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なぜ「だるま」に願掛けするの?目入れの左右は?達磨の由来と飾り方・処分方法

縁起物の「だるま」に願掛けする方法をご紹介します。達磨の由来や歴史、目を描き入れるのは左右どっちか、だるまの色の意味、置き場所、処分方法など、だるまに関する疑問にお答えします。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

暮らしの歳時記ガイド

縁起物「だるま」の由来や目の入れ方、飾り方などを解説

だるまはどうして縁起物なの?だるまの由来や達磨大師、目の入れ方や色による意味の違い、飾り方、処分方法などの疑問にお答えします

だるまはどうして縁起物なの? だるまの由来や達磨大師、目の入れ方や色による意味の違い、飾り方、処分方法などの疑問にお答えします

縁起物としておなじみの達磨(だるま)の由来、だるまの目の入れ方や飾り方、処分方法、だるま市についてなど、豆知識を紹介します。
<目次>

だるまの由来・歴史は?

「起き上がり小法師」が「起き上がり達磨」に変化しました

「起き上がり小法師」が「起き上がり達磨」に変化しました

だるまのルーツは中国の玩具です。唐の時代に、お酒をすすめる「酒胡子(しゅこし)」という玩具がありました。「酒胡子」とは尻の尖った木製のコマのようなもので、これを回して倒れた方向に座っている人が盃を受けるという酒席の遊びとして使われていました。
 
明の時代になると、「酒胡子」に代わって「不倒翁(ふとうおう)」という張り子の玩具が登場しました。「不倒翁」とは、その名の通り転がしても倒れない翁の人形で、老いてますます元気な姿を象徴し、酒席の客の健康を祝福する意味がありました。
 
この「不倒翁」が室町時代に日本に伝えられると、「起き上がり小法師(こぼし)」に変化しました。老いても倒れない翁が、転んでも起き上がる元気な子どもの姿に変わり、酒席ではなく子どもの玩具となって、「起き上がり小法師」という名前になりました。この場合の小法師は、子どもという意味です。
 
やがて江戸時代になると、「起き上がり達磨(だるま)」が誕生しました。達磨とは、禅宗の始祖と伝えられる達磨大師のことで、南インドの第三王子として生まれ、中国に渡って中国禅宗を開きました。達磨大師は中国の嵩山(すうざん)少林寺に入り、9年間壁に面して座禅(坐禅)を続けて奥義を悟りましたが、両手足が腐ってしまったという伝説があります。その教えは平安時代に日本に伝わりましたが、難解なため、赤い衣(「被」と呼ばれる寒さよけの掛け布団)をかぶって座禅をする達磨大師の絵や話とともに民衆に伝わっていきました。似たものに「見立てる」ことが流行していた江戸時代、達磨大師は「起き上がり小法師」に見立てられ、「起き上がり達磨」が誕生したといわれています。
 
大きな張り子のだるまは、天明3年(1783年)の浅間山の大噴火や大飢饉の惨状を見かねた少林山達磨寺(群馬県高崎市)の住職が、達磨大師の姿をもとに木型を作り、養蚕(ようさん)農家の冬の内職として張子のだるまを作らせたのが始まりだとされています。このだるまは正月の七草大祭で販売され、商売繁盛、家内安全のご利益がある縁起物として評判になって、農家の救済に役立ちました。こうして「高崎だるま」が人気を得ると、各地でその地ならではのだるまも生まれ、親しまれるようになりました。 
 

なぜだるまは縁起物なの?

だるまは、達磨が偉いお坊さんであったこと、めったに倒れず倒れてもすぐに起き上がることから、倒産せず商売繁盛、「七転び八起」(何度失敗してもくじけず、立ち上がって努力すること)で縁起が良いとされ、大願成就、病除け、五穀豊穣などの願いが託されるようになりました。
 
【大願成就、商売繁盛、開運招福、出世、再起】
人生はずっと調子が良いわけではなく、失敗や不運・不幸が訪れて、苦境に陥り挫折を味わうこともあります。そこで、たとえ倒れても必ず起き上がるだるまは「七転び八起」につながると尊ばれました。

関東大震災(1923年)の際には、だるまが復興のシンボルに。東日本大震災(2011年)でも震災から立ち上がる人々の願いをだるまに託す例がみられます。
 
【病除け】
江戸時代は子どもが疱瘡(ほうそう)を患うことが多かったので、疱瘡除けのまじないとしても歓迎されました。疱瘡は赤を嫌うといわれ、張り子のだるまは軽いので病気が軽くすみ、寝てもすぐに起き上がるので病気がすぐに治るとされたからです。
 
【五穀豊穣】
養蚕農家では、蚕が脱皮する様子を「起きる」ということ、繭をつくらせる場所に蚕を入れることを「上蔟(じょうそく)」ということから、起き上がるだるまを歓迎し、豊穣につながるとされました。
 

なぜ願い事をしてだるまに目を入れるの? いつ、左右どっち?

