知られざる都心の高級住宅街
都心には、住居表示では使われていないが、古くからの呼び名が残っている地域が少なからず点在する。なかには極めて良好な住環境を保っている場所もあって、いまでも“あこがれの地”と称される地名も多い。例えば、文京区本駒込6丁目の「大和郷」。“やまとむら”と読む。江戸時代の武家屋敷だった一帯を、明治期に三菱グループの祖、岩崎弥太郎氏が受け継いだ。六義園は都に寄贈し、その西側を住宅街として開発。およそ1.5ha程はあろうかというほどの閑静な街並みが残っている。
この秋に分譲予定の「仙石山(せんごくやま)」もそう。赤坂の「氷川(ひかわ)」や麻布の「霞町(かすみちょう)」「笄町(こうがいちょう)」も有名である。そして、地形になぞらえた呼称でもっとも有名なもののひとつが「城南五山(じょうなんござん)」。
城南五山のそれぞれの特徴
「池田山」(東品川5丁目)、「島津山」(東五反田3丁目)、「八つ山」(北品川5丁目)、「御殿山」(北品川6丁目)、「花房山」(上大崎3丁目)の5地域を称して「城南五山」と呼ぶ。いずれも閑静な住宅街である。しかし、その規模や現況は大きく異なった様相を見せる。まず、「御殿山」は山と付くが、小高い山の形状をなしてはいない。品川の海辺を埋め立てるために削ってしまったとの説がある。しかし、南西側が切り下がっているために、見る向きによっては高台にあたる。施設としては「原美術館」や「ラフォーレ東京」が有名。
「八ツ山」は三菱グループの迎賓館『開東閣』の存在が大きい。鬱蒼とした緑は都心とは思えず、隣の「ペアシティ高輪」から眺める借景はじつに見事だ。「島津山」は「清泉女子大」が中央にあり、その周囲を住宅が取り囲む。「花房山」は多くがマンションで構成される一帯だが、そのヒルトップにあたる面積は小さく、スケール感は他の山に譲らざるを得ない。
それぞれに個性を持つ城南五山なのだが、「邸宅感のある風景」と「規模」でいえば、その筆頭にあたるのが「池田山」である。