68歳のT子さんは、週に3日午前10時から午後3時までパートで働いています。朝に時間的な余裕があるはずでしたが、ある変化に気づき始めました。
「仕事に間に合えばいいと思うと、つい起きる時間が遅くなってしまいます。何も予定がなければ、なおさら……」。
起床時間が少しずつ遅くなっていくことに危機感を覚えたT子さんは、「朝に必ず出かける予定をつくってみよう」と考えました。
そこで目をつけたのが、近所で行われている「ラジオ体操会」です。今回は、T子さんがラジオ体操を始めたことで変わった、朝の過ごし方や1日の時間の使い方、地域とのつながりをご紹介します。

「朝に出かける理由」をつくる
ラジオ体操を選んだ理由は、シンプルでした。短時間で全身を動かせ、特別なウェアや器具も必要ありません。T子さんが参加する会は参加費も無料です。近所で行われているため交通費もかからず、家計の負担を増やさずに続けられる点にも魅力を感じました。
「これなら毎日でも続けられそうだし、朝起きる理由にもなる」と考え、軽い気持ちで参加を始めたT子さんでしたが、その効果は思いのほか大きかったといいます。
朝の習慣が、1日全体の時間を変えた
ラジオ体操を始めたことで、T子さんの朝の過ごし方は変わりました。以前より早く起きるようになったため、ラジオ体操から帰宅しても、出勤までまだ時間があります。
そこで、その時間を使って家の中を軽く掃除したり、夕飯の下準備をしたりするようになりました。「前は仕事から帰ってきてから、掃除をしたり夕飯を作ったりしていました。でも、朝のうちに少し済ませておくと、帰ってきてからゆっくりできます」。
朝に家事をすませておくことで、仕事から帰った後の時間に余裕が生まれたといいます。実際、朝から体も動かすし、家のことも少しできる。そのおかげで、1日をちゃんと使った感じがして充実感があるとのこと。
朝、少し早く起きるようになり、その分1日の後半をゆったり過ごせるようになったのです。
暑さ対策と「無理をしない」という工夫
ラジオ体操会への参加は手軽ですが、続けるにはちょっとした工夫も必要です。
夏は朝から気温が高い日も珍しくありません。T子さんは、水分補給のための水筒と、首回りを冷やすための保冷剤を準備しています。
さらに、体調がすぐれない日は無理をして出かけません。そんな日は、自宅でラジオをつけて体操をします。「毎回、必ず外に行かなければ」と決めてしまうのではなく、その日の気温や体調に合わせて参加方法を変える。これが、長く続けるためのT子さんなりの工夫です。
地域の人との挨拶が、朝の楽しみになる
ラジオ体操会には、近所の人たちが同じ時間に集まります。「おはようございます」と挨拶を交わしたり、天気や暑さについて少し話したり。ほんの短い会話ですが、T子さんにとっては、それも朝の楽しみになっています。
「家にいるだけだったら、朝から誰かと話すこともありません。ちょっと挨拶するだけでも、気分が明るくなります」
T子さんは週3日のパート勤務なので、仕事のない日は人と顔を合わせる機会が少なくなります。そんな日もラジオ体操へ出かければ、近所の人と言葉を交わせます。何気ない挨拶や短い会話でも、地域の人と顔見知りになるきっかけになります。
参加費のかからないラジオ体操は、健康づくりだけでなく、人と顔を合わせる機会をつくり、老後の孤独や孤立を防ぐことにもつながっているようです。
お金をかけずに「朝の習慣」をつくる
老後は時間が増える一方で、「何をして過ごせばいいのか分からない」と感じることもあります。趣味や習い事を始めようと思っても、参加費や道具代がかかるうえ、自分に合うかどうかは始めてみなければ分かりません。その点、無料のラジオ体操会なら、特別な道具をそろえる必要もなく、家計に大きな負担をかけずに始められます。
さらに地域のラジオ体操会なら、「朝はここへ行く」という予定と、顔を合わせる人たちもできます。T子さんの場合、ラジオ体操を始めたことで、早起きする習慣ができ、朝の時間を家事にも使えるようになりました。そして、仕事のない日にも外へ出るきっかけができ、地域の人との挨拶や会話も生まれています。
「朝、何となくダラダラしてしまう」「お金をかけずに何か始めたい」という人は、近所のラジオ体操会を探してみるのもよいでしょう。全国のラジオ体操会は、NPO法人全国ラジオ体操連盟のホームページから実施会場を確認できます。







