構造形式と階数から見る地震に強いマンションの条件
「今自分が住んでいるマンションの耐震性はどのくらいあるのだろうか?」「これからマンションを購入(賃貸)予定だが、簡単に耐震性がわかる方法が知りたい」
新築マンションなら一定以上の耐震性をもって建てられていることがわかりますが、中古や賃貸マンションだと、その耐震性はなかなかわかりにくいもの。そのような時、大まかに建物の耐震性を知るいくつかの方法があります。その方法は「地震に強く安全なマンションの条件」にていくつかピックアップしています。今回はその中のひとつ「構造形式」と「階数」に着目してみましょう。
マンションの構造種別には何がある?
マンションに採用される構造種別には何があるでしょうか。挙げてみると、・木造
・軽量鉄骨造
・鉄筋コンクリート造
・鉄骨造
・鉄骨鉄筋コンクリート造
などがあります。厳密には「マンション」の明確な定義はなく、一つの建物にいくつかの住居がまとまっているものは、構造形式を問わずに持ち主の意向で「マンション」と呼ぶことは可能のようです。従って、あまり見かけることはなくても「木造のマンション」も存在するということになります。
しかし多くの人が持っているイメージ通り「分譲マンション」では鉄筋コンクリート造が一般的といってよいでしょう。従ってここでは「鉄筋コンクリート造のマンション」に注目して話を進めます。
ラーメン構造と壁式構造
鉄筋コンクリート造の建物でも、構造形式で分類すると「ラーメン構造」と「壁式構造」があります(【図1】参照)。建物の荷重を支える方法が異なり、ラーメン構造は「柱と梁」、壁式構造は「壁」で荷重を支えています。壁式構造は低層の建物に採用されることが多く、中層以上の建物はラーメン構造が多くなります。「ラーメン構造」「壁式構造」の違いについて詳しくは「RC造や壁式構造…マンション構造の分類・違いと特徴」をご覧ください。【図1】ラーメン構造と壁式構造の違い。ラーメン構造は柱、梁で構成する。壁式構造は壁で建物を支えていて、窓が小さくなる傾向がある(出典:一般社団法人日本建築学会)
壁式構造のマンションは強い
兵庫県南部地震の後に建物の被害状況を調査したところ、低層の壁式構造の建物にあまり被害が出ていないことがわかりました。日本建築学会のホームページでは、被害が集中した地域に建つ4階建ての壁式構造の共同住宅に、地震による建物被害が生じていないことから「壁式構造の鉄筋コンクリート造の建物は高い耐震性を有している」と紹介しています。
壁式構造はなぜ耐震性がある?
壁式構造の建物は壁の量を多く取らなければならないため、「開口部(窓)があまり大きく取れない」「室内にコンクリートの壁が出る」といった特徴があります。普段ならマイナス要素として捉えられがちなその特徴が、実は耐震性に大きく貢献していると考えられます。あちこちに配置された、厚く、頑丈な壁が、地震時に踏ん張って建物の倒壊を防いでいるのです。
壁式構造の建物の見分け方
一つ目のチェック方法は「室内に梁や柱があるかどうか」です。壁式構造の建物は壁で荷重を支えるため、柱や梁がありません。従って、住戸の内部、バルコニー側や外廊下側の壁と天井の接合部を目視確認してみてください。そこに梁型の出っ張りがなければ壁式構造の可能性が高くなります。壁式構造は低層が多い
二つ目のチェック方法に「階数」があります。もしそのマンションが5階建て以下であれば、壁式構造の可能性があります。基本的に、壁式構造は5階建て以下の低層の建物に採用される工法だからです。地震に強いマンションのチェック法
繰り返しになりますが、中古マンションや賃貸マンションの耐震性を知りたい時、一つの目安としてそのマンションが5階建て以下の低層の建物で、室内に柱や梁が見当たらなければ「壁式構造」で造られた可能性が高く、そうなればある程度の耐震性を期待できます。これは中古マンションの購入時、賃貸マンションを選ぶ際にもチェックポイントとして使えます。その他のマンションの耐震性
今回は「低層の建物」で「壁式構造」のマンションが比較的高い耐震性を有していることをご紹介しました。あわせて「建設時期」も一緒にチェックしてみてください。しかし、壁式構造以外のマンションでももちろん地震に強いマンションはあります。低層以外のマンション(中層以上、ラーメン構造)の耐震性はどのようにチェックしたらよいか、それは次回以降ご紹介いたします。
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