夕陽に輝くシルクロードのバラ パルミラ

夕陽がもっとも美しい遺跡はどこか? そう聞かれたら私は「パルミラ」と答えたい。

パルミラは、シルクロードの荒野を渡る商人たちがそのあまりの美しさに「バラの街」とたたえた都市国家。没落から1,700年を経た現在でもその美貌は変わらず、世界でもっとも美しい廃墟のひとつといわれている。今回はシリアの世界遺産「パルミラの遺跡」を紹介しよう。

砂漠にたたずむパルミラの遺跡

居住地区と神殿地区を分ける十字路に立つテトラピュロン(四面門)。エジプトの花崗岩で造られている ©牧哲雄

居住地区と神殿地区を分ける十字路に立つテトラピュロン(四面門)。エジプトの花崗岩で造られている ©牧哲雄

パルミラへ向かうバスの車窓から眺める景色はひたすらな荒野。360度を滑らかな地平線に囲まれて、見えるのは岩と砂と、時おり羊の群れ。街はもちろん山も川も緑もなく、岩のような突起物もない。完璧な地平線。

アラブ城砦から見たパルミラ全景。遺跡の周囲をヤシの林が取り囲んでいる。商人たちはこの景色を目指して死の砂漠を渡った

アラブ城砦から見たパルミラ全景。遺跡の周囲をヤシの林が取り囲んでいる。商人たちはこの景色を目指して死の砂漠を渡った

やがて太陽が傾いて岩石や礫(れき)の砂漠は黄からオレンジ、赤へとグラデートをはじめる。椅子に深く座り込み、半分寝るようにして飽きもせずボケーっと砂漠を眺めていると、いきなり赤い荒野の中に薄っすら霞がかった柱が見えてくる。目を開き、焦点を合わせると、砂漠一面に柱が立ち並び、その周囲をヤシの森が囲んでいる。

「パルミラ?」。そう叫びながらバスを飛び降りて遺跡を眺める。広大な砂漠の中に緑が広がり、そのまん中で無数の柱が夕陽を受けて赤く浮かび上がっている。強い風が砂を巻き上げるのか、太陽は黄色くゆがみ、彼方に続く柱の向こうは蜃気楼のように霞んで見える。