1杯250円の牛丼店を100店舗にまで拡大することを発表した吉野家


吉野家

再び低価格路線の拡大を決定した吉野家

吉野家が牛丼1杯250円で提供する店舗を3年で100店舗にまで拡大することを発表しました。

吉野家は、10月に「築地吉野家 極(きわみ)」という店名で、東京都板橋区と江戸川区に牛丼並盛と大盛をそれぞれ250円と400円で提供する店舗を出店。メニューの絞り込みと内装の簡略化で出店費用を抑えることにより、低価格でも利益が確保できることが証明され、今後従来の店舗と商圏が重ならない激戦区に出店して新規顧客を開拓していく戦略です。

牛丼業界は2010年から2011年にかけて“牛丼御三家”による激しい値下げ競争が多くのマスメディアに取り上げられて注目を浴び活況を呈しましたが、消費者が低価格に慣れてしまった最近では、顧客数の減少と客単価の下落というダブルパンチの後遺症に悩まされ続けています。

そこで、業績不振から脱するために実施した戦略は、高付加価値メニュー投入による客単価アップ。従来の牛丼に加えて、付加価値の高いメニューを加えることにより、客単価をアップさせ、業績の回復を目論んでいるところです。

このように、牛丼各社が値下げの後遺症から立ち直るために新たな道を模索し始めていた中での吉野家の再度の大規模な低価格戦略は何を意味しているのでしょうか。


再び価格競争を仕掛けた吉野家の狙いとは?


「もはや牛丼250円キャンペーンでは、顧客の反応は鈍くなった」と、牛丼業界のリーダーであるすき家は、今年に入り値下げキャンペーンを控えています。

すき家に加えて、松屋も現状は低価格路線から決別して、高価格メニューへ路線変更しているために、吉野家の新店舗が脅威にならなければ対抗してくる可能性は低いといえます。

恐らく、吉野家自身も今回の低価格路線は同じ牛丼業界の中での顧客の奪い合いというよりは、中食を含めた、より大きなマーケットでの顧客の奪取を意識しているのではないでしょうか。

近年の長引く不況により、顧客の節約志向はより鮮明になっています。

これまで、快調に業績を伸ばしてきたマクドナルドでさえ、客単価の下落に歯止めがかからず、2012年の1月~9月期の経常利益が前年同期比16%減になるなど、7期振りの経常減益で苦戦を強いられています。

このような苦戦が続く外食に比べて、今、消費者の支持を受けているのが、スーパーやコンビニなどの「中食」。

「中食」勢は、消費者のライフスタイルに合わせてメニュー開発を行ったり、料理を小分けにしたりして需要を喚起し、“食”のマーケットで大きな存在感を示しています。

民間の調査会社のエヌピーディー・ジャパンによれば、2012年の1月~9月の「中食」および「外食」でどのくらい食事をしたかという調査において、回数ベースではスーパーが19.4%でトップに立ち、コンビニが18.0%で続きます。そして、牛丼店に至ってはわずか3.9%と大きくスーパーやコンビニに引き離されているのが現状です。

そこで吉野家は、牛丼業界という小さな“池”の中でシェアを奪い合うのではなく、飲食業界全体を見据えて、大きな“海”で戦うための切り札として今後力を入れていくことを決めたのが、1杯250円で牛丼を提供する新店舗「築地吉野家 極(きわみ)」なのではないでしょうか。

今後吉野家に待ち受ける茨の道とは?そして、どのようにしてこれまでの業界の常識を覆していくのか?次ページでお伝えします!