「感情労働」は、規範的な感情の価値を提供する仕事
あなたの仕事は、「決められた感情」で人に接することを求められる仕事ですか?たとえば教師や保育士には、「先生」としてふさわしい表情や態度で人に接することが求められます。看護師やカウンセラー、ケアワーカーには、受容的に人に接することが求められます。また、大きな枠組みでは、営業職や接客業も感情の管理を求められる仕事であり、難しいお客様にも雰囲気よく、にこやかに対応していかなければなりません。
このように、職業上、感情の管理の徹底を求められ、規範的な感情を価値として提供する仕事を「感情労働」と呼びます。肉体労働、頭脳労働に続く、「第三の労働スタイル」だと言われています。
感情労働につく人は、ストレスから燃えつきてしまう人も多い
失礼なことを言われたら、ついイラっとしてしまう。不快な出来事があれば、やりきれなくなってしまう。これは、人間として自然な感情です。しかし、感情労働者には一時そうした感情が湧いても、常に平静さを取り戻し、仕事にふさわしい規範的な態度で接していかなければなりません。それだけではなく、感情労働者は、プライベートでもしばしば「仕事のペルソナ」を期待されてしまうものです。そのためたとえば、教師はプライベートでも「先生らしい振る舞い」を、カウンセラーやケアワーカーは「優しい人であること」を、意識せざるを得ない面があります。
したがって、感情労働者は心が休まりにくく、ストレスを抱えやすくなるのです。使命感が強く、仕事熱心であるほど、「バーンアウト」(燃えつき)しやすくなります。バーンアウトをすると、仕事に意義を見いだせなくなり、人に対して冷淡で無機質な態度をとるようになってしまいます。これは、感情の管理に疲れて、心が摩耗してしまった結果です。
感情労働者のバーンアウトを防ぐストレス対策法
感情労働は、とてもやりがいのある仕事です。たとえば教師の仕事には教え子の成長を導く、看護師の仕事には人命を救う、といったすばらしい感動があります。こうしたやりがいは、多くの場合、自身のアイデンティティに深く根差しています。そのため、感情労働者は、「仕事での自分」と「プライベートでの自分」を分けて考えるのが難しいのです。では、感情労働者がバーンアウトを防ぐには、どうしたらよいのでしょうか。3つの対策を提案したいと思います。
対策1:オンとオフのメリハリをつける
感情労働者は、職業的な使命感が自身のアイデンティティに深く根差しているからこそ、なおさらしっかりオンとオフのメリハリをつける必要があります。そのためには、「ここまでは仕事だからやる。それ以外は仕事ではないから、できるだけやらない」「仕事のことは、仕事中に集中して考える。終わったら、仕事のことはできるだけ考えない」というように、職業とプライベートとの一線を意識することも大切です。
対策2:自分の時間をつくる
また、仕事からプライベートに意識を切り替えるためには、「自分の時間」を持つことが大切です。休日の「自分の時間」には、仕事の勉強や情報収集にばかりに費やさず、趣味や気晴らし、むだ話などの「生産性のない自分の時間」も、楽しみましょう。こうした時間は、仕事に集中するための「必要経費的なもの」と捉えておくとよいでしょう。
対策3:自分の意外な側面も、大切な「私の顔」
人間には、わがままな顔、クールな顔、ずぼらな顔、したたかな顔など、さまざまな側面があります。仕事のペルソナには似合わない顔も、必ずあるものです。それを感じたときに、「私は対人援助の仕事をしているのに、こんな一面があるなんて…」というように、良心やアイデンティティに疑いを持ってしまうかもしれません。しかし、「仕事のペルソナが自分のすべて」であるはずがありません。「仕事でのペルソナ」に、自分のすべてを合わせようとすると、必ず矛盾が生じます。
どんなに仕事が好きでも、オフの時間にも仕事のペルソナから解放されないでいると、疲れ果ててしまうでしょう。オン・オフを含めた「自分」という全体性を大切にするためには、プライベートの場面で自然に表れる感情や行動を大切にしましょう。
感情労働にやりがいを覚えている人ほど、これらのことを意識していくことが大切です。仕事は、長く続けていくことに意味があります。大好きな仕事を感情労働のストレスによって失わないためにも、プライベートでの自分も大切にしていきましょう。
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