大人リーナのみなさんも一度は聞いた事があるのではないでしょうか?  「お尻を締めてターンアウトして!」 という教師の指導を。お尻を締めるとターンアウトできるという意味ですが、果たしてこれは合っているでしょうか?

ターンアウトでお尻は締めるの?

ターンアウトでお尻は締めるの?

ターンアウトさせる筋肉

お尻には、確かにターンアウトさせる筋肉があります。深部外旋六筋と言われる筋肉郡です。梨状筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋の六つ。

なんだか専門的すぎますね。

この六つの筋肉が股関節の中で、脚を外に開かせてくれる筋肉です。膝が前を向いている状態から、これら六つの筋肉を縮めれば脚はターンアウト側に回旋します。

ターンインさせる筋肉

上記の深部外旋六筋の外側についている筋肉の、小臀筋・中臀筋・大臀筋は、筋肉線維がいろいろな方向を向いていて、その中には股関節を外旋させるものがあったり、内旋させるものがあったりします。

これらの筋肉で注意しなければならないのは、上記の「外旋六筋と一緒になってどこまでも股関節を外旋させてくれるわけではない」ということです。

バレエでは、理想的には膝が真横を向くほど股関節をターンアウトさせたいのですが、これら臀筋群は、バレエの理想に対してブレーキに働きます。

たとえば、重量挙げの選手のように重たいものを持ち上げるとき、あなたなら膝をどっちの方向に向けたいですか? 前でしょうか? バレエのように真横でしょうか? あるいは、ジャンプ力を測る高跳びをしようと、膝を曲げてぐっと踏ん張るとき、膝はどの方向に向けたいですか? 前でしょうか? バレエのように真横でしょうか?

おそらく、前ではないでしょうか?

つまり、人の体は重力に逆らって地面や床を強く踏み込むとき、膝を前に向けたがるのです。その方が強い力を楽に発揮できるからですね。この重力に逆らってぐっと力を入れるのが、先ほど出てきた臀筋です。

バレエの理想は、膝を真横に向けるようなターンアウトです。それに対して、臀筋は膝を前に戻そうとするブレーキです。言い換えると、臀筋はターンインさせる筋肉になります。そして、深部ではなく、表層に近い筋肉なので、力を入れやすい筋肉と言えます。

さて、冒頭の教師の指示通り、お尻を締めようとすると、ほとんどの場合このターンインさせる筋肉にも力が入ってしまいます。ターンアウトさせようと思って力を入れたのに、結果は逆と言うことになります。

自在に縮める?

では、ターンアウトさせる筋肉とターンインさせる筋肉、どちらかを選んで縮める事が可能でしょうか?

人によっては可能なようですが、かなり難しいですし、関節の動かし方として不自然です。筋肉を個別に自在に収縮させられる能力がないと無理だと思います。

踊りでは、時時刻刻、手足が動いているわけですが、この状況の中で、これらの筋肉を自在に操るなんて、少なくとも大人からバレエを始めた方には手も足も出なくておかしくないですね。

では、ターンアウトを最大限開いて踊るには、どうすればよいのでしょうか?

カリキュラムでは?

バレエのテクニックは、すべて教授法に則って習得できるようになっています。世界にはいくつかの代表的なメソッドがあり、それぞれが独自のカリキュラムを持っています。その中で、特に日本との関係が深いメソッドの一つがワガノワ・メソッドです。

以前、この点に興味があったので、ワガノワ・バレエ・アカデミーに通う生徒さんに質問してみたことがあります。返ってきた答えは、「ターンアウトでお尻を締めるようにとは指導していない」だそうです。

お尻を縮めようとしない

ターンアウトさせる筋肉を上手に使うために一番大事なことは、骨盤の位置です。ここで言う位置とは、次のようなものです。

1.骨盤を水平に保つ、前傾も後傾もせずに。
2.お尻の下の太ももを前に押し出すようにターンアウトさせる。


上記の二つを行えば、深部外旋六筋が縮みます。縮ませようとしなくても勝手に縮むのです。

結果的に縮むなんておかしいと思われるかもしれませんが、コツ(骨)をつかむとは、そういうことです。解剖学的な筋肉の知識がなくても問題なくできることです。

ぜひ、お尻を締めようとせずに、お尻が締まるように仕向けてみてください。


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