グレンフィディックと同じ敷地内にあるバルヴェニー
バルヴェニー蒸溜所は、前回記事で紹介したグレンフィディック蒸溜所と同じ敷地内にある。グレンフィディック創業から5年後の1892年に建設された。ウィリアム・グラントが姉妹ディスティラリーとして、新たな香味の実現のために誕生させた蒸溜所である。©Satos
バルヴェニー蒸溜所
また大きな規模を誇るグレンフィディック蒸溜所と隣接しているために規模が小さく感じられるようだが、しかしながらスコットランドのモルト蒸溜所の中でも年間生産量において高いランクに位置しつづけてもいる。
バルヴェニーの大麦畑
グレンフィディック蒸溜所に関しては、前回記事『グレンフィディック蒸溜所とグラント家の先駆』を参照いただきたいのだが、この記事では、“春のグレンフィディック、秋のバルヴェニー”とたとえられる香味の違いを生む、バルヴェニーの製法に関してご紹介する。実はわたしはシングルモルト「バルヴェニー12年ダブルウッド」が好きで、よく飲んでいる。滑らかで、はちみつのような甘美さがある。
自家栽培の大麦にフロアモルティング
フロアモルティング
また自家栽培した大麦を一部使用(全大麦使用量の15%)。バルヴェニー城奥に位置する農地で大麦を栽培している。フロアモルティングをおこない、自前で麦芽製造もする。2日間ほどかけて麦芽を乾燥させ、そのうちの最初の12時間はピートを焚き、その後は無煙炭を焚いて乾燥させるので、ピートの燻香はほのかに香るといった程度のライトピーテッドである。
糖化・濾過によって清澄麦汁を得、ダグラスファー(米松)材の発酵槽に移して発酵させる。発酵時間は長い。およそ72時間。酵母の増殖、死滅、そして熟成期間である乳酸発酵という一連の活動を熟練の職人が管理する。これによりフルーティーでクリーンな酒質を生む。
次ページでは蒸溜、貯蔵熟成、そして職人について紹介する。(次ページへつづく)