「我が家の屋根を他人が歩き回るなんて…」
原宿駅前の有名なマンション「コープオリンピア」。欧米のアーバンライフをイメージして建てられたこの建物の屋上には、プールや洗濯物干し場が設けられている。今でもプールが使われているかどうか定かではないが、竣工当時は画期的なアイデアだったことが想像できよう。物干し場に限っていえば、屋上を使う例は古いマンションに意外に多い。小型乾燥機の普及や見栄えを損なわずにバルコニーに干せる工夫も浸透したことから、屋上を物干しに活用する必要性は薄まった。管理や安全面を考慮してか、今では出られること自体が逆に珍しくなったといえるだろう。
最上階の捉えかたが変わったことも一因ではないか。都心の高級マンションは「ペントハウス」という発想が当然のようになりつつある。面積や天井高を広く取り、仕様グレードも上げ、棟のなかで最もステイタスのある商品に仕立てる。だから、屋上を開放することで「自宅の屋根を他人が歩きまわる」といったマイナスイメージを与えることは売主としては避けたい。
一番良い眺めを共有する
とはいえ、マンションの最大の特徴ともいえる眺めの良い景色を、居住者全員で共有しようではないか、といった考えが着実に広まりつつある。とくに、上階と下階で眺望に差の出るタワーマンションで導入するケースが多い。さらにいえば、売主(つまりデベロッパー)によって実績に違いがあることも特徴だ。たとえば、三井不動産レジデンシャルは、積極派である。「青山パークタワー」(2003年)にはじまり、「パークコート神宮前」(2009年)ではウッドデッキや照明を用意して、たんに眺めるだけでなく、居心地を重視した。「グランスカイ」(2009年)では露天のジャグジー(有料・予約制)までつくっている。
ひとつの完成形ともいえるのが「パークコート六本木ヒルトップ」(2012年、右上の画像)。お互いの目線がストレスにならないようなゾーニングや白けさせない手すりの高さ。バーベキューのできる設備も顧客のニーズをつかんだ仕込みといえる。