スポーツ選手と広告
マーケティングコンサルタントとして、企業のマーケティング戦略を構築したり、経営者と一緒に事業戦略を構築することも多いが、これまで広告の世界にも長く携わってきた。国内外での撮影を含むCM製作のほか、グラフィック広告、店頭販促、PRなどの仕事もある。したがって経営者やマネージャークラスから広告宣伝やPRに関する助言を求められることも少なくない。今回の記事は「企業はなぜスポーツ選手をCMに起用するのか」ということがテーマだ。CMが誕生した当時から、CMキャラクターとしては俳優やタレントの他、スポーツ選手がいた。そのスポーツ選手を起用しようとする動きが、ここ最近増えているのだ。その理由についてご説明したい。
CMキャラクターの選定基準とは
増えるスポーツ選手のCM起用
- 認知度は高いか
- 好感度は高いか
- 企業イメージに合うか
- ターゲットに合うか
- 犯罪・スキャンダルなど不安要素はないか
- 金額は広告予算内か
- 表現や制作物での使い勝手は良いか
- 競合他社が起用していないか
その他「将来性(予定されているドラマや活躍の場も含む)」や「既存広告主(競合外)との契約状況」なども判断材料として考慮されるが、大きくは上記の8つにまとめられる。では次に、なぜ昨今、スポーツ選手のキャラクター起用が増えているのかについて考察したい。
芸能人の広告キャラクターとしての限界
まず広告キャラクターとしてすぐに浮かび上がるのが芸能人。依然としてその起用は多いものの、少しずつその数は減ってきた。これにはいくつかの理由がある。まず挙げられるのは「タレント寿命の短命化」だ。現在は、かつてよりその傾向が顕著だ。急に人気になる人が増える一方、すぐに見なくなることも増えた。この背景には、世の中に情報が溢れる中、人々が物事に飽きやすくなったこともあるが、それ以上にテレビ局側の事情もある。より安い制作費用で番組を作ろうとすれば、つねにギャラの安い新しい人を起用する方向になる。その結果、タレント寿命の短期化に繋がっているのだ。
もう一つは「タレントパワーの減少」だ。いいかえればタレントCMではモノが売れなくなったということだ。大物タレントが商品の宣伝をすれば、モノが売れる時代ではない。今の消費者は、そもそも自分とは関係のないモノは買わなくなっている。さらにCM自体を見なくなっている。そして、商品の宣伝をするタレントが、仕事だからという理由で、その商品を宣伝しているのも知っている。このように、残念ながら芸能人の広告キャラクターとしての価値は下がっているのが現状だ。
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