ジャズ/シチュエーション別おすすめジャズ

年末に聴きたいジャズ(JAZZ)ベスト3(2ページ目)

年末の定番音楽と言えば、ポップスでは紅白歌合戦やレコード大賞、クラシックの世界では、何と言ってもベートーベンの「第九」です。特にオーケストラと百人にもおよぶコーラスによる「歓喜の歌」には、一年の垢を全て浄化させてくれるような効果を感じます。もちろんジャズにも年末に相応しい曲が沢山あります。今回は、年末に聴きたいジャズ(JAZZ)をご紹介いたします。

大須賀 進

執筆者:大須賀 進

ジャズガイド

第二位 NO.1ヴォーカリーズコーラス マンハッタン・トランスファー「マントラ」より「バードランド」

Man-Tora: Live in Tokyo

Man-Tora: Live in Tokyo


「バードランド」という曲は、80年代を代表するフュージョンバンド、ウェザー・リポートの代表作。大ヒットしたアルバム「ヘヴィ・ウェザー」で発表されたものです。

メロディを、そのままではなく少しひねって演奏する事が多いウェザー・リポートが創る曲は、いわゆる通好みなものが多いのですが、この「バードランド」は例外的に、ストレートにメロディを繰り返します。そこが受け、大ヒットにつながったといえます。

もちろん、オリジナルの演奏は、インストルメンタル(器楽曲)で、当然ボーカルは入っていません。ここでご紹介する4人組のコーラスグループ、マンハッタン・トランスファーによる演奏は、なんとそのウェザー・リポートの演奏に歌詞をつけて歌ってしまったというもの。

作曲者でもあるキーボードプレイヤーのジョー・ザヴィヌルのキーボードプレイや、サックスのウェイン・ショーターのソロまで、歌詞をつけて歌っています。この超絶技巧ともいうべきヴォーカルは、「ヴァーカリーズ」というジャズ特有のジャンルになります。

「ヴォーカリーズ」の歴史は古く、1940年ごろからエディ・ジェファーソンというヴォーカルにより広まったとされています。器楽曲のアドリブ部分にまで歌詞をつけて歌うというスタイルは、それをこなせる実力を持つヴォーカリストの中で広まり、キング・プレジャーや女性のアニー・ロスなどによって一般化したといえます。

最初は、ソロ(一人)で歌われたヴォーカリーズですが、そのアニー・ロスが入った、ランバート、ヘンドリックス&ロスの登場により、コーラスの世界にまで広がりました。

マンハッタン・トランスファーは、その先輩格に当たる三人組ランバート、ヘンドリックス&ロスの演奏を四人でさらにバージョンアップしたものといってよいでしょう。

一人増えている分、コーラスの厚みもくわわり、その上彼らの盛んなエンターテイメント性により、楽しさも増しています。「バードランド」はマンハッタン・トランスファーにとってもあたり曲となり、彼らの名や実力を世界に知らしめたものとして、記憶されました。

「バードランド」という曲は、ニューヨークに1950年代にあったジャズのライブハウスのバードランドに由来しており、そのライブハウスの名前は、当時のジャズ界の第一人者、アルトサックスのチャーリー・パーカーのあだ名、バードからとられています。

まさにバードのために作られたというライブハウスのバードランドですが、色々問題が多かったご当人のバードが、結局出入り禁止になったという、笑えないエピソードもあります。

マンハッタン・トランスファーのコーラスは、ウェザー・リポートの原曲がまとうミステリアスな雰囲気よりも、むしろ歌としての楽しさのほうが強く、最後に同じメロディを繰り返すくだりの盛り上がりは抜群。

その楽しさがライブ録音により増したこの演奏は、まさに一年の最後を飾る定番曲にふさわしいといえます。モダンジャズの創始者バード、チャーリー・パーカーの軌跡を、一年の最後に称える意味でも、「バードランド」は毎年年末年始に聴きたいものです。

いよいよ年末年始にふさわしいジャズの第一位は次のページでご紹介します。

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