閑静な住宅街にそびえ立つタワーマンション「元麻布ヒルズ」
東京メトロ南北線「麻布十番」駅の地上部は、東京都道415号線「一ノ橋」交差点である。麻布十番商店街のなかほど、トノー型の「パティオ十番」を横切り一本松坂に向かえば、高台の閑静な住宅街が目の前に開けるだろう。六本木~麻布界隈は、東京湾から見て先頭の高台にあり、日照眺望ともに優れた地勢(「地形(ちけい)」を俯瞰した意味合い)であることはこれまでも再三述べてきたが、元麻布はさらにその南傾斜地のてっぺんにあたるロケーションである。
「ドムス」や「ホーマット」など外国人向け高級マンションシリーズとして名をはせた建物が点在する緑豊かな丘の上に、「元麻布ヒルズ」(森ビル)は突如として現れる。地上29階建てのタワー棟のほか2つの低層棟からなる集合住宅は、内井昭三建築設計事務所デザイン監修のもと2002年に竣工。施工は竹中工務店である。免震を採用した(低層棟1つを除く)邸宅マンションは総戸数222戸。駅からの所要時間は徒歩7分である。タワー多しといえど、都心の閑静な住宅街にあるという点で他に例を見ない存在であり、根強い人気を誇る理由もまさにその点にあるようだ。
築10年を経てリノベーションニーズも発生
「元麻布ヒルズ」は、森ビルにしては珍しくまとまった戸数を一般(新規)分譲したプロジェクトである。仙台坂に構えた販売サロン(当時)は、リアルに住空間を感じてもらおうとしたのか水道まで引いていた。洗面の蛇口をひねって水が出たモデルルームは後にも先にもこれが初めてである。「元麻布ヒルズ」の大きな特徴のひとつは、ランドスケープに他ならない。個性的な建物形状もさることながら、前面道路と建物の間には再開発ならではのゆとり(庭園)をたっぷりと設けた。(上の画像)サインの向こうには、上階入り口につながる原っぱが広がっている。記録的な積雪の名残りが映っているが、これが夏場には鮮やかな景色にとって変わる。付帯施設として「元麻布ヒルズスパ」や「レストラン」が入る。
築10年を境にリノベーションを施す住戸が増えてきたようだ。借主が退去したタイミングで(これまでの入居者たちの希望もあり)、売却するケースも少なからず発生。そこでこの度、森ビルは参考となるショールームを開設。今般、見学の機会を得た。施工前の間取りは以下の通り。