今回All About編集部は日本コカ・コーラを取材。その内容をもとに、同商品に秘められたマーケティング的「戦略」について解説します。
※RTD:Ready To Drinkの略で、購入後そのまま飲める飲料を指す。そのまま飲めるワインや蒸留酒、ビールをベースにした低アルコール飲料、缶チューハイや缶カクテル、缶ハイボールなどが該当する。
苦労したのは「レモンサワーらしいおいしさの実現」
よわない檸檬堂
――――「よわない檸檬堂」を開発・販売しようと思った経緯を教えてください
ノンアルコール飲料市場は2017年から2021年にかけて約1.5倍に成長しています。背景には、「飲めなくなった」人だけではなく、自発的にお酒を飲むのをやめた人、減らした人が増加していると考えております。
ノンアルRTDを飲用している人々は、意図的にお酒を飲まない日にも、しっかりとしたお酒感を楽しめる、ポジティブな選択肢としてのノンアルRTDを求めていると考えました。
こうした方々に対して、「よわない檸檬堂」は、お酒を飲まない、飲めない日でも本格的なお酒の味わいや楽しみ方を提供します。翌日の予定、体調などを考慮してお酒が飲めない日だけではなく、日中の家事や仕事の合間、昼間の食事中や食後、酔いたくないけれどご褒美が欲しい一日の終わりに楽しんでいただけます。
――――本商品の開発時に苦労した・工夫した点があれば、可能な範囲で教えてください
もっとも苦労したのは、レモンサワーらしいおいしさの実現です。レモンのジューシーさとお酒らしい味わいを成立させるのが大変でした。これまで清涼飲料水作りの中で果汁を取り扱ってきた経験と、檸檬堂やノメルズ ハードレモネードなどで得た、お酒としてのおいしさについての学びによって実現できたと考えています。
――――ターゲットを30~40代に設定した理由を教えてください
本製品は、レモンサワー好きの方がお酒を飲まない日にも楽しんでいただけるよう開発しました。つまり、日常的にレモンサワーを楽しんでいるが、仕事や家事や健康面などの理由から、あえてお酒を飲まない選択をされているような方向けとなります。
そして、そういった方々が増えているのではと考えています。そういった方々は30~40代の方に多いと考えており、このようにターゲットを設定するに至りました。
翌日を考慮してお酒を飲まない日の夕食や、まだ家事や仕事をしたいけどちょっとリラックスしたりご褒美が欲しい時などに飲んでいただきたいと思っています。
よわない檸檬堂のパッケージ
―――― これから手に取る消費者に対して、メッセージがあれば教えて下さい
満を持して、本製品を発売することができました。これまでノンアルコールを飲んできた方も、これから飲み始める方も、楽しんでいただける味わいに仕上がっていると思います。是非、あなたらしいノンアルコールの楽しみ方を見つけてください!
マーケティング視点でみる日本コカ・コーラの「戦略」
日本コカ・コーラは2018年5月、同社初となるアルコール飲料『檸檬堂』を九州限定で先行発売しました。成長を続けるRTD市場では、キリンの『氷結』やアサヒの『贅沢搾り』、サントリーの『-196℃』、宝酒造の『タカラcanチューハイ』など黎明期から市場をけん引してきた強力なブランドが居並ぶ中、『檸檬堂』は居酒屋で味わうような本格的な味が支持され、爆発的なヒットを記録。その九州での販売実績を引っさげて、2019年10月には満を持して全国展開を図ると、2020年1月には売れ過ぎて販売停止に追い込まれるほど人気に拍車がかかります。結果、『定番レモン』がレモンサワー部門の金額シェア1位にいきなり躍り出るなど、奇跡とも呼べる快進撃を続けてきたのです。
その日本コカ・コーラが次に目を付けたのがノンアルコールの市場。最近では健康志向の高まりなどから、ノンアルRTD市場が急速に成長してきています。
ただ、このノンアルRTD市場はまだまだ黎明期にあたり、RTDやノンアルコールビールなど成長期に達して数多くのブランドが乱立する市場に比べれば主要プレーヤーの展開するブランドもまだ少なく、日本コカ・コーラにとってはライバル企業と共に市場を切り開き、マーケットで存在感を示すチャレンジといえるでしょう。
そして、新製品のネーミングを『よわない檸檬堂』とし、すでにRTD市場で強いブランドを確立した『檸檬堂』のブランドネームを活用しています。ノンアルという新たな市場においても、他社のノンアル製品と比較してブランド認知を獲得しやすい商品をリリースできていることは言うまでもないでしょう。
『檸檬堂』では、専門店のレモンサワーを研究し尽くし、「前割りレモン」という人気の居酒屋が取り入れる独自の製法で味の差別化に成功した日本コカ・コーラですが、同じくノンアルRTD市場でも独自の製法で顧客の支持を得て爆発的なヒットを記録することができるのか?注目が集まります。