購入する土地が見つかり、売買契約に向けた段取りが始まった段階でも、確認しなければならない事項はたくさんあります。売買契約を終えてからでは原則として後戻りすることはできませんから、事前にしっかりと確認しておきたいものです。
今回は、土地購入における売買契約前の確認や交渉、売買契約当日や引き渡しまでの注意点などについてみていくことにしましょう。
土地の購入申し込みをする前の再確認
購入の申し込みをする前に、家の建築まで含めた全体計画を再確認!
これらの書類に法的な拘束力はなく、いつでも撤回できるものの、あまり安易に考えるべきではありません。
購入申込書などを書く前に、自分の資金計画やこれから建てようとする家のプランを改めて確認しておくようにしましょう。
土地を購入して家を建てるとき、その工事を依頼する相手先はハウスメーカーなのか地元の工務店なのか、設計は建築家に頼むのかそれともハウスメーカーや工務店に設計込みで頼むのかなどによって、金銭の支払いが必要なタイミングやその金額などが大きく異なります。
自己資金のすべてを土地購入の代金に充てたのでは、その後の建築がうまく進まないことはもちろんですが、建築のために手元にいくら残せばよいのかは、工事を依頼する相手先などによって調整しなければなりません。
土地の購入申し込みをする前の段階で、ある程度は建築工事の依頼先などを絞り込み、その支払い条件なども確認しておきたいものです。
また、土地の売買契約を終えてから設計のプランを立ててみたときに、「想定したような家が建てられないということが初めて分かって困った」という事例は枚挙にいとまがありません。
これも土地の購入申し込みをする前の段階で、建築士に依頼してその土地に合わせたラフプランを描いてもらえば避けることのできる問題です。建築士への報酬支払いが発生したとしても、土地購入で失敗するよりはるかに安上がりでしょう。
登記の内容を確認する
土地の登記内容を確認するのは、購入申込書などを提示した後でも構いませんが、売買契約の数日前、なるべく早めの段階で媒介業者から登記事項証明書などを受け取り、その内容に目を通しておきたいものです。購入しようとする土地が相続物件で、まだ相続登記が終わっていないときには、引き渡しまでの段取りに手間がかかることもあるほか、売主側に相続争いなどがあれば思わぬ障害が生じることもあるでしょう。
売主と登記名義人が異なる場合などは、契約にあたって十分な注意が必要ですし、また地役権などによって土地の利用に制約があるケースも考えられます。
登記には問題のないケースが大半だとはいえ、もし何らかの問題を抱えた登記があったとき、それを売買契約の当日に知ったのでは、適切な対応をすることが困難です。
不動産登記について詳しくは ≪登記事項証明書(登記簿謄本)の見方≫ をご参照ください。
契約条件や引き渡し条件の交渉
売主に対して購入申込書などを提示した後は、媒介業者を通して契約条件や引き渡し条件の交渉をします。交渉内容などについては、なるべく購入申込書などにまとめて記載するようにして、後から少しずつ何度も追加することは避けるべきです。土地の購入にあたってまず検討することは、実測売買か公簿売買かという問題です。実測売買とは、売買契約のときに土地の単価を決め、その後に行なう実測の結果にもとづいて売買代金の総額を増減させるものです。
それに対して、公簿売買とは登記された土地の面積などにもとづいて売買契約のときに売買代金の総額を決定するもので、その後に実際の面積が異なることが分かったとしても売買代金の精算はしません。
区画整理事業などによって造成された土地、あるいは宅地開発で区画分譲された土地であれば、おおむね実際の面積と登記された面積が一致していますが、古くからある宅地あるいは畑を宅地に転用したような土地では、登記上の面積が大きく食い違うことも少なくありません。
過去に実施した実測により作成された図面などがないときには、できるかぎり実測売買を求めるようにするべきです。ただし、実測によって実際の面積のほうが大きいという結果になれば、支払うべき代金もそれに応じて増えることになります。
また、実測売買のときには、実測にかかる費用を売主が負担するのか、買主が負担するのか、それとも折半にするのかといった交渉も伴います。
過去に実施された実測にもとづく図面などにより正しい面積が明らかなときには、それが登記上の面積と大きく異なっていても、公簿売買で構わないでしょう。
「売買代金の精算をしないのが公簿売買」であり、過去の実測図の面積にもとづいて売買代金の総額を決めても公簿売買であることに変わりはありません。
また、売買契約自体は公簿売買で売買代金の精算をしないものの、実測をしたうえで、隣地所有者などの立会い印のある確定実測図や現況測量図の作成を求める場合もあります。
