金魚/金魚の種類

金魚の新しい品種が世に出るまで(2ページ目)

日本の金魚は、中国より伝来して以降500年の歴史を持ちながら、きちんと固定化され、承認されている品種は非常に少なく、現在までで22品種しかありません。一つの品種を固定化するまでには多大な時間と労力、そして情熱が必要とされるからです。今回は、「桜錦」という平成になって発表された品種を例にとり、金魚の新品種がどのように作りだされるかをご紹介したいと思います。

菊池 洋明

執筆者:菊池 洋明

金魚ガイド


桜錦の固定化の過程

―桜錦固定化の過程は?
可愛らしい桜錦

可愛らしい桜錦

『市場に出したら、問屋さんは桜錦を見て「なんだこれは?」「これはどうせ突然変異だろう」とか言うので、私は生産者の意地としてこれは続けていかなきゃいけないと思ったんです。

そういうことがあったものだから、桜錦をたくさん作ってやろうと思って今度は桜錦同士を掛け合わせたら、出来た仔たちは、逆に墨がポツンポツンと入っていて、純粋に赤白の桜錦があんまり出なかった。桜錦を固定化しようと桜錦同士を掛けたのに、江戸錦の出来損ないが出来てしまったんです。このままでは駄目だということで、その桜錦たちにさらにもう一度ランチュウを掛けたんです(3回目)。 3回ランチュウと掛け合わせたことにより、ランチュウの血が濃くなって江戸錦の名残りであった墨が劣勢となり、その後は赤白のみの桜錦が多く出るようになった。その桜錦同士の掛け合わせを続けていくことによって、ようやく固定化することが出来たわけです。

そうして固定化できた桜錦を市場に出していたら、日本観賞魚振興会の理事もされている弥富の組合長さんたちが理事会で「弥富でこういう金魚(桜錦)が出来たから新品種として認めてくれないか」と言ってくれた。それで1996年に金魚の新品種として承認されたんです』

金魚の新品種の作出固定化の難しさ

2008年以降、地金とパンダ蝶尾を交配させてできたという「東海錦」

2008年以降、地金とパンダ蝶尾を交配させてできたという「東海錦」

新品種の作出固定化にあたって一番困ることは「良い親魚を病気で死なせてしまうこと」だと言います。これは新品種に限ったことではないかもしれませんが、良い親魚からは良い仔が採れますが、悪い親魚からはなかなかいい仔は出ないため、生産者の方は良い親魚を殺さないように管理することに細心の注意を払っているのです。

桜錦が固定化され、新品種として世に出るまでの期間は20年に及んでいます。平成になってから固定化された桜錦ですが、他の品種のついてもこのような先人たちの情熱が形となって現在に至っているわけです。現在も熱心な一部の養魚場や愛好家により、様々な新しい金魚作出への試みが行われています。近い将来、今まで見たこともない特徴(色や形質)を持った金魚が新たにあらわれるかもしれません。このような奥深さを持っていることも金魚の魅力の一つなのです。
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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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