その謎を探るべく、All About編集部はミツカンを取材。その内容をもとに、マーケティングガイドの筆者がパッケージに秘められた「戦略」について解説します。
店頭から食卓まで、様々な場面で楽しんでほしい
—なぜこんなにいろいろなパッケージが存在するのですか?商品企画担当者:「とろっ豆」をお召し上がり頂いている皆様に、店頭で選ぶ時、ご自宅の冷蔵庫を開けた時、食卓で食べる時など、様々な場面で楽しんでほしいからです。
2021年10月に実施した「遊びたいパッケージを選ぼう」企画時のデザインは、企画内容に合致する「遊び」をテーマにしたものやご時世を反映したものを採用しました。
多様なデザインにより、納豆売場が華やかになり、その中からお好みのデザインを選ぶ楽しみができているというお声も頂戴しております。
—現在は何種類流通していますか?
商品企画担当者:通常は全12種類を展開しておりますが、特にキャンペーン時は期間も数量も限定となるため比較的レアなデザインもあるかと思います。
ご当地パッケージ5種
—これまでに反響の大きかったデザインは?
LOVEとろっ豆・ハートの大群
2位「ハロウィンっ豆・魔女」3位「LOVEとろっ豆・チョコもぐ」
—デザインにルールはありますか?
商品企画担当者:厳格なルールはないものの、いつもお買い上げ頂いているお客様が店頭ですぐに見つけられるよう、「いつものオレンジ色」は守りたいと思っています。
マーケティングガイドが解説「多様なパッケージ展開」はレアケース?
パッケージは商品の“顔”にあたるため、パッケージの変更は何かしら商品に大きな変更があった際に行うのが通常です。その点、「とろっ豆」のように頻繁にデザインを変更し、かつ同時期に多様なパッケージを展開しているのは非常にレアなケースといっても決して過言ではないでしょう。また、割と固めなデザインのパッケージが主流の納豆売り場で、柔らかいデザインとオレンジの温かみのある色彩で「とろっ豆」は注目を浴びることに成功しています。メインターゲットは子どもから子育て世代の若い層だと思われますが、店頭でのユニークなデザインが目を引き、思わずショッピングカートに入れてしまったという買い物客も少なからずいることでしょう。
そして、手を汚さずに食べられる「パキッ!とたれ」という便利な食べ方や、これまでとは一線を画すふわっふわな新食感の納豆を食べて「とろっ豆」のファンになるなど、確実にリピーターを増やしており、ターゲット顧客へのアプローチからリピーター作りまでのマーケティングがうまく機能しています。
加えて、限定パッケージでファン客の購買意欲を刺激する仕掛けやパッケージの人気投票でファン客を巻き込み、一緒に楽しみながらブランドへの結びつきを強める仕掛けなどによって多くのファン客を増やし続けた結果、「とろっ豆」が発売10周年で18億食を超えるというロングセラーになったのもうなずけます。