世界の美を詰め込んだハドリアヌスの別荘=ヴィッラ・アドリアーナ
カノープス。左に並ぶのが女神を象った柱・カリアティード。完成当時は運河の周囲を部屋が取り囲んでおり、カリアティードが屋根を支えていた
今回はハドリアヌスの夢、イタリアの世界遺産「ヴィッラ・アドリアーナ(ティヴォリ)」を紹介する。
ローマ皇帝ハドリアヌスと世界遺産
120×20mの運河を中心とするカノープスと、運河の対岸に見えるのがセラピス神殿
ハドリアヌスが再建したローマのパンテオン
五賢帝のひとり、トラヤヌスの時代にローマ帝国の版図は最大となる。イギリスから北アフリカ、ポルトガルやモロッコからペルシア湾やカスピ海に迫る広大な領土を支配した。
パムッカレの上にあるヒエラポリスの円形劇場 ©牧哲雄
ハドリアヌスは旅と芸術を愛した皇帝。しばしばローマを離れ、各地を視察して歩き、詩を作っては建物の設計を行ったという。彼が関係した代表的な世界遺産をざっとあげてもこれだけある。ハドリアヌスの旅人ぶりとローマ帝国の広さがよくわかる。
■ローマ帝国の国境線/イギリス、ドイツ
ハドリアヌスの長城
■ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂/イタリア、バチカン市国
ローマ帝国の中枢フォロ・ロマーノにあるウェヌスとローマ神殿はハドリアヌスが建てたギリシア式の神殿。パンテオンはハドリアヌスが再建したもので、彼が自分の霊廟として建てたのがサンタンジェロ城だ。またピンチョの丘に建つオベリスクは恋人アンティノウスに贈ったもの。
■アテネのアクロポリス/ギリシア
アテネにあるハドリアヌスの門
■ヒエラポリス - パムッカレ/トルコ
パムッカレは石灰棚が美しい天然温泉。ハドリアヌスもここを訪れて、温泉都市ヒエラポリスに円形劇場やアポロ神殿を築いた。
■パルミラの遺跡/シリア
パルミラのローマ記念門 ©牧哲雄
■エルサレムの旧市街とその城壁群/ヨルダン申請
ハドリアヌスは第二次ユダヤ戦争を通じてエルサレムを破壊し、ローマ都市として改修した。たとえばエッケ・ホモ・アーチは彼のエルサレム征服を記念した凱旋門だった。
■ペトラ/ヨルダン
ナバテア王国の都ペトラはトラヤヌス帝の時代にローマ帝国の版図に入る。そしてハドリアヌスの来訪を機にペトラ・ハドリアヌスに名前を変えた。
■レプティス・マグナの古代遺跡/リビア
レプティス・マグナはローマ帝国に支配されるとローマ都市として改築され、ハドリアヌスも温泉施設であるハドリアヌス浴場を建築した。
■カルタゴ遺跡/チュニジア
ローマ帝国は各地に水道橋を造って大都市を築いたが、中でも最長の水道橋といわれるのが全長132kmに及ぶカルタゴのハドリアヌス水道橋だ。
そしてハドリアヌスは世界各地で見た美しい建物のデザインを取り入れ、ティヴォリに広大な別荘を造り上げた。それがアドリアーノ(=ハドリアヌス)のヴィッラ(=別荘)、ヴィッラ・アドリアーナだ。