双方向のコミュニケーションを創り出す
相手の能力を開発するという視点から、教育現場における事例をご紹介します。 今、大学などの教育機関の多くが、学生の学習を実際の授業だけでなく、インターネット上でもサポートする「コース・マネジメント・システム」を導入しています。このシステム構造、北米・ヨーロッパ型と日本・オーストラリア型の2種類に分かれ、両者は根本的に違うという話を聞きました。まず、日本・オーストラリア型は「eラーニング」をベースに学生の理解度をテストする方式が多く、
- テストを通じて能力を棚卸し、
- 間違ったところは 集中的にeラーニングなどで学ばせ、
- 正しく答えられるようにトレーニングする
このアプローチは、日本で多く見られる、先生が生徒に「正解を教える」アプローチです。
一方、北米・ヨーロッパ型は、テスト方式は取らず、学生が学習するプロセスで教授が随時関わることを前提に設計され、
- フィールドワークを実践させ、
- そこでの体験について質問したり、情報共有するなどし、
- 人とやりとりすることを通じて学ばせる
このアプローチ法、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授による「ハーバード白熱教室」の教授と学生のやりとりをベースに進む授業を彷彿とさせます。
両者になぜ違いがあるのかについては諸説があるようですが、そのひとつには教授の評価が、
- 日本やオーストラリアでは、「優れた研究発表や論文の数」であること
- 欧米は「優れた人材を世の中に送り出す」こと
相手の優秀さを引き出すという点では、一方通行で教えるより、双方向で支援することが効果的と示している事例と見ることもできそうです。
日本のビジネス現場で急速に求められる「双方向型」のコミュニケーション
私たち日本人の多くは、学校教育を通して「正しい解」を求め、与えられる教育を受けてきました。そして社会人になっても、この「唯一の正しい解」の追求によって高度成長できた時代が続きました。このとき、教えることやアドバイスはいち早くそうした「解」を得る方法として有効だったと言えます。 しかし今、私たちを取り巻く環境は日々変化をしています。そのスピードはこの数年間で何倍も速くなり、同時に、グローバル化に伴い、ひとつの価値観だけでなく、多くの価値観が取り巻く中でビジネスが動いています。
このようなリアルタイムの変動とダイバーシティに溢れる社会で求められる、
- 様々な可能性から最適の選択をする能力
- 一人ひとりが自ら考え、行動していく能力
双方向コミュニケーションを創り出すためにまずできることは
鍵は会話のキャッチボール
そうしたコーチ型マネジメントに取り組み始めた方に「何が一番役に立っていますか?」とお聞きするとき、多くの方が、次のことを口にすることに驚かされます。
「黙っていられるようになったこと」
たとえば、部下50人を持つある管理職の方は次のように言っています。
「最近、やっと相手の話を黙って聞くことが平気になってきました。 今までは、部下から話しかけられると、すぐに『何か答えを教えてあげなくては』と思っていました。実際、自分が若いころは、上司に何かを聞くと、 間髪いれず、答えを教えてくれる人がいて、 そういうことをできる人が優れた上司だというイメージを持っていました。でも、今の時代は、場合によっては自分より部下の方が 優れた答えを持ってることが多いですよね。私にできることは、 部下が自分でその答えにたどり着くよう『聞く』ことだ、 ということがわかりました。でも、答えを言わずに話を促すなんてことは、 これまであまり経験したことがないので、 やってみるまでは、どうしたらいいか全くピンときませんでした」
「正解」を教えるのではなく、質問したり、黙ったり、時には議論したりするなどして「双方向」のコミュニケーションを交わしながら、相手の思考、学習、行動を促す。多くの人にとって、これはまったく新しい経験であり、取り組みです。
それは、従来の日本型に見られる、一方通行の学習システム構築の傾向とは明らかに違います。
でも、一方通行のアプローチが、優れた人材の育成を阻むとするなら、私たちは「正解を教える」というところから少し自由になる必要があるのかもしれません。
そしてそのはじめの一歩は、まずは黙って部下の話を聞くことから始まるのです。
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