フレグランスといえばフランス……何故調香師はフランス人?
フレグランス先進国、フランスの香り文化とは
私が勤務していたヨーロッパの香料会社でも、調香師と言われるパフューマーの7割~8割がフランス人でした。現在では、著名な調香師の2代目・3代目の若手パフューマーも活躍しています。無論、男性だけでなく女性のパフューマーも大勢いらっしゃいます。何故、フランスに香りのクリエーターが育つ環境があるのか、とても不思議に思っていました。
フランス女性は香り・香水好き
日常的に香水を楽しむのがフランス流
フレグランスの名前のみならず、何故好きなのか、その香りの成分やバランス、いつ使っているか等……こちらが聞かなくても次から次へと話題に事欠きません。
バッグの中から使っている香水を出して「試してみて!!」と、販売員さながらにお勧めしてくれるマダムもいたくらいです。(笑) ここでも、何故こんなに香りが身近にあって、生活の中で楽しんでいるのだろう?という私の疑問は膨らむばかりでした。
その疑問が解決したのは、香料会社へ勤務して、ヨーロッパと日本を往復している中で3年目ぐらいだったころ。親しくしていた南仏在住の恩師の家へ泊った時のことです。
フランス人の香水文化が育まれる生活習慣
週末、日本から訪れている私を歓迎してくれるため、家族や近隣の友人達が集まって、プールサイドでバーベキュー。子供たちもこの日は特別ということで、少しだけ夜更かしをさせてもらっていたようです。翌朝、朝食を取りに階下へ降りていくと、ちょうど子供たちを母親が学校へ送っていくところでした。眠たそうなお兄ちゃんは小学校5年ぐらい、妹は2年生ぐらいだったでしょう。支度にぐずる二人を「早くしなさい……」と、世界のどこでも同じ朝の光景です。 ところが、お母さんがその二人を階段下の洗面所へ連れて行ったのです。
「お兄ちゃん、今日はどれにする?」と、置いてあるオーデコロンのボトルを選ばせています。 彼は眠たそうな眼をこすりながら、「これ」と指差したコロンが「4711」というオーデコロンでした。 半分ほどに減っている500mlほどもある大きなオーデコロンのボトルから、お母さんが手に取って彼につけてあげているのです。「ほら、すっきりと今日一日、楽しく学校へ行ってらっしゃい!」という言葉を添えて。
オーデコロンは家族で使用する……という習慣があることは知っていたのですが、まさにこのように使われているのかと。
それを見ていた妹も「私はこれが好き」と、まだ背伸びをしなければ届かない洗面台から自分が着けるコロンを手に取って、母親へ渡していたのです。いやはや、こんな小さいころから、自分の好みを主張できる環境があるのだということにも驚きましたが、「日本では学校へフレグランスを着けていくなんて……」と、言われかねない時代でしたから、感心もしました。
子供のころに接した香りは、深くそのシーンと結びついて記憶に残るといわれています。この二人のお子さんの一人は、パフューマーになられたと聞いています。日本でも、もっと子育ての中で五感を育成できる環境が整えられると、日本独自の香りを創りあげることができる調香師が生まれてくるのではないでしょうか。期待しています。
【関連記事】