さらに、古家付土地の場合にはそのままで引き渡すのか更地渡しなのか、取り壊した家屋の基礎コンクリートなどが残っている場合にはどうするのか、不要な埋設物がある場合にはどうするのかなどの交渉もあるでしょう。
引き渡し前に売主による地盤調査や土壌調査を求めるのか、擁壁などに問題がある場合はどうするのか、登記された面積と実測による面積が違うときに売主の費用負担による地積更生登記を求めるのかなど、それぞれの土地の状況に応じて事前に交渉すべき内容は異なります。
ただし、売主側はすべてを現状のままで引き渡すことを前提に価格設定をしている場合もあるので、何もかも売主に求めればよいというものではありません。価格の値引き交渉なども含めて、トータルで考えることが必要です。
売買契約の前に重要事項の説明を受ける
売買契約に先立って、宅地建物取引士から重要事項の説明を受けます。以前はこれが売買契約の当日、その直前に行なわれることも少なくありませんでしたが、最近は売買契約の数日前に説明がされるケースも増えつつあるようです。とくに土地の購入のときには、契約当日に大きな問題点を説明されても、それにどう対応すべきかすぐには判断できないことが多いでしょう。
買主の立場から、売買契約の数日前に重要事項の説明を受けられるように媒介業者に対して求めるか、もしくは最低限でも売買契約の数日前に契約関係書類を渡してもらい、すべての問題点や疑問点をクリアにしてから売買契約に臨むようにしたいものです。
建築士に建物のラフプランを描いてもらっている場合で、事前の重要事項説明などによって建築に伴う新たな制限や事実が分かったときには、すぐに連絡をして何らかの影響がないのかどうかを確認してもらうことも必要です。
売買契約を締結する
売買契約書には代金の支払い条件のほか、引き渡しに関する事項、契約解除に関する事項、違約に関する事項など、さまざまなことが書かれていますが、初めて接するとなかなか難しい言い回しや理解しづらい内容も少なからずあるでしょう。分からないことがあるときには、十分に納得できるまで繰り返し説明を求めて構いません。
売買契約書に署名・押印をして手付金を支払えば、原則として後戻りができない段階になるのですから、その契約内容が一部でも分からないままで受け流すことは禁物です。
土地の売買代金にローンを充てるときは、そのローンが借りられなかった場合にどうするのか、契約を白紙解除できるのかなどについても注意が必要です。
また、契約前の交渉による合意事項が、売買契約書のなかにしっかりと明文化されているか、あるいは読む人によって解釈が分かれるような曖昧な表現はないかなどについても注意しなければなりません。
引き渡し前の土地境界確認をしっかりと
たいていの契約では、売買契約を締結してから引き渡しまでの間に、現地において売主が隣地などとの土地境界の明示をすることになっています。これは実測売買のときにかぎらず、公簿売買のときでも同じです。ところが、この時点になって隣地所有者との間で境界に対する認識の相違が発覚することも少なくありません。
このようなときは売主自身で問題を解決してもらうことが原則で、場合によっては契約条件を変更することもありますが、いずれにしてもある程度の日数がかかることは避けられません。
引き渡し予定日の直前に境界確認をしてこのような事態になれば、予定が大きく狂うだけではなく、思いがけないトラブルに発展することもありますから、売主による土地境界の明示は、売買契約が終わってからなるべく早い段階で実施するように求めることが大切です。
買主の都合によってだらだらと引き延ばすことは絶対に避けなければなりません。
ただし、過去に実施した測量にもとづく図面に隣地の立会い印があるとき、もしくは境界標識などがすべて明確に設置されているときには、この土地境界の明示が省略される場合や媒介業者の担当者と一緒に現地を確認するだけで終わる場合もあるでしょう。
土地の引き渡しは紙1枚で?
土地の決済は、残代金を自己資金で支払う場合には媒介業者の事務所で、ローンを借りて支払う場合には金融機関の応接室などで行なうことが多く、いずれの場合でも平日の昼間に決済をすることが原則です。残代金を支払い、司法書士に対して所有権移転登記や抵当権設定登記の申請などを依頼する手続きをします。住宅を引き渡すときの鍵や設計図書などのようなものはありませんから、「引き渡し確認書」の紙1枚ですべての段取りが終わることも多いでしょう。
場合によってはその紙1枚もなく、引き渡しを受けた実感もないままで終わることがあるかもしれません。
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