夕陽に咲くシルクロードのバラ

夕陽を受けて燃え上がるローマ記念門。パルミラには夕陽がよく似合う ©牧哲雄

夕陽を受けて燃え上がるローマ記念門。パルミラには夕陽がよく似合う ©牧哲雄

シルクロードの商人たちは砂漠に咲くこの街を「バラの街」とたたえた。ローマ人たちは砂漠に茂るオアシスを見てここを「ナツメヤシの都」と称した。緑の都の繁栄は3世紀に終わったが、砂漠にたたずむパルミラの美は1,700年を経た現在も変わらない。

情緒あふれる列柱通りの門 ©牧哲雄

情緒あふれる列柱と門 ©牧哲雄

自然と文明が一体化した廃墟が私はとても好きだ。ジャングルとの一体感ならアンコールやティカル、高山や高原ならマチュピチュやクラック・デ・シュバリエ、海ならロードス島やトゥルム遺跡などがあげられるが、砂漠にたたずむ廃墟といえば、エジプトの遺跡群と並んでやはりパルミラは外せない。

特に好きなのが柱。天井もない柱がただただ立ち並ぶ姿はいつだって私をとても不思議な時間へと導いてくれる。パルミラは砂漠の中に150本もの柱が突き出している非日常の空間。夕陽を浴びると陰影が際立ち、ぽっこりと砂漠に浮かび上がる景色に息を飲む。

 

パルミラの遺跡、その全貌

全盛期には750本ほどあったといわれる列柱群。現在は写真のようなコリント式を中心に150本の柱が残っている ©牧哲雄

全盛期には750本ほどあったといわれる列柱群。現在は写真のようなコリント式を中心に約150本の柱が残っている ©牧哲雄

パルミラの列柱つき大通り、全景。左の小山がアラブ城砦 ©牧哲雄

パルミラの列柱つき大通り。左の小山がアラブ城砦 ©牧哲雄

パルミラの遺跡は大きく3地区から成立する。第一の地区が約2km×1kmで囲まれた都市遺跡で、主に1世紀に造られたローマ式の遺跡群だ。

中心はパルミラの主神ベルを祀る210m×205mのベル神殿で、そこから1.3kmにわたって列柱つきの大通りが続き、その周囲におよそ150本の柱が囲んでいる。他にもバール・シャミン神殿、ナボー神殿、アラート神殿、ローマの円形劇場やアゴラ(市)などがあり、北部には居住地跡が広がる。

 

上の列柱つき大通りの続き。砂漠の中に突き出す列柱が人と自然の営みの不可思議を物語る ©牧哲雄

上の列柱つき大通りの続き。砂漠の中に突き出す列柱が人と自然の営みの不可思議を物語る ©牧哲雄

第二の地区が都市遺跡の西に位置する墓の谷だ。紀元前3世紀頃からの塔墓や地下墳墓が数十も発見されている。いまも数多くの墓が地下に眠っていると見られており、今後の発見が期待されている。

第三がパルミラ全体を見おろすアラブ城砦。もともと15世紀に十字軍に対抗するための砦がここに築かれて、17世紀に城となった比較的新しい遺跡だ。見所は眺望。少しずつ色を変えていくパルミラの夕景は絶品だが、最後まで見ると真っ暗になるので要注意。