違いに「反応」ではなく「対応」するために
相手への興味関心が関係性を強くする
1.自分のフレームを知る
例えば、「会社の雰囲気はどうですか?」と聞かれるよりも「前の会社と比べて、今の会社の雰囲気はどうですか?」と聞かれたほうが答えが浮かびやすくなるように、「比較対象物」があると理解や思考の効率が上がります。
一方で、比較という切り口では出てこない視点を失ったり、どちらが「いい」「悪い」という思考に陥りがちになるというデメリットもあります。
私たちは相手を理解するとき、自分のフレーム(経験、価値観、おかれている状態や捉え方など)を基準に比較を行います。ときにはあたかも自分の基準が常識であるかのように思ってしまう危険性もあります。このような状態で自分と違う考え方や行動に出会うと、無条件にそれを攻撃や否定と感じてしまいます。
そこで、まずは自分について知ること、つまり「自分がどんな基準を持っているのか」をはっきりさせる必要があります。
「そもそもこのやり方は正しいのか?」
「この取り組み以外にできることは何か?」
このような問いを自分自身に向けることで、違う視点が生まれます。自分の基準はあくまでも自分の基準であり、同様に相手にも相手の基準があると受け止める余裕ができます。
2.相手についての情報を増やす
ここでは、「違い」には不安を、「同じ」には安心を得るという私たちの性質を逆に利用します。
たとえ、国籍や性別、そして価値感などがちがっても私たちは同じ人間。必ず何かしらの共通点があるはずです。何か共通点を見いだすことができれば、その人との関係性に安心感を得られる可能性が高まります。ベースにそうした安心感があれば、他の面で「違い」がでてきても、共にその違いによる障害を乗り越えたり、違いを強みとして活かし合ったりしようという協力体制を築くことができます。
「この人は何を大切にするのか」
「どういうときに力を発揮する傾向があるか」
「誰と組むとはかどるのか」
そもそも情報が少ないために共通点が見いだせていない可能性があります。相手についての情報を増やせば、必ず共通点が見つかります。また、その過程で「なぜ相手が自分と違う考え方や行動をとるのかの背景が見え、自分との違いを受け取りやすくなるという副産物も期待できます。
3.ビジョンを共有する
基本的に相手とコミュニケーションをとるとき、私たちは対面式、つまり相手と正面から向き合うイメージでいることが多いようです。そうすると違いが生じたときに「対立」になりやすいのですが、一方、例えばソファやカウンターに横に並んで話しているイメージを持つと、「共有感」が高まり、「違い」についても客観的に扱いやすいようです。
コーチングでも、この横に並んで一緒に絵を眺めるイメージで会話をすることをとても大切にしています。このイメージを意識だけでなく、構造として実現するのが、ゴール(目標)やヴィジョンの存在です。ゴールやヴィジョンを共有していると、「あなた」と「私」の話を越えて、その実現にむけてのチームメイトとしての会話にシフトします。
4.好奇心のスイッチをオンにする
自分と違う考え方や行動に出会って、
「一体なんでこの人はこういう行動をとるんだ」
「どうしてわかってくれないんだ」
「ああ、話しても無駄だ」
「この人とは合わない…」
というようなイライラもしくは嘆きが生じたら、ぜひ一度深呼吸してから、好奇心のスイッチを入れてみて下さい。
「この人の行動の背景は何だろう」
「この人はどうしてこんな風に考えるんだろう」
「この人のアイディアにはどんなメリットがあるだろう」
「他にはどんな考え方ができるだろう」
このような好奇心の自問自答が共にうまくいく方向へと導いてくれるはずです。
ダイバーシティ・マネジメントする
最近耳にすることが多くなった「ダイバーシティ・マネジメント」。
そう聞くと、「多様性」を積極的に取り組み組織力とすることを目的とした、
- 女性の要職登用
- 国籍や文化的背景もしくは雇用形態の異なるメンバーが構成するチームの生産性向上
しかし、ここで留意すべきポイントは、ダイバーシティ・マネジメントは決して経営戦略という「制度」で終わるものではなく、「現場」で日々実行されて初めて実現するものであること。そして、そこで扱われる多様性には個々のメンバーの個性をも含む「見えない違い」も含まれていることです。
ダイバーシティ・マネジメントの真の成功は、現場で一人ひとりのメンバーが、いかに今回ご紹介した「違い」のつきあい方を身につけるかにかかっていると思います。
<参考>
「ちょっとしたコンフリクト」の力
「真のグローバルリーダー」の条件とは