出勤しているのに体調不良……生産性を低下させるプレゼンティーズムとは
「プレゼンティーズム」とは、会社に出勤しているものの体調不良で生産性低下が起こっている状態を指します。2014年の経済産業省の報告によると、企業の健康関連コストの割合は、医療費が15.7%、病欠・病気休業を指す「アブセンティーズム」によるコストは4.4%であるのに対し、「プレゼンティーズム」によるコストは77.9%を占めていました。この数字からは、出勤していても体調不良で仕事のパフォーマンスが低下している社員が増えることで、組織にとっての大きな損失につながることが分かります。
こうした背景の下、経済産業省が推進しているのが近年よく言われている「健康経営」です。
社員の健康を保って業績向上を図る「健康経営」とは
健康経営とは、企業が社員の健康づくりに投資をすることによって、社員が健康を増進させて仕事に十分なパフォーマンスを発揮できるようになり、その結果、業績向上や企業価値向上が得られるように戦略的に経営を行うことです。健康経営は、企業が健康経営を行う目的を明確にした上で、PDCAサイクルを回して成果をできる限り数値化し、計画を調整していながら、長期的に継続していく必要があります。生産性向上だけでなく、社員の満足感や人生の充実の向上等も目的として、大手企業を中心に積極的に取り組みを始める企業が増えています。
ちなみに、経済産業省は健康経営を推進するために、各業種ごとに「健康経営銘柄」の企業を選定し公表しています。2018年には26社が選ばれており、選定を開始した2015年より4年連続で銘柄企業に選ばれている企業は、花王(株)、テルモ(株)、TOTO(株)、(株)大和証券グループ本社、東京急行電鉄(株)、SCSK(株)の6社です。
3つのプレゼンティーズム予防策……スタッフ間でも今日からできる防止策
このように、健康経営は会社側が戦略的に行う取り組みですが、職場のスタッフ間でお互いに「出勤しているものの、生産性があがらない……」というプレゼンティーズムを防ぐために、できることがあります。スタッフ間で今日からすぐに始められることとして、以下の3つが挙げられます。
1. お互いの得意を活かしあい、苦手をサポートしあう
個々人が自分の成果だけにこだわっていると助け合いの意識が薄れ、目先の競争意識が強くなります。すると、職場が緊張感に満ちて人間関係がギスギスしたものになり、プレゼンティーズムが生じやすくなってしまいます。
したがって、職場では個人の生産性向上にこだわるより、互いの良いところを活かしあい、苦手なことをサポートしあうことによって、チーム全体の生産性を高めるように意識を変えていくことが大切です。こうした雰囲気をつくるには、職場の「心理的安全性」が確保されていることが大切です。「心理的安全性」は「仲間を蹴落とすと会社の生産性は下がる!心理的安全性とは」の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
2. ハラスメントをなくす
ハラスメントが発生している職場では働きがいが失われ、プレゼンティーズムを増やしてしまいます。ハラスメントは悪気なく、冗談や景気づけのつもりでうっかり行ってしまうことがあります。スタッフの性別、年齢、出身国等の多様性が拡がっている今、職場ではどのような言動がハラスメントと受け止められるのか、まず正しいハラスメント予防知識を持つことが大切です。
また、ハラスメントに近い行為だと感じた時には指摘しあい、互いが協力して互いの抑止力になっていくことが大切です。職場で生じやすい各種ハラスメントは、以下の記事でも詳しく解説しています。
・パワハラの定義とは?チェックすべき6つの行為類型
・セクハラは人権侵害!加害者にならないための基礎知識
・マタハラ・ケアハラの事例…職場で注意すべきこと
3. 日頃のやりとりからお互いの健康状態を確認する
以前に比べて明らかに元気がない、顔色が悪い、ミスが増えているなど、仲間のメンタル不調を感じたら、お互いに声を掛け合い、その人の仕事を手伝ってあげたり、休養をとって早めに回復できるようにフォローをしあっていくことです。
(1)で解説したような「心理的安全性」の高い職場になっていれば、仲間の元気がない様子に気づいた時にすぐに声をかけやすくなりますし、自分自身も調子が悪い時には、遠慮せずに仲間に相談しやすくなります。また、お互いのメンタル不調に気づくポイントは3つあり、そのポイントは「「身体・心理・行動」に表れる簡単ストレスチェック」でも詳しく解説しています。
以上のように、プレゼンティーズムを減らすためには、会社側が健康経営に取り組むことも大切ですが、職場のスタッフ間で声を掛け合い、サポートしあっていくこと、ハラスメントに気をつけ、チームワークをよくしていくことも大切です。ぜひ、できることから始めてみてください。