土地購入/土地購入・売買・契約のポイント

土地の過去が分かる?昔の「地目」の調べ方

みなさんが購入する土地の地目は、たいていの場合が「宅地」ですが、多くの土地は昔から「宅地」だったわけではありません。田や畑ばかりでなく、池や沼地だった場合もあります。過去には信じられないような土地も…。地盤の強度を探るうえでも重要な、土地の過去「地目」のあらましとその調べ方をみていきましょう。

執筆者:平野 雅之

土地の過去は登記事項証明書で土地の用途を分類した「地目」で分かる

土地、過去、地目

市街地の土地が昔から宅地だったとはかぎらない!


土地や建物を購入するときには、売主業者あるいは媒介業者から登記事項証明書を渡されるはずです。これは登記されている現在の権利内容などを示す書類ですが、このうち土地の登記事項証明書には「地目」という欄があり、土地の用途を分類したものになっています。一戸建て住宅やマンションの敷地は、ほとんど「宅地」になっていることでしょう。更地のときには「畑」や「山林」などのこともありますが、建物の建築に伴い「宅地」へ地目変更されます。

住宅敷地にとって、その地盤の強さは重要な要素ですが、この「地目」をさかのぼって調べることで、かつては「田」だった、あるいは「沼地」だったという過去が分かる場合があります。ときには「墓地」だったような過去を持つ敷地も存在します。

今回は昔の「地目」のあらましと、その調べ方についてみていくことにしましょう。なお、丁寧な不動産業者では売買契約に先立つ物件調査で昔の地目を調べてくれることもありますが、そこまでの調査義務はなく、現実にはまったく調べないという不動産業者のほうが多いかもしれません。

売買契約後に地目に関して何らかの問題が発覚して、媒介業者の調査不足による責任などを追及しようとしても困難なケースが大半です。昔の地目を調べるのは、自分で、もしくは業者へとくに依頼をして、売買契約の前に行なうようにするべきです。

閉鎖登記簿と旧土地台帳

現在は全国すべての法務局で登記記録がコンピュータ化され、従来の登記簿謄本に代わって「登記事項証明書」などが交付されるようになっています。このコンピュータ化に伴って使われなくなった、従前の紙の登記簿が「閉鎖登記簿」です。また、それ以前にも土地の合筆や登記用紙の再整、新たな用紙への移記などによって、それまで使われていた登記簿が閉鎖されている場合もあります。

しかし、その従前の登記簿の体裁が整えられた(※)のは昭和34年度から46年度にかけての頃であり、それ以前に明治時代から使われていたのは「土地台帳」です。
(※)土地台帳と古い様式の登記簿の一元化
 
旧土地台帳の写し

旧土地台帳で明治時代からの変遷が分かる

明治6年に実施された地租改正によって、私有財産としての土地所有権が認められるようになりましたが、その課税(地租)対象となる土地の「課税台帳」として、まず「地券台帳」が作成され、その後明治22年頃に「土地台帳」が作成されています。

あくまでも課税目的の台帳だったため、当初は郡役所で管理し、明治29年以降に税務署が設置されるとそちらへ移管されていったようです。その後、時代を経て昭和25年7月に「土地台帳」の管轄が税務署から登記所(法務局)へ移されました。

したがって、閉鎖登記簿をさかのぼって調べることで、おおむね昭和40年代以降の土地の地目の変遷が分かり、さらに旧土地台帳をさかのぼって調べることで、明治22年頃の地目まで分かることになります。
 

現在の地目は?

不動産登記法(不動産登記規則)で定められている現在の地目は、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地の23種類となっています。土地の現況や利用状況によって区分されますが、一つの敷地が異なる用途で使われているときには、その主たる用途で判断されます。
 

古い地目はどうなっていた?

旧土地台帳で使用されていた地目も、現在と共通するものが少なくありません。ただし、地目の種類が厳密に限定されていたわけではなく、非課税地においては「現況に応じて適当に定める」といった旨の規定もあったため、あまり一般的ではない地目が記載されていることもあります。また、時代の変遷によって少しずつ地目の表現も変わっているようです。時代の前後を考慮せず、旧土地台帳に表れる主な地目を列挙すると次のようになります。

【現在と共通する地目】
田、畑、宅地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、運河用地、用悪水路、井溝、保安林、公衆用道路、雑種地

【現在とほぼ共通する地目】 ( )内は現在の地目
学校敷地(学校用地)、墳墓地(墓地)、溜池(ため池)、溝渠(用悪水路)、堤塘(堤)、砂防地(山林、原野など)、道路(公衆用道路)

【現在は使われていない地目】
郡村宅地、市街宅地、大蔵省用地、官有地、府県社地、郷村社地、招魂社地、野地、軌道用地、水面埋立地、土揚敷、稲干場、荒蕪地、荒地、死獣捨て場、監獄用地、行刑場(処刑場)など

なお、公用地については建物などの用途に応じて「町村役場敷地」「公立学校用地」「○○試験場用地」などのように記載されています。
 

住宅・土地購入の際に注意が必要な地目は?

