タオルがないと寝れない……特定のタオルやぬいぐるみに執着する子の心理とは
幼い子どもたちが、お気に入りのタオルやぬいぐるみを肌身離さず、持ち歩く姿をよく見かけます。寝るときもいつも一緒で、見た目はボロボロ。新しい物を与えても見向きもせず、なくなると大騒ぎになるので、親はいつもヒヤヒヤ……。「どうしてここまで執着するのだろう」と、不思議に思う方は少なくないのではないでしょうか。幼い子どもが、こだわりを持つお気に入りの物を「移行対象」と呼びます。移行対象への執着は、子どもがお母さんとの「二人きりの世界」から、お母さんから離れた「外の世界」に適応していく過渡期に見られる現象です。
したがってその移行対象は、お母さんの安らぎや匂いが感じられる物が多く、毎日使っているタオルやぬいぐるみなどが選ばれやすいのです。
「ライナスの毛布」は典型的な移行対象
スヌーピーで知られる米国の人気漫画『ピーナッツ』の登場人物に、哲学的でクールな男の子、ライナスくんがいます。彼がいつも抱えている毛布が、まさにこの移行対象。「ライナスの毛布」は、「安心毛布」と呼ばれています。ライナスは、気難し屋の姉ルーシーに突つかれ、理屈屋のサリーから恋心を寄せられ、いつもクタクタです……。そんな「外の世界」での緊張を癒し、お母さんのような安らぎを与えてくれるのが、ライナスの毛布。タオルやぬいぐるみを肌身離さず持ち歩く子どもたちも、このライナスくんと同じ気持ちではないでしょうか。
移行対象の役割……「外の世界」に踏み出す子の緊張感を和らげる
子どもは「移行対象」を使って、お母さんとの「二人きりの世界」とお母さんから離れた「外の世界」との「中間地点」で遊びながら、徐々に外の世界に適応していきます。子どもがお母さんとの「二人きりの世界」で体験しているのは、お母さんに守られている安心・安全な世界です。しかし、成長と共に「外の世界」に足を踏み入れていくと、それまでの安心・安全を失うことへの不安も強くなります。そこで、母親に変わる安心の源として移行対象を心の拠り所にし、不安を癒そうとしているのです。
無理に卒業させなくて大丈夫! お母さんは「安全基地」になろう
では、こうした子どもたちに、どのようにかかわればいいのでしょう? 結論から言えば、子どものしたいようにさせておくのが、いちばんです。けっして、移行対象を取り上げてはいけません。外の世界とのかかわりが増えれば、移行対象へ執着は自然に薄れていきます。取り上げようとすると、逆に子どもはそれに執着し、手放せなくなってしまいます。繰り返しになりますが、幼い子どもは、お母さんとの「二人きりの世界」、移行対象と遊ぶ「中間の地点」を経て、「外の世界」に適応していきます。お母さんは、そんな子どもの成長を優しく見守り、子どもが不安を感じたらいつでも戻ってこられる場、つまり「安全基地」になってあげましょう。
そのためには、外の世界で不安を感じた子どもが「安全基地」に戻ってくるたびに、しっかり抱きしめて「大丈夫。怖くないよ」と囁いてあげるといいでしょう。すると、子どもは勇気を回復し、再び外の世界へと足を向けていけるようになります。ぜひ、移行対象と遊ぶ子どもを笑顔で見守り、外の世界で遊ぶ子どもの安全基地になってあげてくださいね。
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