3宗教35億人の聖地エルサレム

神殿の丘、岩のドーム

神殿の丘、岩のドーム。このどこかに人類史上最大の宝といわれ、『旧約聖書』に伝わる「モーセの十戒」を収めたアーク(聖櫃)があるという噂も ©牧哲雄

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、3教あわせておよそ35億人の信者が「聖地」とたたえるエルサレム。城壁で囲まれた旧市街は3教の祈りの場であると同時に、世界中から集まった各教の信者たちが生活する居住区でもある。

今回は千件を超える世界遺産の中で唯一、所有国が明記されていない世界遺産「エルサレム旧市街とその城壁群」を紹介しよう。

世界の縮図・エルサレム

オリーブ山から見下ろすエルサレム

オリーブ山から見下ろすエルサレム。遠景の近代的なビル群が新市街の西エルサレムで、手前が東エルサレム、特に城壁内を旧市街という

エルサレムを歩くのは、世界を歩くことに等しい。

人口約100万人を誇るエルサレムは東エルサレムと西エルサレムに分けられるが、世界遺産に登録されているのは東エルサレムの旧市街だ。旧市街は1辺約1kmほどの城壁に囲まれていて、岩のドームや嘆きの壁、聖墳墓教会などの有名な歴史的建造物や宗教施設が集中しているほか、約3万人が暮らしている。
上空から見たエルサレム旧市街

上空から見たエルサレム旧市街。中央、四角く区切られているのが神殿の丘。岩のドームの右がアル・アクサ・モスク、その間に見える壁が嘆きの壁 ©AVRAHAM GRAICER

その旧市街は大きく4つの地区、ユダヤ教区・キリスト教区・イスラム教区・アルメニア人地区に分かれている。それぞれに特色があり、たとえばユダヤ教区がトレドやベネチアのようなヨーロッパの古都を思わせるのに対して、イスラム教区はタイやインドの市場のような活気に満ちている。

住んでいる人も様々だ。もともとこの地に住んでいるパレスチナ人はもちろん、キリスト教区にはカトリックのイタリア人からロシア正教のロシア人、コプト教のエチオピア人まで多種多彩。イスラム教区にはアラブ人やペルシア人、インドネシアやスリランカ人が暮らしており、ユダヤ教区には世界中からユダヤ人が帰還している。これほど多くの人種・民族がこれほど狭い土地に集まった都市は世界にも例がない。 

活気あふれるエルサレム旧市街・イスラム教区

イスラム教区、ダマスカス門周辺の喧騒

イスラム教区、ダマスカス門周辺の喧騒。特に金曜日はアル・アクサ・モスクへの礼拝や市場への買い出しに訪れるイスラム教徒であふれかえる ©牧哲雄

もっとも活気があるのがイスラム教区だ。ダマスカス門周辺は金曜日ともなると城内のアル・アクサ・モスクで祈りを捧げようと旧市街を訪れるイスラム教徒であふれかえる。門の周辺には露店が立ち、宗教用具や食料品、生活用品から家電まで、なんでも集まるスーク(市場)となる。

楽しいのはなんといっても食べ歩き。お気に入りは豆コロッケ=ファラフェルをピタ・パンで挟んだファラフェル・サンドだ。約100円。うまいんだな、これが。お腹が膨れたらライス・プティング。お酒を飲まないからなのか、アラブ諸国はスイーツがとてもおいしい。
ダマスカス門の前には露店が立ち並ぶ

ダマスカス門の前には露店が立ち並ぶ

お腹が膨れたらシーシャを一服。シーシャとはアラブ諸国で広く見られる水タバコ。普通のタバコのようなものから果物のフレーバーを加えたものまで種類は無数。アラブ人やペルシア人たちは居酒屋感覚で喫茶店に入り、紅茶を片手にシーシャを吸う。