マーケティング/マーケティング事例

250円牛丼店を100店に拡大!吉野家に勝算はあるのか?(2ページ目)

低価格戦争の後遺症に悩む牛丼業界で、吉野家は再び牛丼1杯250円で殴り込みをかけてきました。現在東京の2店舗で実験している新業態を3年後には100店舗にまで拡大して、業績アップにつなげようというのです。これまで数々の外食企業が挑戦して一時的な成功は収めるものの、長続きしなかった低価格戦略に勝算はあるのか?吉野家の真の狙いに迫ります!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

これからの吉野家に待ち受ける茨の道とは?


マクドナルド

マクドナルドもかつては低価格路線の後遺症に悩まされた

これまで、低価格で成功し続けた外食チェーンは、ほとんどないといっても過言ではないでしょう。

かつて、マクドナルドはハンバーガーを59円まで値下げして、デフレ時代の勝ち組と一時もてはやされましたが、「ハンバーガー=安物」のイメージが定着して消費者に飽きられると、その後の業績不振の後遺症を乗り越えるために、大変な苦しみが伴いました。

また、イタリアンレストランを運営するサイゼリアは、メニューを絞り込んでパスタを低価格で提供する新業態「サイゼリアExpress」を展開しましたが、今では1店を残してすべて撤退しています。

牛丼業界でも低価格戦争によって、一時期は業績を伸ばすことができても長続きしないなど、外食産業においては、低価格で一旦は顧客を呼び込むことに成功しても、メニューの単調さから価格だけではリピートを促すことは難しいというのがこれまでの常識です。

更に吉野家にとって、悩ましいのは低価格商品投入によって起こるカニバリゼーションです。

カニバリゼーションとは、低価格の新製品を投入した際に、多くの顧客が高価格の既存製品からスイッチして、売上の“食い合い”が起こり業績不振に悩まされる現象ですが、吉野家の場合はまったく同じ牛丼を250円と380円で販売するわけですから、同じものが250円と380円で売られていれば、250円の方を選ぶのは消費者の合理的な考え方です。

外食産業においては、これまでマクドナルドなどでも地域別価格として、同じ商品を違う価格で販売してきた事例はありますが、それはあくまでも都道府県が違うなど商圏がかなり離れている場合です。

吉野家の場合も、商圏を重ならないように配慮するとはいえ、東京で同じ牛丼が250円と380円で提供されているのですから、380円の牛丼を食べるのを控えてしまうカニバリゼーションが起こる可能性も高くなります。

同じ商品を、店舗によっては52%ものプレミアムを上乗せしているからには、消費者が納得する理由が必要になるでしょう。


吉野家はどうやってこれまでの常識を打ち破るのか?


課題はいろいろとありますが、低価格店を今後3年間で100店舗にまで増やすという強気の計画は吉野家の成功に対する自信の表れとも取れます。

これまでの失敗事例を分析すれば、低価格メニューだけでは持続的な成長が難しいということで、価格で呼び込んだ新顧客を次のステージにつなげる“ストーリー”が重要になってきます。

まずは、低価格の牛丼で間口を広げて、これまでスーパーやコンビニを利用している多くの顧客を獲得し、続いてファンになってもらった顧客に対しては“店の奥にある”高収益の商品を購入してもらって利益を上げるマージンミックスを実現する必要があるのです。

「売れる商品」で顧客を呼び込み、「売りたい商品」で利益を上げていくという“ストーリー”です。

もし、高収益の「売りたい商品」を準備していなかったり、たとえ準備していたとしても計画通りに「売りたい商品」が売れなかったりした場合は、顧客には必ず飽きが来るので「売れる商品」もいずれは「売れない商品」となり、その際には顧客数と客単価の低下というダブルパンチに見舞われるのが、これまでの外食産業における経験則です。

果たして、吉野家はどのようにして、これまでの業界の常識を覆していくのか?

そのマーケティング戦略に注目が集まります。
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