歌舞伎

日本舞踊の教室や流派の選び方6つのポイント……月謝の相場も解説!

日本舞踊を始めたいけど流派の違いや先生の指導方針など、選び方が分からない。生徒の年代や男女比は? 教室はどのように探せばよいのか? このような日本舞踊教室を選ぶ際の疑問に答えます。月謝の相場や必要な道具にかかる費用についても併せて解説。

執筆者:All About 編集部

日本舞踊の教室や流派……選び方のポイント6つ!

日本舞踊の教室や流派の選び方

日本舞踊を始めたいけど先生の流派や指導方針が分からないーー。こんな疑問に答えます。

日本舞踊を始める際、最も重要なステップの一つが教室選びです。しかし、どの先生が自分に合っているのか、月謝の相場はどれくらいなのかといったことが分からず、最初の一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、日本舞踊教室を選ぶ際のポイントや、月謝の相場、必要な道具にかかる費用についてまとめました。記事を読んで、自信を持って教室選びに取り組んでみてください。
 
<目次>

日本舞踊の教室を選ぶポイント1.先生の流派は?

日本舞踊の教室選びでは、先生の流派は必ず確認しておきたい

日本舞踊の教室選びでは、先生の流派は必ず確認しておきたい

日本舞踊教室を選ぶ際に最も重要となるのが、どの先生(お師匠様と呼ぶ流派も多いです)に師事するかということです。特に、先生が所属している流派は必ず確認するようにしましょう。日本舞踊の流派は、日本舞踊協会に加入しているだけでも100以上の流派があり、未加入や後述する新舞踊も含めると200を超えるといわれています。
 
たまたま知人に勧められた流派に入門するという方も多いのですが、流派によって振り付けが異なるほか、門弟の数も数十~数万人と大きな差があります。先生の踊りを観て「この先生に習いたい」と思うのであれば流派にこだわる必要はないとも言えますが、何の知識もないまま入門すると、「思っていたイメージと違う」と後悔することもあるかもしれません。以下に主な流派とその特徴を挙げるので教室選びの参考にしてみてください。
 
▽五大流派
五代流派の一覧表

五大流派の一覧表

上記はいずれも関東を発祥とする流派で、歌舞伎から舞台舞踊として発展した歴史を持ちます。一方、関西では上方舞と呼ばれる独自の流派が活躍しています。能の影響を強く受け、屏風を立てた座敷で道具を用いずに素踊りで静かに舞うのを特徴としています。男性の場合、関東の流派では袴をつけますが、上方舞では着流しが一般的です。上方で発達した地唄と呼ばれる音楽に合わせて踊ることが多いことから、地唄舞とも呼ばれます。
 
▽上方舞の四大流派
上方舞の四大流派の一覧表

上方舞の四大流派の一覧表

このほか、歌謡曲や演歌などに合わせて踊る「新舞踊」というジャンルもあります。全国に数百の流派があるとされますが、その正確な数は分かっていません。なお、大正期に坪内逍遥や藤蔭静枝らが起こし、日本舞踊の改革を目指した新舞踊運動のことを本来は新舞踊といいますが、近年は前者の新舞踊のことを指すことも多くなっています。
 

日本舞踊の教室を選ぶポイント2.先生の指導方針は?

大きなホールで発表会を開催する場合は費用が高くなりやすい

大きなホールで発表会を開催する場合は費用が高くなりやすい

先生が所属する流派を調べることで、大まかな傾向はつかめますが、それでも先生によって指導方針は千差万別です。古典を重視する先生もいれば、前衛的な舞踊を好む先生もいます。
 
また、発表会の頻度も先生によって異なります。発表会を全く開かない先生もいれば、発表会は任意参加でよいとする先生、お浚い(さらい)会という身内だけで行う簡単な発表会を開く先生、大ホールを借り切って大々的な発表会を開催する先生もいます。年に1~2回開く先生もいれば、数年に一度の先生もいます。
 
発表会の本気度によって費用が大きく変わるため、この点は入門する際に確認しておきたいところです。詳しくは費用の項目で後述しますが、大ホールで実施する場合は会場費や衣装、かつらにかかる費用も増える可能性があります。
 
お稽古の回数も先生によってさまざまです。週1の稽古を基本とする先生もいれば、生徒の都合に合わせて柔軟なスケジュールを組んでくれる先生もいます。多くはマンツーマンでの稽古ですが、グループレッスンを行う先生もいます。
 
家元クラスの先生の場合、マンツーマンであっても手取り足取り教えてくれないこともあります。他の生徒の踊っている姿を見て振り付けを学ぶ必要があり、初心者にはハードルが高いかもしれません。また、稽古が行われる曜日や時間帯も教室選びの重要なポイントになるでしょう。
 

日本舞踊の教室を選ぶポイント3.どうやって教室を探す?

