仕事を辞めた69歳のM美さんは、最近、ある課題を感じるようになりました。時間は増えたのに、毎日を一人で過ごしていると、人と話す機会がめっきり減ってしまったのです。そんな中、知人から「健康マージャンに参加してみない?」と声がかかりました。
健康マージャンは、賭けない、飲まない、吸わないことを基本とするため、シニア世代の交流の場としても人気があります。「マージャンのルールなんて、まったく知らないんです」そう答えると、知人は「大丈夫。教えてあげるから」と言ってくれました。
とてもありがたいお誘いです。しかし、M美さんはすぐに参加するのではなく、少し考えることにしました。
今回は、M美さんが「無料だから」という理由だけで飛びつかず、秋から新しい居場所に参加するための準備を始めた経緯をご紹介します。

「無料だから」は理由にならない
M美さんが慎重になった背景には、以前の経験がありました。
以前、「お金をかけずに過ごすなら図書館がいい」と勧められ、近所の図書館に通ったことがあります。
図書館には、本や新聞、雑誌など、さまざまな情報がそろっています。ところが、特に目的を持たずに出かけてみると、思ったほど楽しくありません。というのも、読みたい雑誌がほかの人と重なって順番待ちになったり、何をしようかと考えているうちに時間を持て余したり。
無料で利用できる場所でも、自分なりの目的がなければ、必ずしも居心地のよい場所になるとは限らないと感じ、結局、図書館へ行くこともやめてしまいました。
「教えてあげる」に甘えず、まず自分で準備する
健康マージャン教室であれば、初心者向けの講座が用意されていたり、同じくらいのレベルの人と一緒にルールを覚えたりできます。
しかし、今回のお誘いは知人からのもの。もちろん「教えてあげる」と言ってくれたことはありがたいのですが、何も知らないまま参加すれば、相手に何度も質問することになるかもしれません。
「せっかく誘ってもらったのだから、自分も楽しみたい。それに、ずっと教えてもらう側だと、相手にも気を使わせてしまうかもしれない」。そう考えたM美さんは、8月中に基本的なルールを学び、秋から参加することにしました。
秋からの参加に向けて、図書館でマージャンを学ぶ
M美さんは、図書館でマージャンの基本を学ぶことにしました。学ぶと言っても、初心者向けの本を探し、まずは基本的なルールを知るというもの。
「本だけで全てのルールを覚えられるとは思っていません。でも、少し知っておくだけでも違うはず」。最低限の知識を身につけておけば、実際にやってみたときにも質問するポイントが分かり、自分自身も余裕を持って楽しめると考えたのです。
以前は「暇つぶし」のために図書館へ行っていましたが、今度は「秋から始める健康マージャンの勉強」という目的ができました。同じ図書館でも、目的があるだけで過ごし方は変わる。これもM美さんにとって、新しい発見となりました。
「自分が楽しみたいか」を判断基準にする
M美さんの経験から見えてくるのは、お金をかけないことと、満足度の高さは必ずしも一致しないということです。
老後は時間が増える一方で、現役時代のように仕事を通じて人と自然につながる機会はなくなります。だからといって、「無料だから」「誘われたから」と、何でも利用すればいいわけではありません。
大切なのは、自分が興味を持てるか、続けたいと思えるかです。「やってみたい」「人と交流したい」という気持ちがあるなら、参加する前に少し準備をしてみる。そうすることで、単なる時間つぶしではなく、自分が楽しめる活動に変わっていくかもしれません。
M美さんの場合、それがマージャンのルールを学ぶことでした。「無料だから参加する」のではなく、「自分が楽しみたいから参加する」。楽しむには、できる範囲での準備をしておく。秋から健康マージャンに参加すれば、そこで新しい人との出会いもあるでしょう。楽しいかどうかは、実際にやってみなければ分かりません。それでも、69歳になってから新しいことを始めるために、自分なりの準備をしているM美さん。
老後の「居場所」は、誰かから与えてもらうものではなく、自分が興味を持てることを見つけ、少しずつ育てていくものなのかもしれません。







