緊張すると、思わぬところでじわっと汗が……
学校ではテストの時やみんなの前で発言する時、仕事では初対面のお客様への訪問の時、大切なプレゼンの時、プライベートでは好きな人とデートする時、または激しい腹痛に襲われた時などにも冷や汗や脂汗をかいた、といった経験がありますよね。顔は笑顔で装っても汗びっしょり
私自身も大勢の方の前でお話するときやヒヤッとした時は、手の平やワキの下が一瞬で湿ることが多々あります。でもなぜ、暑くもないのに汗が出るのでしょうか?
今回、「暑い時に出る汗」と「緊張した時に出る汗」の違いについて、都立大塚病院皮膚科医長医学博士の藤本智子先生にお話を伺いました。
体温調節のための汗と緊張した時の汗の違い
「汗には体温調節の際に出る『温熱性発汗』と緊張やストレスを感じた際に出る『精神性発汗』の2種類があります。温熱性発汗は、暑いと感じた際、体温を一定に保つように発汗によって熱を逃し、体温調節する機能が働く体の生理的な現象です。それに対し精神性発汗は、緊張により交感神経が刺激され、急激に発汗されます。」なるほど、自分では体温調節の汗だと思っていても、実は緊張による汗の場合もあるのですね。例えば、夏の暑い時にお客様のところへ訪問した時、普段より汗をかいたりした経験はありませんか? それは暑さによる汗もありますが、緊張による汗の場合もあるということですね。
「集中するときにも精神性の汗は出ているんですよ」
「通常の汗の成分は水と塩で、PH値は弱酸性で保たれていますが、緊張で急激に汗をかいた時、からだに必要な成分まで出てしまい、PH値がアルカリ性に変わります。その際、塩分などが大量に出てしまうのでベタベタが残り、服が乾くと白くなったり肌がかゆくなることもあります。
体温調節の汗は全身から出ますが、精神性の汗は主に手、足、ワキ、顔面、頭部から発汗するのが特徴です。」とのことです。
急激な体温変化はからだに必要な成分も出てしまうため、慢性疲労の原因にもなるのですね。一方、緊張による急激な汗はワキの下などからが多く、この部位は脂腺も多く含まれていたり密閉された部位にあるので、雑菌などが多く混じってにおいの原因になることが多いとのこと。この時期、特に緊張する場面が多いかと思いますので、急な緊張汗に備えて正しくしっかりケアをしたいですね。
緊張したときのワキ汗対処方法
緊張してワキ汗で服の汗染みが気になる時、ありますよね?ワキから出る汗に悩む割合は、他の部位から出る汗に悩む人よりも多いという疫学調査の結果もでているそうです。日本人は汗やにおいに対してかなり敏感ですし、どこかタブー視されています。そんな時のワキ汗対策に効果的な方法を教えていただきました。
制汗剤は使い続けることで効果が増す
「制汗剤で汗とにおいを抑えるのがかなり効果的です。現時点で最も有効な成分とされる『塩化アルミニウム』が配合されたものを使用するとよいです。汗の出口を塞ぐ作用があるので、直接ワキに塗りこむクリームタイプやスティックタイプ、ロールオンタイプのものをカブレが出ない限りは毎日繰り返し使い続けるとかなり効果的ですね。
特に大切なシーンの予定が前もってわかっているならば、一週間くらい前から使ってみてください。当日はクリームタイプを使うのもいいですね。また軽いワキ汗程度なら、直前にトイレで使うだけでも効果的です。」と先生が教えてくださいました。
「かぶれない限り、制汗剤は使い続けることで効果がでてきます」
他には、「汗をかいたら乾いたタオルより濡れたタオルで拭き取ること。においは皮膚の表面の雑菌が増えて発生するものがほとんどで、その温床となるのがたんぱく質や汗そのものの水分です。濡れたもので拭くほうが、よりそれらの成分を取り除くことが可能です。」とおっしゃっていました。市販のウエットティッシュを常備しておけば、急な汗の対策によいですね。
食生活や生活習慣を改善して、においを根本から抑えるのも◎
先生に根本的なケア方法もアドバイスいただきました。「食事なら、食べた物の成分が血液中に移行して汗となって出るため、香辛料などにおいのきついものをなるべく避けるといいですね。また入浴の際にはシャワーでは落ちきらない汗もあるので、湯船にしっかり浸かることでにおいを抑えてくれますよ。」
「シャワーよりも湯船にしっかり浸かるほうがにおいを抑えられますよ」
賢く汗ケアして新生活を快適に
先生は「そもそも汗は、肌の潤いを保つ役割があります」と、汗のメリットも教えてくださいました。適度な発汗は体温調節をしつつ、お肌をみずみずしく保ってくれる優れものですので、事前にワキ汗やにおい対策をしたら、あまり過敏にならず、汗と上手にお付き合いしながら快適に過ごしましょう!<藤本智子先生 プロフィール>
都立大塚病院皮膚科医長。多汗症や無汗症などの発汗異常のほか、皮膚科全般の治療に携わっています。日本皮膚科学会専門医、日本発汗学会、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会、日本アレルギー学会。
取材協力:ニベア花王