今回All About編集部はメーカーの江崎グリコを取材。その内容をもとに、マーケティングガイドの筆者がポッキーのパッケージに秘められた「戦略」について解説します。
ハート型に込められた「やさしさ」
ポッキーの「ハート型」の切れ込み
広報担当者:かなり前から導入されているため、「いつ・どのような経緯で」は正確なことは分かりませんでしたが、消費者の食の安全への意識が高まる中で導入されたようです。
理由はいたずらでパッケージを開けた時に、ハートの部分が取れて、開けたことがわかるようにするためです。
なお、なぜハート型であるかという部分については、創業者の江崎利一が「栄養菓子グリコ」を作った際、子供向けに舌触りを良くするため丸みをおびたハート型にこだわっていたため、その思いもあってハート型になったという説があります。
当時のキャラメルは四角い形が一般的でしたが、「グリコ」は当時も今も丸みをおびたハート型です。
――他の商品にも切れ込みはあるんでしょうか
広報担当者:ハートの開封防止は、弊社の箱製品にはほぼほぼ存在します。例えば「かるじゃが」「ビスコ」なども同様についています。
新入社員の斬新なアイデアを採用!
――他にもパッケージトリビアを教えてください広報担当者:ポッキーは「みんなでシェアしやすいように」、プリッツは「より『ながら食べ』がしやすいように」、とそれぞれ異なる思いが乗せられていますが、ポッキーとプリッツの中袋はどちらも開けやすいように真ん中に切り込みが入っています。
プリッツのらく食べポケット
その他にも「ポッキーの箱を二つ並べるとハートに見える!」というお客様の声を具現化し、色々なハートの作り方を情報発信しています。
数年前からは期間限定パッケージとして主にバレンタインシーズンにはよりハートがかわいくできる特別デザインの商品を販売したりもしています。
ガイドが解説「ターゲット顧客の心にグサリと刺さるデザイン」
お菓子に限らず、パッケージはターゲット顧客を定め、そのターゲット顧客の心にグサリと刺さるデザインにすると爆発的なヒットにつながります。たかが見た目、商品がよければ問題ないとパッケージを軽視する企業もあるかもしれませんが、『人は見た目が9割』という本がベストセラーになったように、パッケージは売上の“入り口”であり、売上を大きく左右するものといえます。
たとえば、流行りのアニメとコラボし、子供の目を引きつけ売上アップを図るケースなどは企業がよく採るパッケージ戦略といえるでしょう。
食の安心安全が消費者に選ばれる最重要要素のひとつといっても過言ではない昨今、多くの食品、飲料などで開封したことが一目でわかるパッケージが採用されています。
ただ、そのほとんどが機能面に終始する中、江崎グリコではハート型というエモーショナルな感性面をも重視しているところが独特であり、消費者を惹きつけるポイントにもなっています。
最後まで快適に「体験」できるパッケージ
江崎グリコのパッケージ戦略は売上をアップさせる目的だけではなく、購入者が最後まで快適に体験できるよう考え抜かれているところがすごいと思います。購入者の目線に立って、いかに安心安全な商品を見つけやすくするか、いかに食べやすくするか、そしていかにゴミを捨てやすくするか、という消費者の一連の購買体験、動線をしっかりと研究し、掘り下げて最適なパッケージに落とし込む……。
我々消費者は店頭で何気なくパッケージを手に取りますが、そこには江崎グリコの想いやアイデア、経験、技術、そして努力の結晶が詰まっていることを思い知らされました。