もともと確定申告が必要な人は特例制度が使えない
「ふるさと納税」は、納税と名前がついていますが、基本的には寄附。ユニセフや日本赤十字社をはじめ、認定NPO法人など特定の団体へ寄附をすると、確定申告の際に寄附金控除が適用され、所得税と住民税が軽減されます。大震災など被災地支援で寄附をしたことのある人には、なじみのある制度かもしれません。
「ふるさと納税」も、この寄附金控除の仕組みと同じで、都道府県、市区町村へ寄附した額から、自己負担額の2000円を除いた額が寄附金控除の対象となります。
「ふるさと納税」の制度ができてからも、税制上のメリットがあるにも関わらず、なかなか認知が広がりませんでした。ブレークしたのは、やはり地域の特産品を謝礼として贈る自治体が増えたことによります。最近は、返戻品競争の様相を呈しており、さながらネットショッピングのように、返礼品によって寄附をする自治体を選ぶという状況にまでなっています。とはいえ、その自治体を応援したい、支援したいという気持ちがあり、寄附金控除も受けられるのですから、しっかり制度を理解して、活用したいものです。
毎年、ふるさと納税を活用している人は、今年は注意が必要です。全額控除されるふるさと納税額(年間上限)は年収によって異なりますが、新型コロナウイルスの影響で年収が減少する可能性がある人は、あらためて上限額を確認しておくようにしましょう。
例えば、シングルで年収400万円の場合、上限額の目安は4万2000円ですが、年収375万円に下がったとすると、上限額の目安は3万8000円になります。
総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」で確認したり、控除額のシミュレーションサイトを利用して、上限を超えないように注意しましょう。
ふるさと納税の認知が広がり、利用者が急増したことによって、本来、確定申告をしなくてもいい会社員などが、確定申告をするようになり、省力化を目的に、2015年4月に「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設されました。寄附をした自治体が5カ所までなら確定申告は不要で、税の優遇が受けられるようになりました。
しかし、すべての人が確定申告不要になったわけではありません。確定申告が必要になるのは、どんなケースなのでしょうか。
ワンストップ特例制度が使えるのは、基本的には会社員のみです。ただし、年収2000万円以下の会社員で、給与は1カ所からしかもらっていない会社員に限られます。もともと、年収2000万円超の会社員や、2カ所以上から(額は関係ない)給与をもらっている会社員は、確定申告をしなければならないからです。
また、当たり前のことですが、自営業者や個人事業主、フリーランスは、確定申告をしなければなりませんから、ワンストップ特例制度は利用できない、ということになります。
自治体に申請書を送付しなければならない
ワンストップ特例制度を使える人は確定申告が不要とはいえ、何も手続きがいらないわけではありません。ワンストップ特例制度を使うには、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を自治体に送付しなければなりません。万が一、忘れた、認識していなかった、という場合は、自治体側で税の調整ができないため、自分自身で確定申告をする必要があります。また、規定の自治体数を超えた場合、例えば6カ所にふるさと納税した、というケースでは、超過した分だけではなく、すべてまとめて確定申告することになります。申請書は、各自治体のサイトからダウンロードして郵送するか、自治体に郵送してもらい返送します。
医療費控除、住宅ローン控除の申告がある人は一緒に申告を
普段、確定申告をしない会社員でも、申告が必要なケースがあります。一番多いのが、住宅ローン控除と医療費控除ではないでしょうか。住宅ローン控除は初回のみ自分で確定申告すれば、翌年からは会社の年末調整ですませられますが、初回は自身で確定申告を行います。医療費控除は勤務先の年末調整で対応できないため、必要に応じて自身で確定申告しなければなりません。世帯全員が支払った医療費の合計が年間10万円を超えた場合、超えた分について、一定の控除が受けられます。
実は、これらの控除を確定申告する場合も、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用することができません。ほかの控除を申告する際に、一緒に申告することになります。
このほか勤務先の年末調整に間に合わなかった、漏れていた、ということがあれば確定申告が必要になりますので、やはり特例制度を利用できません。
つまり、ふるさと納税以外、申告することがない、という会社員のみが特例制度を利用できる、ということになります。
今年も年内に「ふるさと納税」をすれば、税の優遇が受けられるので、検討している人は、申し込みをしましょう。
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