高級マンション/マンションのブランド論

総合商社のマンションはどこが違うのか?

新興のマンションデベロッパーがリーマンショック後の不況で激減。現状の分譲市場は、大手不動産会社の寡占状態にあるといわれている。しかし、長年(多少の増減はありながらも)安定的に供給を持続している企業群もある。例えば総合商社に属するサプライヤーたち。圧倒的な知名度を誇る彼らの手掛ける物件は何が違うのか。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

高級マンションガイド


総合商社のマンション、差異はどこに出る?

住友商事のマンション「クラッシィハウス等々力」

住友商事のマンション「クラッシィハウス等々力」

総合商社のマンションと聞いて、一般の方々はどんなことをイメージするのだろうか。例えば、「商社はグローバルに展開しているから、建設の資材なども最適なものを世界中から選りすぐって集めることができるのでは?」といった期待や、あるいは「日本に資産を持ちたい海外の投資家に向けて、高級物件を提供しやすい立場にあるのでは?」との想像も容易にできよう。

たしかにそういった側面もあるかもしれないが、ここではもう少し現実的にその差異を明確にしておきたい。まず、彼らの最大の武器は、その圧倒的な知名度である。業種を飛び越え、国を問わず、彼らの社名は広く一般に知れ渡っている。これは、住宅購入に欠かすことのできない「信頼」の礎となりえる。販売上も有利に働くことは言うまでもない。この点において、商社は財閥大手デベロッパーと同等かそれ以上の優位性を持ち合わせているとみてよい。

もうひとつの特徴は、自由な発想で事業を推進できること。例えば、専業デベの販売は、自社や系列販社に販売代理を指名せざるを得ないが、商社の多くは立地や価格帯を見ながら、その都度最適と思えるパートナーを柔軟にチョイスしていく。施工、設計、設備メーカーの選択などすべてにおいて同じことがあてはまる。大量発注をするデベはたしかに仕入れ単価などが安くなるかもしれないが、物件ごとに顧客の嗜好に対応しきれないもどかしさは残る。

住友商事のマンションシリーズ「クラッシィハウス」

「クラッシィハウス広尾フィオリーレ」

「クラッシィハウス広尾フィオリーレ」

知名度とフレキシブルなパートナーシップ。この2つの特徴を生かしたひとつの例が、住友商事のクラッシィハウスシリーズ。参入が比較的困難とされる高級マンション市場において、その知名度を活用し富裕層の信頼を得、また経験と実績を要するプランニングを最適なパートナーを発掘する目利き力で解消する。

代表例が、業界で話題になった「クラッシィハウス広尾フィオリーレ」。場所は、旧羽澤ガーデンに隣接する第一種低層住居専用地域。2003年竣工だから、販売はいわゆる“地価の底”だった2002年である。このときに平均専有面積200平米前後の本格的な高級マンションをつくったことは、今考えても称賛されるべき決断といえよう。

設計会社はアーキサイトメビウスである。当時はまだあまり知られていなかったと思われる同社を住友商事がいち早く発掘。この実績を皮切りに、アーキサイトメビウス社は「クロイスターズ広尾」(鹿島建設/2003年竣工)、「パークマンション南麻布」(三井不動産他/2005年竣工、グッドデザイン賞受賞)など都心の高額物件を次々と手掛け、一躍有名な存在となる。

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