だるまに願い事をして眼を入れるのは、達磨大師のようにいかなる困難も克服して願い事が成就するよう願掛けをするためで、江戸時代に養蚕農家で始まりました。瞳を描き入れることを表すことばに「点睛(てんせい)」があり、欠くことのできない重要な点を最後に加えて物事を完成させるという意味をもっています。だるまの目入れには、心の目の開眼や入魂という意味があると考えられています。
 
一般的には、だるまの左目(向かって右)に黒目を描き入れて祈願し、一年間無事に過ごせたとき、あるいは願い事が叶ったときに、感謝を込めて右目(向かって左)にも黒目を入れます
 
また、白目のまま祀っておき、良いことがあったら目を一つ描き入れ、さらに良いことがあるともう一つの目を描き込むという方法もあります。養蚕農家では、春の蚕が良いと片目を入れ、秋の蚕も良いともう一方の目を入れていたそうです。
 
健康祈願や家内安全の場合には、最初から両目を入れることも多いです。
 

だるま市とは? 日本三大だるま市って?

だるま市には、大小さまざまなだるまが並びます

だるま市には、大小さまざまなだるまが並びます

だるまを販売する市を「だるま市」と呼びます。だるまは1年を通して販売されていますが、毎年特定の期間にだるま市が開催されるので、その時に前年のだるまを納め、新たに新年の願いを託すだるまを買い求める習わしがあります。主に東日本、特に関東では年末年始にだるま市が立つところが多いようです。
 
<日本三大だるま市>
  • 少林山七草大祭だるま市:少林山達磨寺(群馬県高崎市)で毎年1月6日~7日に開催
  • 厄除元三大師大祭だるま市:深大寺(東京都調布市)で毎年3月3日~4日に開催
  • 毘沙門天大祭だるま市:今井山妙法寺(静岡県富士市)で旧正月の7日~9日に開催
※新型コロナウィルス感染防止対策のため、中止や内容変更になる場合があります。
 

だるまの色の意味は?

最近は赤や白だけではなく、黄、緑、青、紫、ピンク、黒などさまざまな色のだるまがあり、ご利益も違います

最近は赤や白だけではなく、黄、緑、青、紫、ピンク、黒などさまざまな色のだるまがあり、ご利益も違います

一般的にだるまが赤いのは、古来、赤い色には魔除けの効果があるとされてきたこと、達磨大師は赤い衣をかぶって描かれていることなどが理由です。だるまが縁起物として広がると、紅白になるよう白いだるまも作られるようになりました。現在は、黄、緑、ピンク、黒、金など色々なだるまが登場し、それぞれの色に縁起物としての意味が持たされています。

一般的なだるまの色の意味を紹介します。
【赤】魔除け、家内安全、開運招福
【橙】子宝に恵まれる、災難除け
【黄】豊穣、金運上昇
【緑】健康・安全祈願
【青】学業向上・仕事運上昇
【紫】健康長寿
【ピンク】愛情運上層、恋愛成就
【金】金運上昇、満願成就
【銀】安産祈願、自己実現
【白】合格祈願、目標達成、開運招福
【黒】商売繁盛、出世
 

だるまの置き場所は?

だるまの置き場所に特に決まりはありません。昔は、神棚に安置していましたが、神棚のない家庭が増えた現在は、床の間、家具の上などに。合格祈願のだるまなら、勉強部屋の机や本棚などに置くと良いでしょう。向きを気にする方は、南から東の方角にだるまの顔が向くように置くと良いといわれています。

いずれにしても、ホコリをかぶったりしないよう、掃除をしてください。
 

だるまの処分方法は?

だるまはどんど焼きや寺社で焼いてもらいます

だるまはどんど焼きや寺社で焼いてもらいます

だるまが願いを叶えてくれるのは、1年間とされています。
 
<願いが叶った場合>
  • どんど焼き、だるま市、寺社に持っていくなどして供養してから、新しいだるまを入手する
  • 願いが叶った縁起物としてとっておき、新しいだるまを入手する
<願いが叶わなかった場合>
  • 目を入れてから、どんど焼き、だるま市、寺社に持っていくなどして供養してから、新しいだるまに改めて願掛けをする
供養して焼いてもらうのが難しい場合には、自治体のルールに従いゴミとして処分してください。
 
※参考「達磨からだるま ものしり大辞典」(中村浩訳)/「志太の伝統産業~伝統工芸」(志太広域事務組合志太ふるさと文庫出版委員会)
 
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