手紙の書き方・文例

「年末」「年の瀬」いつからが正解?12月半ば・下旬・大晦日数日前

「年末」「年の瀬」という言葉、一体いつ頃からを言うのでしょうか。12月の半ばから? 下旬から? 大晦日の数日前? 普段当たり前のように使っている言葉の多くは、大抵理解していても、中にはあらためて考えると一体どうなのだろうというものが多いものです。

井上 明美

執筆者:井上 明美

手紙の書き方ガイド

「年末」「年の瀬」はいつからが正解?

「年末」「年の瀬」はいつからが正解?

「年末」「年の瀬」はいつからを指す?

12月になると、「年末」「年の瀬」という言葉を耳にするようになりますが、さて、正確には一体いつ頃からを指すのでしょうか。12月の半ばから?下旬から?大晦日の数日前? 年賀状や暦、手帳の販売コーナーや冬至にクリスマスなど、12月になると目にする光景とともに、私たちはいつの間にか「年末」「年の瀬」という言葉を使っています。

普段当たり前のように使っている言葉の多くは、大抵理解していても、中には改めて考えると一体どうなのだろうと迷うことがあります。

では、「年末」「年の瀬」の辞書の解説を見てみましょう。
 

「年末」とは
年の暮れ。歳末。歳暮。(『「デジタル大辞泉』小学館)

一年の終わり。また、その年の決算や片付けを済ませ、来るべき年の準備をする期間。普通は一二月二〇日以降をいうが、それ以前をさすこともある。年の暮れ。歳末。年終。年暮。年尾。(『精選版 日本国語大辞典』小学館)

「年の瀬」とは
年の暮れ。年末(『「デジタル大辞泉』小学館)

このように「年末」「年の瀬」は、いずれも1年のその年の終わりを言いますが、具体的にいつからを指すのかというのは断定しにくい部分もあるでしょう。辞書や歳時記によっては、12月になってからもいうもの、また12月も押しつまってからもいうもの、それ以前のお正月の準備を始めることが多いとされる、すす払いの日でもある13日ごろ……など様々なようです。また個々のケースによっても多少のとらえ方の違いもあるとも言えるでしょう。
 

「年末」「年の瀬」の自然な使い方…一年の終わりの忙しい時期として

さらに「年の瀬」に関する「(年の)瀬越」という言葉を詳しくみてみましょう。

「瀬越」せごしとは
〘名〙

  1. 川の早瀬を渡ること
  2. 重大な時期。困難な時期。危険な時期。
    また、それを乗り越えること。堪えきること。
  3. 「せごしぶね(瀬越舟)」の略。

〘他サ四〙 困難な目にあわせる。責める。いじめる。瀬越をかける。 (『 精選版 日本国語大辞典』小学館より 一部引用)
この2の例として、井原西鶴の浮世草子『日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら)』にある「借銭の淵をわたり付て、幾度びか年の瀬越(セゴシ)をしたる人のいへり」では、「瀬越(セゴシ)」について触れられています。

瀬越とは「重大な時期。困難な時期。危険な時期。また、それを乗り越えること。堪えきること」の意味をもちますが、そのような困難な危うい思いをして年の瀬、年末を乗り越えたことが述べられています。

江戸時代は何か物を売り買いするときに、多くは代金後払いの「掛け売り」であったとされています。この「掛け売り」の支払い時期は、盆や暮れにまとめて行うことが多かったと言われていますが、このようなことからも「年の瀬」とは、年の暮れ、年末のことを指していることがわかります。
ですから、「年の瀬」とは具体的にいつからとは言いにくいものですが、もうひとつ年末に使われる言葉の「年の瀬も押し詰まる/押し迫る」から見ても、やはり「年の瀬」は、時期としては12月でもどちらかと言えば終わりに近くに使うほうが自然で違和感がないのではという印象を受けます。

また瀬越には「川の早瀬を渡ること」」という意味もありましたね。ですから、川の流れの速さが時の流れの速さを思わせ、「瀬越」「年の瀬」は一年終わりの忙しい時期にも通じているようです。

「年末」についての『精選版 日本国語大辞典』小学館の解釈には、「年終」「年暮」「年尾」などの語もあります。「歳暮」もやはり年末の意ですが、現在では、多くは「お歳暮」の形で用いられ、世話になった人などに年末のご挨拶に贈り物をすることや、またその贈り物のことを指して使われていますね。
 

12月に関する時期を表す言葉・風物のいろいろ 

師走、冬至、クリスマスなど……12月を表す言葉や風物詩は色々ある

師走、冬至、クリスマスなど……12月を表す言葉や風物詩は色々ある

では最後に年の瀬や年末の他に12月の時期を表す言葉や風物をいくつかあげてみましょう。
  • 師走 …… 陰暦12月の異称。極月(ごくげつ)。臘月(ろうげつ)。太陽暦にもいう(『「デジタル大辞泉』小学館)/経あげるために師僧が東西を馳せ走る月であるところから、シハセ(師馳)の義。四季の果てる月であるところから、シハツ(四極)月の意……(『精選版 日本国語大辞典』小学館より一部引用)
  • 大雪 …… 二十四節気のひとつ。12月7日頃。雪が積もるころ。
  • すす払い …… 正月を迎える準備としてすすやほこりを払い清め大掃除をすること。近年は12月の末ごろが多いが、伝統的には12月13日に行ったとされる。
  • 冬至 …… 二十四節気のひとつ。12月22日頃。太陽の中心が冬至点を通過する。北半球では一年中で昼がいちばん短く、夜がいちばん長くなる日。冬至には、ゆず湯に入ったり、地方によってはカボチャを食べたりする風習がある。
  • クリスマス・イヴとクリスマス …… 12月24日・25日
その他の行事、動植物
冬将軍、大掃除・餅つき・しめ飾り・除夜の鐘、ポインセチア・ひいらぎ・シクラメン・葉牡丹・南天・千両万両……など。

このように、「年末」「年の瀬」を表す言葉にも様々あるものです。日ごろ何気なく使っている言葉ですが一年の締めくくりに同じく、その意味を振り返ってみると奥深いものですね。

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