今年11月16日、衆議院が解散した。
11月14日、国会では民主、自民、公明、国民の生活が第一の各代表による党首討論が行なわれました。ご存じ、その席上で野田総理が「特例公債法案が今週中に成立し、衆院の1票の格差是正と定数削減が遅くとも来年の通常国会で実現するという確約が得られれば、16日に衆院を解散する」との強い決意を表明した日です。
この解散発言を受け、8661円05銭(11月13日の終値)だった日経平均株価は12日間で9446円01銭(月末30日の終値)へと784円上昇しました。次期衆院選では自民党が政権奪回するとの思惑が市場を席巻し、安倍総裁による大胆な金融緩和発言が株式市場で好感されました。その発言内容は日銀法の改正も視野に、政府・日銀の連携強化の仕組みを作り、大胆な金融緩和を行なおうというものです。同党の政権パンフレットには『国民と自民党の約束』として、「デフレ・円高からの脱却を最優先に、名目3%以上の経済成長を達成する」と、経済再生への意気込みが盛り込まれています。
しかし、こうした「安倍相場」はすでに“息切れ”との声が、早くも一部からは出始めています。「安倍さんが総理大臣だったときに実現できなかったのに、今度はできるのか」という疑問が悲観的な意見を誘発します。その点に関しては、私ガイドも同感です。
では、民主党が選挙に勝利し、引き続き与党としての政権を維持したら、どうなるでしょうか。「国民の生活が第一」「コンクリートから人へ」といったスローガンを耳にする機会はめっきり減りました。11月27日に発表された「2012年 民主党の政権政策マニフェスト」からは改革の工程表や数値目標が姿を消し、理念中心の政策集になっています。これでは「民主党の自民党化」と揶揄(やゆ)されても仕方ないでしょう。
2009年の衆院選では307議席を獲得した民主党ですが、今では250議席を下回っています。離党議員の続出を同党はどう捉えているのか。野田総理の求心力が衰えているのは誰の目にも明らかです。はたして、12月の衆院選挙後、日本経済、そしてマンション市場はどうなるのか?―― 以下、ガイドの独自視点で先行きを分析することにします。
民主党による仲介業者の「両手取引」の禁止 結果的には反故(ほご)の状態
まずは、2009年の民主党による政権交代マニフェストで、住宅政策についてはどのような政権公約が掲げられていたのか、その中身と成果を振り返ることから始めましょう。- リフォームを最重点に位置づけ、バリアフリー改修・耐震補強改修・太陽光パネルや断熱材設置などの省エネルギー改修工事を支援する。
- 建築基準法などの関係法令の抜本的見直し、住宅建設に係る資格・許認可の整理・簡素化など、必要な予算を地方自治体に一括交付する。
- ホームインスペクター(中古住宅に欠陥がないかどうかを診断する専門家)を育成し、既存住宅を安心して取り引きできるようにする。
- 多様な賃貸住宅を整備するため、家賃補助や所得控除などの支援制度を創設する。また、定期借家制度の普及を後押しする。
- 住宅ローンをノンリコース型にする環境を整える。
- 担保評価の仕組みを見直すことで、リバースモーゲージを利用しやすくする。
- 木材住宅産業を「地域資源活用型産業」の柱とし、推進する。伝統工法を継承する技術者、健全な地場の建設・建築産業を育成する。
最初のリフォームの重点化とホームインスペクターに関しては、一定の成果があったと感じています。「新築重視」「中古軽視」といった考え方は徐々になくなり、リノベーション住宅の認知度も高まっています。中古住宅の「汚い」「欠陥が心配」といった不安が払拭されることで、中古住宅の流通促進が図られています。
しかし、その他の公約に関しては成果が見えません。建築基準法については耐震改修あるいは防災目的での容積率の緩和措置が取られましたが、定期借家制度の見直しや住宅ローンのノンリコース化はまったく手付かずです。表立った議論すら、なされていない様子です。
そして、もっとも残念なのが「仲介業者の両手取引の禁止」が完全に反故(ほご)にされたことです。民主党の政策集INDEX2009に、「一つの業者が売り手と買い手の両方から手数料を取る両手取引を原則禁止とする」という表現が盛り込まれました。仲介業者が一社で売り手と買い手の双方代理をすることによる消費者利益の毀損(=利益相反)をなくそうというのが、その狙いです。
しかし、結果は完全に反故(ほご)にされました。個人的には期待していただけに、とても残念です。民主党の住宅エコポイント制度はとても評価できるものの、その他は「さすが民主党」と言える施策は見当たりません。
次ページでは、今回の衆院選で二大政党はどのような住宅政策を公約に掲げているのか、その中身を確認・分析します。