『瓶 お~いお茶 玉露』のマーケティングを考えてみよう
アンケート結果からあまりヒットするとは思えないが・・・(アンケートにはQuestantを利用しました。)
普通に売っても、爆発的なヒットを記録することが難しければ、売り方を考える必要があります。
それでは、『瓶 お~いお茶 玉露』には、どのようなマーケティングが考えられるでしょうか?
まずはターゲットを考えていきましょう。やはり1本1000円と高額な『瓶 お~いお茶 玉露』を頻繁に購入する顧客層は、品質さえ良ければ価格にこだわらない富裕層がメインといえるでしょう。ただ、このような富裕層でも、ペットボトルのお茶に1000円を出すくらいなら、高級な茶葉を購入して自宅でお茶を入れて飲むという選択の方が自然であり、簡単に売上に結び付けることはできないと思われます。
続いて、顧客の利用シーンを考えていくと、やはり真っ先にイメージできるのはギフト需要です。さすがに1本140円のペットボトルをギフトとして贈る人はそう多くないでしょうが、1本1000円のお茶であれば非常に珍しく十分にギフトとして喜ばれるはずです。
伊藤園でも『原料と製法にこだわった緑茶飲料は、特別な日のおもてなしやギフトとしてもおすすめです』と、ギフト需要を想定していますので、“ハレ”の日や、お中元、お歳暮の際に購入される利用シーンは十分に想像でき、このようなターゲット顧客に対してのプロモーションが有効となる可能性は高いといえるでしょう。
伊藤園が『瓶 お~いお茶 玉露』を投入する真の狙いとは?
マーケティングを考えてもあまり大きなヒットを記録するイメージを描きにくい『瓶 お~いお茶 玉露』ですが、実のところ伊藤園は本気で爆発的なヒットを狙っていないこととも考えられます。マーケティングでは最初から売ることを目的としない製品戦略もあるのです。
それはこの商品が、“完全受注生産”で発売されるというビジネスモデルに表れています。
つまり、最初から大量生産して大々的にヒットさせようという意図はなく、本当に欲しい人だけに販売するという戦略なのです。
私自身、この戦略の背景には、ハイエンド商品である『瓶 お~いお茶 玉露』を投入することによって『お~いお茶』のブランド力の全般的な底上げを図る狙いが隠されていると推測します。
ただ、アンケートを取って明らかになったように、1000円のペットボトルのお茶を購入したいと思う消費者はそう多くないために、大量生産してしまうと、売れ残りが発生し、賞味期限が近付くとディスカウントショップなどでたたき売られる可能性も高くなってきます。そのような最悪のシナリオが現実のものとなるなら、ブランド力向上を狙って投入した新製品が、逆にブランドの足を引っ張るという状況になりかねません。
ですから、値崩れを防ぐ意味で完全受注生産というビジネスモデルを導入したのではないでしょうか。
『瓶 お~いお茶 玉露』は売ることを目的とするよりは、ブランドイメージを高めるために投入された戦略商品です。
商品自体は決して売れなくても、「伊藤園の製品のクオリティはこれほど高いんだ」ということを多くの消費者に示すことができれば、十分に狙いは成功したといえるでしょう。
『瓶 お~いお茶 玉露』は伊藤園の主力製品となるような大きなヒットはしないと予想しますが、ライバル企業が追随できないような品質の高さを消費者に印象付けるハイエンドの戦略商品として、重要な役割を果たすことになるのではないでしょうか。
安部徹也のヒット診断≪マーケティング・チェック!≫
『瓶 お~いお茶 玉露』は、もともと大ヒットを狙って投入する製品ではない。自社のブランド力の高さをより多くの消費者に知ってもらうための『ブランドイメージ向上大作戦』の重要な役割を担う戦略製品である。※安部徹也のヒット診断≪マーケティング・チェック!≫は、あくまでも個人の見解です。