SNSで発表会の準備状況や稽古の様子を公開している教室もある

SNSで発表会の準備状況や稽古の様子を公開している教室もある

知人に日本舞踊を習っている人がいなければ、以下の方法で教室を探すことが多いでしょう。それぞれの特徴を挙げますので、教室探しの参考にしてみてください。
 
・各教室のホームページを見る
インターネットで「日本舞踊 教室 東京」などと検索すると、各教室のホームページが表示されることがあります。教室によっては、稽古の流れや指導方針、流派の歴史、日本舞踊の基礎知識など、事細かく情報が記載されているものもあり、教室選びの助けになるでしょう。ただし、ホームページが充実しているからといって、必ずしも自分に向いている教室とは限らない点には注意が必要です。
 
・各流派の公式サイトで調べる
インターネットで「〇〇流」と検索すると、各流派の公式サイトが表示されます。公式サイトの中には、例えば坂東流のように全国各地の教室情報を検索できるものもあります。ただし、掲載されている情報が各教室の電話番号や住所程度と、情報量は少ないことがほとんどです。興味を持った教室があれば、さらなる情報収集が必要となるでしょう。各流派にメールや電話で問い合わせてみるのもよいでしょう。
 
・TwitterやInstagram、YouTubeで調べる
数は多くないのですが、一部の教室ではSNSで積極的に情報を発信しています。ホームページよりも更新頻度が高く、発表会の準備状況などリアルな雰囲気を知ることができます。YouTubeには指導の様子や発表会の映像が公開されていることもあり、教室選びの参考になるでしょう。
 
・発表会を観覧する
指導を受けてみたい先生の発表会に足を運び、先生の実力や自分の好みに合う踊りかどうかを確認するのも手です。公演情報は、各教室のホームページやSNSで公開されることが多いです。また、日本舞踊協会が主催する公演には、さまざまな流派が参加するため、どの流派を選ぶべきか迷っている人にとって参考になるでしょう。
 

日本舞踊の教室を選ぶポイント4.教室の規模やレベル、年代、男女比

多くの教室では女性の生徒が大半だが、男性の生徒が多い教室もある

多くの教室では女性の生徒が大半だが、男性の生徒が多い教室もある

教室によってレベルや生徒の数などはさまざまです。特に注意したいポイントを以下に4つ挙げましたので、参考にしてみてください。
 
・生徒が多い/少ない
稽古がマンツーマンで行われる場合、他の生徒の数はあまり気にならないでしょう。ただし、生徒数が多い教室は人気が高い場合が多く、先生の教え方が良い、教室の立地が便利、稽古の日程や時間帯が柔軟であることなどが考えられます。このような点を考慮すると、生徒数も教室選びの一つの基準となるかもしれません。また、教室によっては歌舞伎の観劇やお花見などのイベントが行われることもあります。生徒同士の交流を楽しみたい人は、生徒数の多い教室を選ぶとよいでしょう。
 
・初心者が多い/少ない
初心者が多い教室では、他の生徒と比べられることが少なく、気楽に稽古に取り組める可能性が高いです。経験者が多い教室は、先生も高いレベルの指導を行うことが多く、相応の稽古の量を求められることもあります。自身がどの程度のレベルを目指すかによって、教室の選び方も変わってきますので、目的に合った環境を選びましょう。
 
・若者が多い/少ない
これは完全に好みの問題となりますが、一般的には同年代の生徒が多い環境の方が長続きしやすいでしょう。経験者が多い教室では若者が少ないこともありますが、高いレベルで稽古を積んでいきたい場合は、選択肢の一つとなるでしょう。
 
・女性が多い/男性が多い
日本舞踊はかつて婦女の習い事として定着していたことや、花柳界との結びつきが強いという事情もあり、ほとんどの教室では大半の生徒が女性です。この点は男性の方にとってはハードルが高いと感じるかもしれません。ただ、男性が家元を務める流派も多いですし、男性の生徒が多い教室もあります。また、男性を特に排除するような風潮もないため、女性の多い教室であっても安心して入門できるでしょう。
 

日本舞踊の教室を選ぶポイント5.見学や体験レッスンはあるか?

体験レッスンを通じて先生との相性や指導方針を確かめよう

体験レッスンを通じて先生との相性や指導方針を確かめよう

多くの教室では見学や体験レッスンを実施しています。見学は無料のことが多く、体験レッスンの費用は1時間3000~5000円程度のことが多いです。体験レッスンでは、5分以内の小曲に合わせて、初心者向けの振りの少ない踊りをマンツーマンで習うことが多いです。浴衣や白足袋の着用を求められることもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
 
見学や体験レッスンで特に確認しておきたいことは主に次の点です。
  • 先生との相性は良さそうか
  • 先生の指導は丁寧か
  • 教室はきれいに片付いているか
  • 着替える場所は確保されているか
  • 他の生徒の年齢や人柄(分かる場合)
 

日本舞踊の教室を選ぶポイント6.子供を通わせる場合はどうか?

