メニューが多くなりすぎると店頭のオペレーションに混乱を来たす
マクドナルドはかつて『Enjoy!60秒サービス』で失敗した経験を活かせるか?
店頭でのオペレーションは、まずはレジで注文を受け付け、精算を済ませてから、調理に入ります。そして、出来上がった商品を顧客に渡すというプロセスになります。
ここで、まずレジで顧客の注文を受ける際にも1000通りの組み合わせがあれば間違える可能性も高くなります。また、たとえレジでの注文はクリアしたとしても、次に商品を準備する際に間違えてしまうことも十分に考えられるのです。
いったん注文を間違えてしまえば修正するのにも時間がかかり、特に昼食時や夕食時などの店内が混雑している時にミスが集中すれば待ち時間の長時間化につながり、顧客の満足度を下げかねません。
かつてマクドナルドはキャンペーンで『Enjoy!60秒サービス』を実施した際にも、不手際が続出し、顧客の信頼を損ねた過去がありますが、もし新メニューでミスが頻発し、提供時間が遅れるようなら本末転倒の結果に終わることも十分に考えられるのです。
本当の「お客様の要望」とは何か
カサノバ社長は新メニューの発表会の席上で「お客様に満足頂くため、必要なことを初心に返って見直す。マクドナルドは、お客様の要望に応じて変わり続けることを約束する」という決意を表明しましたが、今回の新メニューはどう考えても本社の会議室で考えられ、現場に押しつけたような印象が拭えません。店舗では『スマイル0円』の掲示を5月25日から久しぶりに復活し、店舗を笑顔で満たしてかつての活気を取り戻そうという取り組みが始まりますが、複雑なメニュー対応で逆に店舗から笑顔が消え失せる皮肉な状況も決してありえないことではないのです。
マクドナルドにとって、もはや本部からのトップダウンでは、やることなすことが裏目裏目に出る現状を考えれば、よりお客様に近い現場の声を取り入れて戦略を見直さなければ業績の回復は難しいところにきているのかもしれません。
ただ、問題はマクドナルドのような全国チェーンでは店舗ごとに顧客層が変わり、顧客の特徴や要望も変わってくるという点です。
この問題に対して一様な対応に終始してきたからこそ今のマクドナルドの不振につながってきたのです。
もし、カサノバ社長の「お客様の要望に応じて変わり続けることを約束する」という言葉が本心であるなら、今後は全店舗で1000通りのメニューを提供するという一様な対応を取るのではなく、地域や店舗の特徴ごとに商品開発やサービス提供を変えるといった大胆な決断をすることが必要です。そうすることで、個々の顧客のニーズに対応することが可能になり、また現場の活気を盛り上げることにもつながって、顧客の信頼を取り戻して復活することもできるのではないでしょうか。