いじめをする理由は? いじめる子の気持ちと心の問題
なぜ「いじめ」はなくならないのか? いじめる子の心の背景にあるものとは
<目次>
- いじめをする理由・いじめる側の心理…自分の心を守るための「防衛」
- いじめる子が受け止められたい本当の気持ち
- 先入観を脇に置き、子どもの話をじっくり聞く
- 信頼できる周りの大人が気持ちを受け止める
- 専門相談機関につながり、より深い支援に導く
いじめをする理由・いじめる側の心理…自分の心を守るための「防衛」
いじめる気持ちを理解するには
ではなぜ、人は人をいじめてしまうのでしょう? それは誰かをいじめることで、自分が抱えるストレスから楽になりたいと願うからだと思います。人は心がとても不安定になると、心理的危機から逃れるために、心の安定を保つメカニズムを働かせます。これを「防衛機制」といいます。では、いじめではどのような防衛機制が生じるのでしょう?
ひとつには、「置き換え」という防衛機制が考えられます。これは、本来はある対象に向けたい感情を、他のものに向けて感情の置き換えをすることです。いじめる子がいじめられる子に向ける怒りは、本来、別の人に向けたい怒りだったのかもしれません。その人に向けられなかった怒りをたやすく攻撃できる相手に置き換えて、八つ当たりをしていることも考えられます。
また、「補償」という防衛機制も考えられます。これは、あることに対して感じる劣等感を他のことで感じる優越感で補おうとする防衛機制です。誰かをいじめれば、ある程度の優越感を得られます。でも、本来はいじめではなく、他のことで優越感を得たかったのかもしれません。それが叶わないので、誰かをいじめることで優越感を補おうとしていることも考えられます。
いじめる子が受け止められたい本当の気持ち
いじめる子が理解してほしいこと
人をいじめる背景には多様な要因があると思いますが、そのひとつに、気持ちを受け止めてもらえない、認めてもらえない切なさが渦巻いていることがあります。
たとえば、「置き換え」や「補償」の防衛機制からいじめをする場合、本当は親や先生などの信頼する大人に怒りの感情をぶつけたいのに、それが叶わないから、弱い子をいじめてしまうということがあるのかもしれません。信頼する大人に「ありのままの自分」を受け止めてもらいたいのに、それが叶わないので、いじめによってストレスを解消してしまったのかもしれません。
そうした子の心の中には、「もっと自分の気持ちを聴いてほしい」「もっと自分の本質を理解してほしい」という気持ちがあると考えられます。
先入観を脇に置き、子どもの話をじっくり聞く
いじめる子の気持ちになって話を聞いていますか?
さらに、一度「いじめっ子」とみなされた子は、その子が何を主張しても「わがままを言っている」、良いことをしても「裏がありそうだ」などと捉えられてしまうことがあります。子どもと話をする際に大切なのは、先入観を脇に置き、じっくり相手の立場に立って話を聞くことです。
一度や二度では、うまく話を受け止められないかもしれません。うそや言い訳が続くこともあるかもしれません。それでも、真剣に話を聞いていけば、子どもは「本当は怒りを受け止めてほしかった」「ありのままの気持ちを聴いてほしかった」といった素直な思いを吐露したくなるものだと思います。
信頼できる周りの大人が気持ちを受け止める
誰か一人でも気持ちを受け止めてくれる人がいれば救われる
人は、素直な気持ちを信頼する誰かに理解され、受け止めてもらうことで、心の奥にあるわだかまりを浄化することができます。この浄化の体験によって、人は自分の行いを反省し、「もう一度人生を建て直したい」という前向きな気持ちを持つことができます。
したがって、誰か一人でも、周りにいる大人が子どもの気持ちを受け止めることが大切になります。親だけでなく、教師、きょうだい、祖父母、おじ・おば、部活のコーチ、塾の先生など、その子が信頼を寄せている大人なら、誰でもいいのです。
専門相談機関につながり、より深い支援に導く
話を受け止める側も、一人で抱えずに相談する
とはいえ、いくら子どもの話に耳を傾けようとしても、うまくいかないと感じることもあるかもしれません。そんなときには、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、地域の心理相談窓口などに相談し、アドバイスを受けるのも一案です。
いじめる子を批判するだけ、「いじめをなくそう」というメッセージを伝えるだけでは、いじめはなくなりません。いじめてしまう子の心理に周囲の大人が早めに気づき、心の奥に閉じ込めている思いを受け止めること。そして、どの子も持っている「自分の人生を建設的に築いていきたい」という願いに注目し、その実現をサポートしていくことが大切なのだと思います。
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