「池尻団地」から「アトラス池尻レジデンス」へ

メインエントランス正面のパティオ

メインエントランス正面のパティオ

現地は東急田園都市線「池尻大橋」駅から徒歩6分。国道246号線やや北に位置する。従前の「池尻団地」は1964年東京五輪の前年に竣工。5階建て4棟構成の集合住宅であった。

2009年6月建て替え推進決議がなされると、同年10月事業協力者として旭化成不動産レジデンスを選定。2010年12月建て替え決議、2012年2月解体を経て、2014年3月建て替え工事が完了。5年という期間は一見スムーズに思わせるが、1993年に建て替え検討委員会なるものが結成されるも2002年計画は一旦破たん。区分所有建物ならではの紆余曲折を経ている。

「アトラス池尻レジデンス」は地上11階総戸数205戸。非分譲住戸89戸、店舗1区画。分譲対象床部分の販売平均坪単価は@337万円である。2013年3月、現地近くにモデルルームを設営、販売活動を開始。同年末には完売に至る。

駅に近いサブエントランス

駅に近いサブエントランス


隣接公園の付け替えで高まる「景観と資産性」

建て替え前の敷地状況

建て替え前の敷地状況

建て替えを実行するにあたって最も大きな問題は、権利関係が複雑だったことである。一部借地権を解消して再建したい、が当初のねらいで円滑化法を適用するにはタイミングを見計らって所有権化を進めなければならなかった。

次に、ネックとなったことのひとつに地形(じがた)の問題があった。南東に隣接する区立公園が不整形な状態で、設計上好ましい施設とは言い難かったようだ(右の画像)。そこで面積は変えずに、位置と形を替える提案を行政に行う。

ブランコや滑り台、砂場といった子どもを対象に設えた施設は昨今利用頻度も低かったようで、位置的にもアプローチしにくかった。そこで建て替えを機に、下の敷地配置図のように換地を図る。

実際に現地を見ると、新しく移設された公園は「老若男女問わず誰もが憩える緑の空間になったこと」がよくわかるのだが、それをはるかに上回って思うのは「隣接する建物との間にゆとりが生まれることで高まる安全性」や「道並み整備による一帯の景観向上」である。歩道拡幅や緑地整備は当該マンションのみならず、周辺の資産性にも寄与するのではないかと思うほど。ひとつのアイデアがもたらす影響の大きさをあらためて実感した次第だ。

建て替え後の敷地配置図

建て替え後の敷地配置図

 

パティオから公園側を見る

パティオから公園側を見る


実物でしかわからない「ディテールが表現する高級感」

公園側からパティオを望む

公園側からパティオを望む

学んだもうひとつは「ディテールにこだわった高級感は、実際のスケールになってみないと正しく評価しきれない」ということ。それくらい「アトラス池尻レジデンス」は想像を超える出来映えだった。

分譲当時(工事中)の評価も低いものではない。だが、この記事を読むと、外壁に確かに触れているのだが、その実力の半分も表現しきれていないといえる。例えば、「大ぶりで1枚1枚が風合いの異なるタイルを用い、またバルコニー下部などは凹凸の出る張り方をあえて取り入れ、時間によって異なる陰影の豊かさを醸し出すこだわりを追及している」のところは、

『大ぶりの外壁タイルは1枚ごとに色と「仕上げ」まで変えている。が、それがあまりに微妙な施しであるため、ぱっと見にはわからない。眺めるたびに異なる重厚感は、そういう仕掛けだったのかとあらためて気付かされ、視線は開口へ。窓の上下飾りやバルコニー手すりの装飾、タイルの張り替えなど独特の佇まいは丁寧にデザインされたディテールの積み上げであることが理解できるはずだ。コーニスや軒天など家並みや空並みまでこだわっているので、見ていて飽きない。』

くらいの表現が的確であろうし、さらに「青田売りには、何とも把握の易くない外観といえよう。それだけにじっくり時間をかけて理解したい」のくだりは、 

『青田売りの最大のデメリットは、実物を見ずに判断しなければならないこと。もう少し詳細にいえば、買い手からすれば「マンションの資産性を担保する外観デザインやエントランスをパースでしか把握できない」ことを、そして売り手からすれば「マンションならではの迫力を肝心の販売時にアピールできない」ことを意味しているのだが、当物件はそれを多大に被っている恐れがある。』

という強めの指摘をしておくべきであった。

マンションを購入検討しようという人は、こういう現場を実際に見て、パンフレットから湧き出るイメージとのギャップを学習すればよいと思う。手間のかかる作業だが、この手の知識は掘り出し物に出会える可能性を高めるであろうし、逆のパターンのリスクヘッジにもなるはずだから。

外観

外観


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