バレエや水泳では子供向けの教室がたくさんありますが、日本舞踊ではこのような区別を特にしている教室はあまりありません。多くの教室ではマンツーマンで指導が行われるため、他の生徒が大人ばかりであっても、あまり影響はないでしょう。ただし、子供の生徒が多い方が子供同士で友達を作ることができますし、子供にとっても切磋琢磨しやすい環境と言えるでしょう。先生によっては子供の指導が不得意ということもあるため、子供でも入門OKか事前に確認するとよいでしょう。
 

日本舞踊教室の月謝など費用の相場

気になる日本舞踊の月謝の相場は?

気になる日本舞踊の月謝の相場は?

■月謝・入会金・その他の費用
日本舞踊を習うにはお金がかかるというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。結論から言えば、習い方や流派、教室によっては費用を抑えることもできます。以下で具体的な点について見ていきましょう。
 
・月謝:1万~5万円
家元や幹部クラスに師事する場合、月謝が高くなる傾向があります。名取クラスに師事する場合やカルチャースクールで習う場合、月謝は1~2万円前後が一般的です。稽古の回数は教室によりますが、月2~4回であることが多いでしょう。
 
・入会金:0~5万円
月謝と同様、師事する先生の格が高いほど入会金が高くなりやすいです。入会金が不要の教室も多いです。
 
・その他の費用
意外に思われるかもしれませんが、総費用を最も左右するのがその他の費用となります。以下にその内訳を記します。
 
▽発表会:1万~数百万円
先生によっては格式の高い大きな会場で発表会を開催することがあります。その場合、会場費だけで生徒1人につき数十万円がかかることがあります。市民ホールのような会場で開催する場合は1人数万円程度と格安です。発表会を開催しない、発表会はあるが参加しないといった場合は、費用はかかりません。また、かつらや小道具、衣装を借りるのに数十万円以上かかることもあります。簡易なお浚い会の場合は自前の衣装のみで済み、追加費用は発生しないことがほとんどです。
 
▽名取の取得にかかる費用:数十万~数百万円
名取(なとり)とは、踊りの技量があると認めた者に対して流派が与える称号で、「花柳〇〇」といったように流派の名前を名乗ることが許されます。名取を取るには費用がかかります。内訳は、名取試験の受験料が数万円程度、名取式の費用が数十万円、家元へのお礼が数十万円、師匠へのお礼が数十万円、お披露目会にかかる費用が数十万円、などとなります。規模の大きい流派ほど名取の取得にかかる費用は高くなる傾向があります。名取を取得するかどうかは基本的には任意ですが、教室によっては経験を積むと名取の取得を強く勧めてくるところもあります。
 

着物や道具にかかる費用

発表会では演目ごとに扇の種類を使い分けるのが一般的だ

発表会では演目ごとに扇の種類を使い分けるのが一般的だ

発表会などの費用と同様、着物や道具にかかる費用もある程度コントロールすることが可能です。以下が相場となります。
  • 着物(浴衣):数千~数十万円
  • 帯:数千~数十万円
  • 白足袋:数千円
  • 舞扇(まいおうぎ):数千~数万円
多くの教室では浴衣で指導を受けられるため、発表会がない限り費用を抑えることができます。着物が必要な場合でも、ネット通販で1万~3万円程度の手ごろなポリエステルの着物が購入できます。ただし、経験者の多い教室では高級な着物を着用する生徒も多く、安い着物では悪目立ちしてしまうかもしれません。教室によって着物にかかる費用は異なることを覚えておくとよいでしょう。

舞扇は練習に使うなら何でも構いませんが、発表会では演目によって扇を使い分けることが一般的です。例えば、お祝いの席で踊る祝儀舞では天地金(てんちきん)と呼ばれる扇を使うことが多いです。
 

まずは気軽に体験レッスンを受けてみよう

ここまで、日本舞踊の教室を選ぶ際の重要なポイントや月謝の相場について詳しく説明しました。先生や教室によっては、踊りの種類や指導方針、費用が大きく変わる場合があることがお分かりいただけたかと思います。もし選択に迷ったら、体験レッスンを受けることをお勧めします。この記事を参考にして、ぜひ日本舞踊の豊かな世界を体験してみてください。
 
【参考】
・『日本舞踊ハンドブック改訂版』 著:藤田洋 三省堂刊 2010年
・『おどりの美学』 著:郡司正勝 演劇出版社刊 1959年

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