かつての地目が「田」であったケースは、大都市の市街地でも比較的多いでしょう。ただし、宅地になってから相応の年数が経っていれば、あまり心配する必要はないかもしれません。しかし、池沼(沼地)、溜池、水面埋立地などの場合には、地盤が弱い可能性を十分に考えることが必要です。大きな地震による液状化も懸念され、建築の際には建物の基礎工事を入念にすることが求められます。その他にも、水に関係する地目だったときには、その土地の経緯や地盤強度をよく調べることが欠かせません。

「荒地」とは、もともと別の地目であった土地が、天災によって原形が失われたものであり、土地台帳が課税目的のものだったため、災害により一定期間の課税免除をする際などに地目を「荒地」としたのです。

さらに「荒地」の原因として日付とともに「山崩」(山崩れ)、「川欠」(川への流出など)、「押堀」(出水による凹部形成など)、「石砂入」(石砂の流入)、「川成」(川になった)、「海成」(海になった)、「湖水成」(湖水になった)などが記載されているようです。

それに対して「荒蕪地」は、野放しの状態で自然と荒れ地になった土地を指しています。昔の地目が「監獄用地」「行刑場(処刑場)」などであるのは稀なケースだと考えられますが、もしそれに行きあたった場合に、それをどう考えるのかはあくまでも個人次第でしょう。これらは公用地だった可能性が高く、刑場などが史跡となって残されている場合も少なくありません。しかし、過去に民間へ払い下げられて宅地開発されていることもあり得ます。

その他によく分からない地目が出てきたときには、地元の土地家屋調査士に相談すれば、たいていは説明してくれるでしょう。

(参考資料「土地台帳の沿革と読み方」日本加除出版)

過去の地目を知りたいときには、土地家屋調査士に頼んだり、それが購入を検討している土地であれば不動産業者に調査を依頼したりすることもできます。しかし、ここでは第三者に依頼せずに、自分で調べるときの手順を説明することにします。
 

土地の過去を調べる方法1.まずは現在の登記事項証明書を入手する

土地の登記に関する調査をするときには、まずその地番を知らなければ何も始まりません。現時点の登記内容に関する登記事項証明書を入手することが第一歩です。購入を検討している土地であれば、その物件を紹介した不動産業者から登記事項証明書のコピーをもらえることもあるでしょう。

自分で新たに登記事項証明書を取得する際の手順については、≪自分でもできる登記の調査とその手順≫ をご参照ください。なお、現在の登記事項証明書の記載がすでに要注意の地目になっていれば、それをさかのぼって調べる必要はない場合もあります。
 

土地の過去を調べる方法2.閉鎖登記簿、旧土地台帳は管轄の法務局で

現在は登記記録がオンライン化されているため、登記事項証明書の入手は全国どこの法務局でも構いませんが、コンピュータ化以前の閉鎖登記簿、旧土地台帳を調べるときには、その土地を管轄する法務局(登記所)へ行かなければなりません。管轄がどこなのかは、法務局のページで調べることができます。
 

土地の過去を調べる方法3.閉鎖登記簿の謄本を請求する

現在の登記事項証明書の地番の欄をみて、当初の地番を確認します。たとえば現在の地番が12番3で、登記事項証明書のなかに「12番1から分筆」のような記載があれば、12番1が当初の地番になります。

区画整理による換地処分などで地番が付け直されている場合もありますが、このときも証明書の記載を順にさかのぼって、当初の地番を探します。もちろん、現在の地番が以前から変わっていない場合もあるでしょう。

「登記事項証明書、登記簿謄本・抄本交付請求書」と書かれた用紙に、その当初の地番と、あなたの住所、氏名、物件所在地などを記入したうえで、下から2番目の「コンピュータ化に伴う閉鎖登記簿」の欄にチェックを入れて受付窓口に提出します。

しばらくすると、閉鎖登記簿の該当部分をコピー(法務局によっては画像化された書面を出力)した「謄本」が交付されます。なお、閉鎖登記簿謄本は1通600円となっています。
 
閉鎖登記簿謄本

閉鎖登記簿謄本の地目欄の右端の地目をよく確認する

 

土地の過去を調べる方法4.旧土地台帳の写しを請求する

交付された閉鎖登記簿謄本の地目欄を確認し、いちばん右が「宅地」などになっていたら、さらに旧土地台帳までさかのぼって調べることになります。まず、閉鎖登記簿謄本のなかで地番の記載を追い、当初の地番を確認します。

閉鎖登記簿謄本を請求したときと同じ用紙に、その当初の地番と必要事項を記入し、空いたところに「旧土地台帳の写しをお願いします」と書くか、もしくはその旨を窓口で伝えます。土地によっては登記簿の閉鎖が何度かあり、本来であれば閉鎖登記簿を何代かさかのぼらなければならない場合もありますが、そのあたりはたいてい法務局の担当者が調べてくれるでしょう。

閉鎖登記簿謄本のときよりも少し時間はかかりますが、しばらくすると旧土地台帳の写しが交付されます。これは「謄本」ではありませんが、法務局の証明印付きで、しかも無料です。
 
旧土地台帳の写し

旧土地台帳は明治時代から使われていた貴重な資料


旧土地台帳の写しでは、明治時代の地目までさかのぼって確認することができます。ただし、コピーするときに文字がかすれたり、昔の手書き文字がうまく読み取れなかったりすることも少なくありません。読めない部分があれば、その場で聞くようにしましょう。

ただし、ここで大事なのは「地目」であって、面積などの数字や過去の所有者の住所、氏名などにこだわる必要はありません。しかし、「荒地」の記載があるときは過去の自然災害を示しているため、沿革欄などにどう書かれているか、よく確かめることが必要です。

昭和初期までの旧土地台帳には「事故」という欄が設けられていますが、今でいうところの「事故物件」ではありません。これは現在の登記事項証明書における「登記の目的」や「原因」に相当する欄です。また、旧土地台帳の中央には「東京税務監督局」のような記載もあります。

旧土地台帳によって古い地目に問題のあることが分かれば、当時の旧土地台帳附属地図を調べてみることも必要です。この地図は法務局の担当者に申し出れば、たいていは閲覧させてもらえるでしょう。

旧土地台帳附属地図は現在の公図につながるもので、当時のものは大判の紙に土地の用途などが併せて記載されており、附属地図上で周囲の状況がどうなっているか、しっかりと確認することも欠かせません。

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