。私は絶対に言ってないし」


最終ページで「ストーカー/心理と対策プチ講座Vol.4」もあわせてご覧下さい♪

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