大和言葉とはどんな言葉? どんな効果が?
手紙や改まった場面で用いられることの多い漢語表現も、ときには和語・大和言葉に言い換えることで、受ける印象も変わってきます
たとえば、「ご出席いただき恐縮です」という漢語表現を和語で表現しますと、「おいでいただき・お運びいただき、恐れ入ります」などのようになります。意味はまったく同じですが、受ける響きというのは違ってきますね。
この、「漢語」に対しての「和語」が別名「大和言葉(やまとことば)」と呼ばれるものです。「大和言葉」はこのように、意味がわかりやすく、響きがやわかい、やさしいなどの特徴があります。よく使う漢語の言葉を、ときには「大和言葉」に変換することで、より相手に伝わりやすい表現にすることができます。
では、実際に手紙の中でもよく使われる漢語調の表現を「大和言葉」で考えてみましょう。
手紙の中での漢語を大和言葉に
次の漢語を大和言葉にした場合、どのように言い換えることができるでしょうか。
1:「遺憾でございます」
2:「ご健勝のことと存じます」
3:「心より祈念いたします」
4:「ご交誼のほどお願い申し上げます」
5:「幸甚に存じます」
■言い換え例と解説
それぞれ次のような大和言葉に言い換えることができます。
1:「心残りでございます」
「遺憾」→「心残り」
「遺憾」とは、残念というような意味です。残念は心が残るわけですから、そのまま「心残り」という表現に換えることが可能です。
2:「お健やかにお過ごしのことと存じます」
「健勝」→「健やか」
「健勝」とは、健康で元気なことという意味。健康を言い換えると「健やか」となります。
3:「心よりお祈りいたします」
「祈念」→「祈り」
「祈念」は神仏に祈ることですから、こちらはそのまま「折り」を使うことができます。
4:「変わらぬお付き合いのほどお願い申し上げます」
「交誼(こうぎ)」→「付き合い」
「交誼」は、親しい付き合い、友人として親しむというような意味をもちます。ですから、「付き合い」の部分を用いて、「今後とも変わらぬお付き合いのほど……」と言い換えられます。
5:「この上ない幸せに存じます」
「幸甚」→「幸せ」
「幸甚」とは、幸せという意味ですが、単に幸せというよりは、もっと程度が大きい、非常に幸せという意味をもちます。ですから、この「非常に」の部分も言い換えて、「この上ない幸せ」などとなります。
いかがでしょうか。意味の違いはありませんが、見た感じ、耳で聞いた響きは
違ってくるのではないでしょうか。よく考えてみると、日ごろ何気なく使っている言葉もあるかと思います。また、ひとつ言い換えが浮かびますと、次々とほかの言い回しが出てくるものも多いものです。たとえば、5番目の「幸甚」は「幸甚」→「非常に幸せ」→「この上ない幸せ」と言い換えましたが、この「非常に・すごく」という言葉もほかには、「何より・いたく・ひとかたならぬ・はなはだ」などに換えることができます。
このように、よく使う言葉もときには言い換えることで、同じ表現ばかりが重なるのを避けることもできますし、言葉から受ける印象も変わってきます。
場面や内容に応じてうまく使い分けたいものですね。
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